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魔力が見えないはずなのに  作者: ツカサ
23/29

23話

クラウスに釘を刺してから一週間。これまでとは打って変わったように嫌がらせがなくなった。


卒業までそう長くもない。となると、やはり自分の行いが我が身に返ってくるのは痛いということか。


取り巻きも言っていたが、クラウスは家柄もよくて文武両道で風の魔力も実力十分なため、王宮仕えがすでに決まっているようだ。かまいたちのようなものを使いこなしているのも見たので、将来有望なのは本当らしい。


クラウスはあの笑顔の裏で、錬成所の生徒に強い影響力を持って君臨しているのだと思うとうすら寒くなる。

王宮に仕えたとして、いったいどのような立場になるのだろうか。一兵士としてならまだ分かる。力もあり、身分もそこそことなると出世の目もあるだろう。

もしもディルがクラウスの部下になったらどんな目に遭うのかと想像してしまい、それ以上考えるのはやめた。



過ごしやすくなったとはいえ、嫌がらせがこれで本当に終わりかは分からないので、ディルの警戒は続いている。




本日の剣術の訓練は、魔力使用なしの学年合同訓練である。


今は夏の盛りで、年度の切り替わりは秋。

この時期は、三年生があと一カ月半ほどで卒業することもあって、学年ごとの練習よりも技術系・兵士系など魔力の種類によって振り分けられて、合同訓練をする機会が増えるのだそうだ。


基礎訓練の後、上級生と下級生の手合わせが行われる。


ディルの勝率は編入三カ月にしてはそこそこいい方で、学年内でも他学年と相手でも五分五分より少し勝ち越すといったところだ。

手数が多く、隙をうまく使う戦い方をする生徒はあまり多くないため、相手からすると戦いづらい相手なのかもしれない。学年が離れているとより手の内が見えないので、ディルが全力でやって思い通りの流れが作れると上級生にも一本取れることがある。


そもそも素早さ重視の指導といのは全体練習で行われることがあまりない。基本的に男の場合、身体を作っていれば力も重量も増えていくのだから、それに合った練習が組み込まれる。相手も同様なため、屈強な兵士に立ち向かうための技能を鍛えるのは当然である。

身のこなしが武器である身体特化の魔術師と、数少ない戦闘系の女性魔術師が手数で勝負するくらいだ。


ディルも女なのでそこに当てはまる。それなのに未だに男だと思われ、細身で筋肉がつきにくいからそういうスタイルなんだと思われている。

もともとシュッとした体型な上、同学年内では背丈も男と同じくらい、コルセットで体型を隠して髪も短くしている。女性とはふとした違和感を察知される可能性もあるので極力近寄らない。

今のところなかなかうまくやれている。潜入捜査にも向いているのでは、と思うディルである。



何回目かの打ち合いののち、汗をぬぐいながら次の対戦相手と向き合った。


表情を見てみると、なんだか少し違和感がある。

練習で高ぶって攻撃的になる生徒は当たり前にいるが、そういう感じではなく、一時期よく見かけたディルを貶めてやろうとする類の目をしている。


警戒しつつも始めの合図で動く。


何度か間合いを取るように双方が動き、相手が先に切り込んできた。


相手の力量を早く知るためにディルはその一撃を受け止める。

カァン、という強い音が響く。



「!!」


手がジーンと痺れるほどの強さ。痛みで顔がゆがんだ。

何事かと思いすぐに後方へ飛び退り、距離を取って相手と対峙する。そして気づいた。



相手が魔力封じのバングルを外していることに。



剣を落とさなかったのが幸いなくらいの力だったので、恐らく身体特化系の魔術師のようだ。

今日は魔力の使用は無しになっているはずで、これまでに何度か手合わせがあっても何も騒がれていないのだから、バングルは先程外されたものであり、狙いはディルといったところか。


声を上げるか、どうするかをディルは数瞬考えた。

単騎での行動か、それとも誰かに唆されてことに及んだのか。



「どうした?もやしっ子」

そう挑発されると、自分の力で乗り越えてやるという気持ちが湧き上がってきた。


「そっちがその気ならこっちだって乗りますよ。いい機会だ」



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