第96話 康太は公安と仲良くなる:その3「失言・妄言?」
今だ怯えて泣き止まぬチエちゃんは原因たるマユ姉ぇに任せて、俺達は気絶している公安3人の介抱をした。
女性のアヤメさんはナナとリタちゃんに診てもらい、俺と正明さんは寺尾室長とタクト君をソファーから引っ張り出した。
一瞬で気絶した寺尾室長はダメージが少なそうだけど、しばらくマユ姉ぇの殺気を喰らったタクト君は生きてはいるけど酷い有様。
ソファーは、……、うん、後始末が大変。
一応防水加工されているのと、合成皮革製なのでクリーニングでキレイになるかな。
粗相した方々の服は早速お洗濯へ。
え、方々ってタクト君と誰だって?
女性の方の事なんて聞いちゃダメだよ。
◆ ◇ ◆ ◇
「この度は、またご迷惑をおかけして誠に申し訳ありません。ウチのバカの失言癖、治させますので平にご容赦を。もちろんクリーニングはこちらで行わさせて頂きます」
大汗かいて顔真っ赤の寺尾室長、比較的ダメージも少なく粗相もしなかったので、倒れる前の服装。
「ごめんなさい、もう言いませんから許して下さい。お姉さん」
土下座しながら謝るというか怯えて青い顔のタクト君。
下半身をバスタオルで覆ったままという惨状。
「粗相失禁なんてこの歳でしてしまい、申し訳ありません。このバカ、ウチでは教育していますけど、またご迷惑をおかけして本当に申し訳ありません」
恥ずかしさで顔が真っ赤のアヤメさん。
彼女も下半身がバスタオル。
「いえ、これは私も悪いですから。素人の方々に本気で殺気を飛ばすなんてしちゃダメなのに。ごめんなさいね」
公安のツワモノを素人扱いしちゃうのはどーかと思うぞ、マユ姉ぇ。
いつもの慈愛溢れる笑顔のマユ姉ぇだが、少し引きつっていてヒマワリじゃない。
そりゃ、もう少しで娘を殺しそうになったのだからね。
そういえば、前の警察署での「虐殺」では中村警視は気絶する前に謝っていたのだからスゴイな。
「うむ、母様には、もう少し手加減を覚えて欲しいのじゃ。ワシ、マジで死ぬところだったのじゃ!」
まだ涙目のチエちゃん、珍しくマユ姉ぇに文句言っているけど、消滅の危機だったんだからしょうがないよね。
「そうね、チエちゃん。ごめんなさいね。手加減覚えるから、その時はお願いね」
「母様、それはイヤじゃ! 手加減前にワシ死んでしまうのじゃ!! そういうのはコウタ殿で頼むのじゃ! その時はワシ逃げさせてもらうのじゃ!!」
マジ怯え顔でぶんぶん顔を横に振るチエちゃん。
魔神将を怯えさせてトラウマを刻み込む主婦。
もしかしてリタちゃんの星にマユ姉1人で放り込んで全力殺気放出してもらったら、デーモン全滅しないか?
リタちゃんの星、マナ多いらしいからマジで出来そう。
しかし、怖い考えになりそうなので、やめておこう。
オトコとしてやっちゃダメだよね、か弱い(笑)女性を戦略爆弾兵器扱いなんて。
◆ ◇ ◆ ◇
「そういえば、チエちゃん。朧さんは大丈夫なの? チエちゃんが危ないのなら、朧さんはマジで死んじゃうよ」
まだ顔色が良くないけど大分落ち着いたチエちゃんに、俺は朧さんの安否を聞いた。
だって魔神将が消滅するって事は、それよりも弱い大悪魔の朧さんではひとたまりも無い。
「朧ならワシ放置して逃げたのじゃ! 薄情とも思わぬ事も無いのじゃが、あやつならマジで消滅しておったから逃げてもしょうがないのじゃ」
うん、しょうがないよね。
チエちゃんがトラウマになるくらいだもの。
「申し訳ありません、チエ様。命の危険を感じ、遺憾ながら逃げさせてもらいました」
まるで話を聞いていたかのように現れる朧さん。
どうやら出てきて謝るタイミングを探していたらしい。
「まあ、しょうがないのじゃ。母様の殺気をマジで喰ろうたらワシでも死にかねん。お前が逃げるのも当たり前じゃ。それは許すのじゃ」
チエちゃんも口で言う程は怒っていない。
同じ精神生命体として、あの「殺気」の怖さは分かるだろうから。
「許す代わりに、今度東京赤坂あたりの絶品スイーツを開店直後に購入してくるのじゃ。ワシが支払うから全員分じゃぞ」
「御意」
許すのが口実で、食いっ気優先なのが実にチエちゃんらしい。
「さあ、今回の原因のタクト殿、どう謝罪してくれるのじゃ?」
タクト君の前で仁王立ちするニヤニヤ顔のチエちゃん。
「そうね、もう少し謝って欲しいかも」
いつもの「ほんわか」雰囲気のマユ姉ぇ、しかしその強さを知っているタクト君からは般若に見えているだろう。
恐怖・畏怖の対象2人に睨まれたタクト君は、文字通り「蛇に睨まれた蛙」。
それもヤマタノオロチ級のハイドラ2匹同時相手(笑)では、スサノオでもヘラクレスでもどうしようもあるまい。
しょうがないので、助け舟を出す俺。
一度は敵対したとはいえ、青い顔で脂汗ダラダラ流す若者を放置できない俺って甘いねぇ。
「マユ姉ぇ、チエちゃん。そのくらいでタクト君許してあげたらどう? このままだったらタクト君心臓麻痺で死んじゃうよ。タクト君、もうバカな事はしないよね?」
俺の助け舟に乗り、うんうんうんとスゴイ勢いで首を縦に振るタクト君。
「まあ、今後はチエちゃんがしっかりと鍛えてくれるだろうから、礼儀も弁えてくれるだろうね。という訳で、俺の弟弟子になるんだから宜しくね」
俺が差し出した手を握る涙目のタクト君、
「コウタさん、いやコウタ兄貴、ありがとうございます」
涙目ながら憧れの人を見るような顔のタクト君、うん変なフラグいらなからね、俺。
「まあ、コウタ殿の顔に免じて今回は許すのじゃ。次は無いのじゃ、これから存分にシゴいてやるのじゃ!!」
とまあ、なんやこんやで公安の方々とも仲良く(笑)なれたので、結果オーライという事にしよう。
俺にとっても弟弟子が出来て、被害担当艦が増えてくれたので助かるよ。
だって、最近コトミちゃんが加わってから、彼女の助言で修行がシゴキレベルに増えているのだから。
ブックマーク、感想、評価・レビュー等を頂けますと、とても嬉しいです。
皆様、宜しくお願い致します。