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功刀 康太の遺跡探訪、時々お祓い ~女難あふれる退魔伝~  作者: GOM
第二部 第二章 功刀康太はインチキ教祖をとっちめる
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第89話 康太の新たなお仕事:その13「教団への強襲!:その8」

 俺は燃え盛る教祖からやっとの事で翔太君を遠ざけ、彼の目から燃えている父親を隠した。


「お前……、なんて事をしてくれたんだよ」


 俺の中でカチリと「トリガー」が引かれる。

 とても俺の口から出ているとは思えないくらい怒りがこもった声。

 俺の手の中に居る翔太君の悲しみと怯え、怒りが俺に伝わる。


「用済みの悪人を消してナニが悪いんだよ。どうせオマエラもこいつらを罰するんだろ。俺も同じ事をしただけだよ」


 教祖を燃やした男の全く悪気の無い声に、俺の中の怒りは沸騰点を越える。

 両親を失った俺の前で、父親を失う子供を見せるなんて、絶対に許せない。


「お前、せっかく親子が理解しあえたのを台無しにしたな。ハッピーエンドを無茶苦茶にしやがって。俺はお前を許さない!!」


 俺は翔太君を横に居るチエちゃんに渡し、減らず口を叩く男に飛び掛ろうとしたが、それをチエちゃんが留める。


「コウタ殿、少し待つのじゃ!」


 その様子を見た男は尚も俺達を(あお)る。


「ゆるさないんじゃなかったのかい? 幼女(チビ)に助けられるとは情けない男だな。そうさお前なんて俺には敵うはず……!」


 まだ減らず口を叩いていた男はピタリと動きを止めた。

 そして今度は苦しそうにもがいている。


「ようもワシの目の前でハッピーエンドを台無しにしようとしたのじゃな。おまけに用が済んだにも係らず逃げようともせずに(あお)るとは未熟な上に不届き千万じゃ!」


 チエちゃんが怒り気味のドヤ顔で話すのを聞いた俺は、怒りが少し落ち着くと共に何かが引っかかった。


「チエちゃん、台無しにしたじゃなくて、台無しにしようとしたって事は? まさか?」


 俺の問いにチエちゃんは、にやりとして得意のドヤ顔で答えてくれた。


「コウタ殿、ショウタ殿、安心せい。教祖殿は無事じゃぞ」


 俺達は急いで教祖の方を見た。

 まだ燃え続けていたが、すぐに火は収まった。

 そして着衣は全て無くなっていたが、無傷の教祖がそこに居た。


「お父さーん!」


 翔太君は走って教祖に向かい、抱きついた。

 カレンさんはその辺りの布を取って教祖に被せてくれた。


「どうもありがとうございます。焼かれたはずなのにどうして私は無事なのですか?」


 教祖の問いに、それを待っていたチエちゃんが答える。


「それはもちろんワシが()るからじゃ! さて、そこの未熟な上に愚かで不届きモノよ。ようもやってくれたのじゃな。しかしなぁ、お主の(たくら)みなぞ、ワシの目前で果たさせる訳なかろう! どうせお主はどこぞの飼い犬じゃろうて。さて、飼い主の事を話してもらおうかのぉ」


 俺はチエちゃんの様子を見て安堵した。

 俺の中で「トリガー」が元に戻る感覚がした。

 しかし、自分でも自分の中にあのような「怒り」の感情がある事に驚く。

 今までは、俺の家族を失う恐怖から「トリガー」が引かれていた。

 しかし今回は、俺とは敵対していたはずの人物への攻撃で発動してしまった。

 あのままでは冷静さを失ってしまい、負けないまでも敵を虐殺して後から後悔した事だろう。

 チエちゃんに感謝である。


「口だけは自由にしてやるのじゃ、早う飼い主の事を話すのじゃ!」


 顔の周囲の金縛りが解けた男は未だ強気だ。


「そんなの言う訳ないじゃん。どれだけ甘ちゃんだよ。そうか、幼女(チビ)や女の子に囲まれてハーレムやっているようなヤツが甘くないわけ無いよなぁ!」


 その悪口を聞いた俺は、思わず声を出して笑ってしまった。

 そして完全に「いつもの俺」に完全に戻れた。

 確かに俺の状況は、見た目はハーレムだね。

 しかし、現実は俺は身内最弱でまだまだ修行中。

 ウチの戦略級女性陣に鍛えてもらっている最中だ。

 これをハーレムと呼べるとは、コイツ実に見る目が無い。

 というか、引き際を(わきま)えず、更に自分を金縛りにしている幼女の「正体」にいまだに気が付かない段階でバカだ。

 ただ「力」を持っているだけのバカに、(みんな)に鍛えてもらった俺が負けるはず無い。


「ナニがおかしいんだよ。この弱虫! オンナの影で戦う事しかできないのかよ!」


 コイツ、この()に及んで未だに自分の状況が分かっていない。

 チエちゃんが少し動くだけ、バカの呼吸筋の動きを止めるだけで殺せるのを理解していない。


「そうか、何もしゃべる気は無いのかのぉ。飼い主に忠実なヤツとは思えんし、飼い主が怖いのじゃな。どうせこいつの飼い主は国関係じゃろうて。最近近くで動きが騒がしかったからのぉ」


 男はチエちゃんの「国」という言葉に大きく動揺をした。

 そうか、どこかの国家機関のシタッパーかよ。

 退魔機関の方々にしては品が無いし、実力も足りない。

 どうせどこかの「里」や「山」から品行問題で追い出されたのが国にアルバイト感覚で雇われているのだろう。

 いずれトカゲの尻尾切りで「処分」されるとも知らずに。


「じゃあ、どうするチエちゃん。この犬っころ、殺す訳にもいかないけど、逃がす訳にもいかないよね」


「そうじゃな、どうせ大したことも知らずに、脚切り、尻尾切りされる哀れなヤツだとしても、殺すのはもったいないし、逃がすのはもっとイヤじゃな」


 俺達の物騒でバカにした相談を聞いていた男は叫ぶ。


「おい! 俺を無視しやがって! ナニそこでキレイゴト言っているんだよ! 戦いは殺し合い。負ければ死ぬのは当たり前。そこのヤツ、俺に負けるのが怖いのかよ。女のスカートの中から出てこないのかよ!」


 俺は悪口を半分無視してチエちゃんに話す。


「ああもバカ言っているけど、どうしようチエちゃん? 少しは痛い目見てもらったほうが本人の為でもあるよね」


「そうじゃな。オイ、そこのバカ! このコウタ殿と勝負でどうじゃ? コウタ殿が負ければお主を見逃してやろう。ただし、お主が負けたらお主の身柄、今後の処遇は全てワシらが貰う。この勝負受けぬはずはないじゃろ? ただし、逃げようとしたら問答無用で死んでもらうのじゃ!」


 この挑戦状に食いつかないはずが無いバカ。


「おう、そのスカートの陰に隠れそうなボクが相手かよ。俺も舐められたもんだな。その勝負受けた! ちゃんと約束を守れよ!」


 はい、キミの運命決定。

 哀れで愚かなキミへの教育第一号は俺だ。

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