第87話 康太の新たなお仕事:その11「教団への強襲!:その6」
俺達が突っ込んでくるのを見た教祖、硬直からいち早く脱して叫んだ。
「守護者たちよ、我らに仇名す化の物達を滅ぼすのじゃ!」
教祖や教団幹部の周囲に居た邪霊達が俺達に突進してくる。
それらは翔太君の守護霊マリちゃん程はっきりとした形は成しておらず、雑多な人霊・動物霊の集合体。
あれでは自我も無く、ただ命令のままに人に害を成す哀れな存在。
無に返して霊界送りにしてあげる事が供養だ。
因みにマリちゃんは、戦闘開始後すぐに翔太君の元に赴き、翔太君に抱きついた後は彼を後ろに庇って、ナニが何でも守るって感じ。
一見幼げで儚そうなマリちゃんが、涙目になりつつも翔太君を守ろうとしている姿は実に微笑ましく思うよね。
「ふうっ!」
俺は右手に持った三鈷杵を剣モードに切り替え、袈裟切りで一刀の下に邪霊を一体切り払う。
切られた邪霊は一瞬で浄化されて、光の粒となり消え去った。
「やぁ!」
カレンさんはチエちゃん謹製アイテム、多機能尺杖を長巻モードにして俺同様に邪霊を切り伏せた。
多機能尺杖、普段はペンダントトップの小さな五鈷杵として存在するけど、起動する事で、尺杖、長巻、刀、薙刀、五鈷杵等に巨大化・変形をする。
更に魔力付与体なので霊体をそのまま攻撃できる上に、呪の付与、呪の強化など等に使えるとても便利なアイテム。
俺もそんなの欲しいなぁ。
俺達に沢山の邪霊が迫り来るが、この程度の相手では俺達の敵ではない。
どんな奴も一刀両断で退治する。
更にナナも後方から支援攻撃をしてくれるから、まるで俺達の「退魔無双」って感じ。
そんな様子に慄いた教祖は、祭壇に赴き何かを起動した。
「出でよ、我等が最強の守護者よ! あの敵を討ち滅ぼすのじゃ!」
祭壇の奥、秘仏と思われるものが入っているはずの厨子が開かれて、そこから巨大な気配が現れる。
ソレは悪鬼羅刹を形にしたと思われる、身長5mは越える巨大で醜悪な姿。
俺達が良く知るデーモン系にも似ている気はするけど、それは形だけ。
さっきまでの邪霊よりはマシだけども、おそらくマリちゃんの方が圧倒的に強い。
それに神聖なはずの厨子から出てくるなんてバチ辺りだよ。
「オン・マリシエイ・ソワカ! 摩利支天 太陽剣!」
俺は三鈷杵から出ている光の剣たる「太陽剣」に更に太陽剣の呪を重ねがけする。
三鈷杵から伸びる光の剣は元の刃渡り70cm程度の日本刀サイズから2m程に刃が伸び更に幅広くなり斬馬刀サイズに巨大化した。
最初から付与していた帝釈天の雷撃を纏った光の剣は、更に表面で発生していた放電を激しくする。
「滅びよ、悪鬼!」
俺は光の剣を振りかぶり、最強らしい邪霊に唐竹割ぎみに叩き付けた。
その一撃は、悪鬼を両断粉砕するだけで終わらず、後方の厨子や祭壇ごと真っ二つにした。
「ひぃぃ!」
自分の持つ最強の手駒が一撃で滅んだのを見た教祖は震え上がり、尻餅をついた。
その情けない様子を横目で見たチエちゃん、俺に向かって言う。
「コウタ殿、今のは『斬艦刀、一刀両断!』と叫ぶのがお約束じゃぞ? せっかくの大技じゃ、今言わずして何時言うのじゃ!」
チエちゃん、それは某ロボ大戦の話でしょ。
確かに必殺技を叫んで使うのは気持ちイイけど。
「えーっと、それ今言うの? そのネタ誰も反応しないって」
しかし、ナナは分かっているようで、
「そうだよ、コウ兄ぃ。必殺技は叫んでナンボだよ! せっかくオヤブンと似た技使うんだもん!」
この2人、最近オタク談義が悪化しているから少し心配。
「とりあえず、オタク談義はその程度にして頂けませんか? 先輩、むこうから沢山人が来ています。多分警備員の方々ですね」
コトミちゃんの指摘で周囲を観察したら、祭壇室の大扉の向こうから急ぐ足音が多数近づいてくる。
「カレンさん、ここの人たちと一緒に警備の方もふん縛ってって下さい」
「了解しました」
カレンさんは腰に巻いた羂索を解き放ち、呪を展開した。
「オン・ハンドマダラ・アボキャ・ジャヤデイ・ソロソロ・ソワカ! 不空羂索観音 捕縛呪!」
ちょうどそのタイミングで大扉が開き、屈強そうに見える警備員達が祭壇室になだれ込む。
しかし、彼らや教祖達はカレンさんの呪によって発生した羂索に巻き取られて、あっという間に「お縄」になった。
「さて、これでお白砂の上に皆ひっぱりだしたのじゃな。では、色々と話してもらおうかのぉ、教祖 黒田光男よ!」
今度はすっかり「大岡」とか「桜吹雪」系の時代劇調のチエちゃんである。
しかし、無理やりに捕まった教祖が素直に話す訳は無い。
「なんで、ワシが賊の言う事を聴かなきゃならんのだ! 早う警察を呼べ! お前らタダでは済まさぬぞ!」
しかし、その様子を見た翔太君が教祖の下に近づき、泣きながら話す。
「お父さん、もうこんな事やめてよ! もう僕イヤだよ。昔のお父さんに戻ってよ!」
息子の涙ながらの言葉に教祖は驚いた。
「翔太、お前ワシがしてきた事を知っておるのか?」
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