第83話 康太の新たなお仕事:その7「教団への強襲!:その2」
祭りの日は、梅雨入り前としては多分最後の土日、まずますの天候だ。
俺達は、チームを攻略組と制圧組+その他に分け、会場の教団本部へと向かった。
今回、どうしても手数が足りなかったため、「御山」に無理を言って、カレンさんとシンミョウさんを助っ人として送ってもらった。
「お姉様、チエ様、その節はお世話になりました」
「またお役に立てて光栄ですぅ」
「こちらこそ、無理言って呼び出してごめんなさいね。出来る限り穏便に済ませたかったのと、屈強な坊主頭の人なんて来たら警戒されちゃうからなの」
確かに戦力的には男性武闘僧の方が強いのだろうけど、正体がバレバレだし今回はあくまでオオゴトにしない方針。
だから相手が油断するであろう女性で攻めるのは効果的だし、チエちゃんと面識があった方が共同作戦の成功率も高い。
「うむ、毎度2人には面倒をかけて申し訳ないのじゃ。そういえば贈ったアイテム、使いこなせておるのか?」
そういえば、チエちゃんが迷惑をかけた2人に希望のアイテムを送ったとは聞いている。
作成時のアイデアを出すのにナナやマサトが協力しているとか。
俺は今のところ必要はないけど、物理攻撃力が欠けているから使いやすい実体剣は欲しいかも。
この戦いが終わったら、チエちゃん達に相談してみよっと。
「はい、今回存分に活用させて頂きますね」
「お姉様達、私も頑張りますぅ」
えらく尼僧2人はやる気満々だね。
頼りにされたのが嬉しいのだろうか。
「じゃあ、これ終わったら明日は皆で東京観光へ行きましょうね!」
「はい、ああ渋谷・原宿・新宿。ファッションの総本山!」
「新宿、池袋、秋葉原。『薄い本』がぁ!」
なるほど、後の「ご褒美」目当てなのね。(笑)
「では、作戦通りで行くわよ! 皆、気をつけてね!」
「そうじゃ、各々方、ぬかるな、なのじゃ!」
◆ ◇ ◆ ◇
「祭り」の一週間程前、俺、マユ姉ぇ、コトミちゃんは、マサミちゃんの両親に会った。
「この度は娘の事でご協力してくださるとの事、ありがとうございます」
だいぶ憔悴しきった雰囲気のマサミさんご両親。
「いえ、今回はこっちから勝手に口を突っ込んだ訳ですので、ただのおせっかいですし。それこそ弱みに付け込む悪党とも思われかねない行為ですから」
ご両親にしてみれば、ワラにも掴みたい心境のところに娘を助けられるかもしれないという話があれば飛びつくのも分かる。
だからこそ、金だけ毟りとる悪党にはなりたくない。
「ですので、別段お金がどうのとは申しません。俺はあくまで後輩が助けてほしいというのを聞いただけです。俺のワガママですね」
俺の言葉に驚くご両親。
普通は高額な謝礼を要求するパターンだろうしね。
「と言いましても、お気になさりますわよね。ですので、マサミさんが無事ご帰宅なさり、ご両親が安心なさった時の成功報酬として必要経費だけ頂けますか?」
俺の言葉に続けてマユ姉ぇが話す。
俺は別段構わないけど、他の人が損するのはイヤだしね。
「え、そのような程度でかまわないのですか?」
「はい、今回はご両親様から正式にご依頼を受けた訳でもありませんから。ですので俺としても経費を頂くのも心苦しいくらいでして」
「それでは私共の気がすみません。実際、どこに相談したら良いのかすら悩んでいましたから。そこにコトミちゃんからの紹介でそちら様と接触できただけでもありがたい話です」
コトミちゃん情報によると、興信所とか弁護士等でかなりお金を使ったものの埒があかなかった様だ。
オカルト的な存在相手では仕方がないかも知れないが。
しかし、そこに弱みに付け込み暴利貪るのは、人としてどうかと俺は思う。
「では、その辺りのお話は無事にマサミさんが帰宅してからにしましょうか。まずはそれ優先ですから」
◆ ◇ ◆ ◇
マサミちゃんの実家からの帰宅途中の車中で、マユ姉ぇからいつもどおり弄られる俺。
「また良い顔しすぎよ、コウちゃん。絶対助けるなんて安請け合いしなかった分マシになったけど、お金いらないなんて言うのは絶対ダメよ。大人が仕事をする以上、ある程度お金を取るのは当たり前。その金額が仕事の大きさ・大変さを意味するの。タダで自分を身売りするのは、いい加減な仕事しかしないと思われるのよ」
どうも俺は金銭欲が薄いのか、損しなきゃ良いくらいにしか考えていないところがある。
その点、医療や祈祷等、「技術」で働いているマユ姉ぇの言葉は大きい。
「先輩の事ですもの、損しても動いちゃいますよね。ダメですよ、せめて経費くらいは取らないと」
ついでに家に送っているコトミちゃんからも言われる俺。
「そういうコトミちゃん、今回何か儲けたの?」
「アタシは普段知りえない情報を沢山入手できましたし、今後のコネも出来ました。後は、ヒミツです!」
いつものヒミツポーズで誤魔化すコトミちゃん。
実に手ごわいね。
「ホント、コウちゃんもコトミちゃんくらいオトナにならないとダメね」
う、俺の方がコトミちゃんよりも年上なんですけど。
「そうですよね、マユ姉様。先輩いつまでもコドモっぽいままですもの」
オトコはいつまでも何処かにコドモが残っているモノなんだけど、女性には理解されないのかなぁ。
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