第93話 康太は公安と仲良くなる:その0「序章?」
これより、第3部の開始です。
康太達の新たな冒険・戦いをご覧下さいませ。
俺達の目の前に聳えるのは、10m程の小山のような巨大な粘液の塊。
塊の頂上には、三つの燃え上がるような真紅の眼。
「俺の邪魔をするのか、下等なニンゲン共よ!」
さあ、邪神退治と参りますか!
◆ ◇ ◆ ◇
「マユ。しばらく見ない間に、姪っ子が2人も増えるとは思わなかったぞ」
マユ姉ぇにこう話しているのは、良く日焼けした髭面のワイルドな男性、カツ兄ぃ。
カツ兄ぃ、秋山 勝也は、マユ姉ぇのお兄さん、俺の母さんの弟、つまり俺の叔父さんに当る。
カツ兄ぃは四十路中頃、今も独身で冒険家もどき&冒険記の執筆をやっていて、海外を飛び回っている。
久方ぶりに日本に帰ってきて妹夫婦&甥の俺の事を見に来た訳だが、カツ兄ぃが日本を留守にしている間に、色々あってリタちゃんやチエちゃんが姪として増えていたという事だ。
「異星人だとか悪魔とか、どーでもいいんじゃないか。2人ともすっごくカワイイし良い子だから」
2人の頭を撫で撫でながら言う、カツ兄ぃ。
一応、カツ兄ぃにはマユ姉ぇから郵便や電話で連絡はしていたとは言え、現実に会うまではびっくりしていてもおかしくは無いよね。
「おじさま、ありがとう」
「カツヒコ伯父様、すまんのぉ」
2人ともカツ兄ぃに褒められた上に姪として認められて嬉しそう。
この「いい加減」なのか、度量が深いのか分からないのが、カツ兄ぃ。
多分、「いい加減」の方が強いのだろうけど、冒険をしているからヒトやモノを見る目はしっかりしている。
もちろんリタちゃん・チエちゃんとも良い子なのは確かだから問題ないけど、こうも簡単に受け入れられるカツ兄ぃはスゴイ。
正明さんといい、カツ兄ぃといい、スゴイオトナのオトコ。
俺もこういうオトナにならねば。
「じゃー、ボクはどうなの? カツ伯父さん?」
放置され気味のナナがカツ兄ィに聞く。
「ナナ、すっごく美人になったね。こりゃ将来が楽しみだよ」
「ありがとー、伯父さん!」
ナナはカツ兄ぃに抱きつくが、小さいながらも去年より確実に膨らんだ胸を押し付けられて、ドギマギするカツ兄ぃ。
「嬉しいけど、もう大きいんだから抱きつくのは好きなヒトだけにした方がいいぞ」
「えー、ボク伯父さん好きなのにぃ」
こういう子供っぽいところが抜けないのがナナだけど、それも魅力だね。
「義兄さん、すいません。ご相談も無くこういう状況になってしまいまして」
正明さんはカツ兄ぃに頭を下げる。
「別に良いって。子供が増えるのは嬉しい事だからな。どうだい、実子もう1人増やしたら? 今度は男の子もイイぞ!」
言う人間によってはセクハラっぽい言葉だけど、それを聞いたマユ姉ぇが顔をポっと赤くして、
「カツ兄さんがそう言うのなら、正明さん今晩……」
おい、それ思春期の娘の前で言って良い会話かよ!
「うぉほん、マユ姉ぇ、そういう会話はベットの中でどうぞ」
俺の突っ込みにマユ姉ぇ、真っ赤にした顔を両手で覆いながら
「あら、私ったらハシタナイわ」
「ハイハイ、ごちそうさま、お母さん。お父さんと仲良くね」
「うむ、母様と父様が仲宜しいのは良い事じゃ!」
「おかあさん、こんばんってなに?」
内容を理解していないリタちゃん、理解しすぎているチエちゃんは良いとして、ナナお前俺が知らぬ間にオトナになったんだなぁ。
「コウタ、お前も立派になったなぁ。身体一回り大きくなっていないか?」
「うん、カツ兄ぃ。リタちゃんと出会ってから色々と戦う事があって、マユ姉ぇに鍛えてもらっているんだ。最近ではチエちゃんにも色々と教えてもらっているし」
「そうか、お前も『秋山の血』を継いで『力』持ちだもんな」
カツ兄ぃもマユ姉ぇ程では無いけど「力」持ち。
その「力」を使ってオカルト関係の遺跡での冒険をしている。
「そうだ、カツ兄ぃ。こんな『石』見たこと無い?」
俺は懐より「次元石」を取り出してカツ兄ぃに見せた。
「虹色でキレイだけど、見たこともないし知っている岩石にも無いぞ? なんだいこの石は?」
俺は「次元石」について説明した。
更に足らない部分についてはチエちゃんが補足説明をしてくれた。
「ふーん、コイツが皆を出会わせてくれたって訳か」
「リタちゃんの魔法言語が中世ドイツ語らしいから、ドイツ周辺に転移門はあったはずなんだ」
「そうじゃな、ワシがこの惑星に初めて来た時の『門』もヨーロッパだったしのぉ」
俺達の情報を聞いたカツ兄ぃ、
「そうか、じゃあ今後気をつけておくわ。しっかし、コウタお前すっかりハーレムだな? ギャルゲーの主人公かよ」
「カツ兄ぃまでそれ言うんだ。でも俺この中では最弱だよ。俺には山一つ吹っ飛ばしたり、空間跳躍や空間断裂したり、レーザーで薙ぎ払ったり、超音速で呪術戦なんて出来ないから」
俺の発言にぎょっとするカツ兄ぃ、
「超音速で呪術戦ってのが多分マユの事だと思うけど、他のは?」
マユ姉ぇの瞬動法をカツ兄ぃは知っているから一部には答えを出せたのだろうけど、他のは予想できないよね。
聞かれた俺は1人ずつ指差す。
リタちゃんを指して、
「山一つ吹っ飛ばす」
「うん、どっかーんってできるよ。おやま、ゆきやまにもできるの。かみなり、ぴかぴかもできるよ」
さも当たり前のように言うリタちゃん。
次にチエちゃんを指して、
「空間跳躍・断裂」
「そうじゃな、それらは比較的得意じゃな。そういえば皆にワシの必殺技見せておらぬな。コウタ殿、今度ワシの技の実験台にならぬか?」
指差されて、ちょっとご機嫌斜めなチエちゃん。
急いで謝らないといけないな、こりゃ。
「ごめんなさい、チエちゃん。俺の命が危ないのでご勘弁を」
すかさずしゃがんで土下座で謝る俺。
「うむ、某洋菓子店のスイーツで勘弁してやるのじゃ!」
そして最後にナナ、
「レーザー」
「最近、もっと技増えたんだ。小物乱舞なんてどうだろうね」
九十九神を多数ふよふよ浮遊させて言うナナ。
この百鬼夜行状況・戦略級女性陣を理解したカツ兄ぃ、俺と正明さんの肩をしっかりと抱き、
「お前ら大変だなぁ。オレじゃ、もうどーにも出来ないレベルの話だよ」
うん、俺もこれ以上、変なフラグ増えて欲しくないです。
これより物語の展開は、少しシリアスさを増して行きます。
しかし、今までどおりのコミカルさもそのままです。
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