第79話 康太の新たなお仕事:その3「宗教団体?」
コトミちゃんは続けて話す。
「マサミちゃん、牧野 雅美ちゃんですが、アタシやアケミちゃんと同じ高校の同級生だったんです。マサミちゃんは短大に行って、この春に卒業して、地元の旅行代理店の事務職に就職したんです」
ふむ、ここまではアケミちゃんの話と同じだね。
「マサミちゃん、ちっちゃくて可愛い子で男の子にも女の子にも人気者でした。本人は気にしていた様なんだけど、成人しても中学生みたいな感じで職場でも可愛がられていたって電話があったのが4月中旬の事です」
コトミちゃんはさっきまでの興奮した様子からすっかり真剣になっている。
「それがゴールデンウイーク以降全然連絡が無くなって、SNSも既読にならなくなりました。お仕事が忙しいからかなと思っていたのですが、気になって調べてみると彼女は変な事に巻き込まれていたんです」
コトミちゃんの調査だから、多分事実だろう。
さて、「変」な事とは。
「マサミちゃんは、とある宗教団体に最近加入したようで会社には行っているのですが、あまりお家には帰らないんです。彼女は実家に住んでいますので、マサミちゃんのご両親もその事を心配しています。その宗教団体は、ここ数年急に力を増してきているところで、怪しげな噂も入手したので個人の信教は大事ですけど、マサミちゃんが悲しい事にならないかと心配なんです」
うむ、話はアケミちゃんから聞いたとおりだね。
ただ、この時点ではオカルトは関係ない、警察や弁護士の出番だ。
「ここまででしたら警察とか弁護士の仕事の範疇なのでしょうが、先輩やお姉様達にお力をお貸し願いたいのは、教祖がオカルト能力を使って悪霊を信者に憑り付かせて、お金や精気、更に美女には性的に貢がさせているんです。このままではマサミちゃんは文字通り、全てを教祖に貢ぐことになりかねません」
コトミちゃんは、少し涙ぐみながら俺達の前に土下座をして頼む。
「アタシでは調査は可能ですが、物理的・魔法的・法的攻撃力がありませんから、マサミちゃんを救う事は出来ません。各方面にお力がある皆様のお力をお貸し願えませんでしょうか? もちろんアタシは今後とも皆様に情報を随時提供致しますし、微力ではありますがお役に立てると思います。勝手なお願いとは思いますが、マサミちゃんを助けてください!」
これは大変な話だ、戦うにしても相手は宗教法人。
マジでヤバイ相手だ。
しかし、女の子が土下座までして頼み込む話、またそれも女の子を救う話。
ここでやらねば、俺は一生後悔するだろう。
「俺は……」
俺がしゃべりだすのを、チエちゃんが止める。
「コウタ殿、全部まで言わんでもお主の考えは顔に出すぎじゃぞ。母様、これは放置ならんのじゃ。ワシが出張っても良いのじゃが、そうなると大きな話になってしまうのじゃ。ここはコウタ殿のお仕事として受けて、ワシはサポートに徹したいのじゃが良いかな?」
チエちゃんは俺が「仕事」を請けやすいように下準備をしてくれた。
ホント、俺を鍛えつつ甘やかしてくれる素晴らしい家族だね。
「そうねぇ、私も女性の敵は許せないわね。ちょっとその教祖サンには痛い目見てもらおうかしら。でも『子供のケンカ』に親が出るのもナニですから、コウちゃんのお仕事で良いわね。私は警察と医療方面からサポートするわね」
マユ姉ぇもありがとう。
これで、俺が存分に戦えるよ。
「コウ兄ぃ、ボク達を忘れていない? これでもボク達も戦力として十分なんだよ。ねえ、リタちゃん!」
「うん、『おんなのこ』のてきは、ゆるせないもん!」
2人とも一緒になって憤慨してくれるのはありがたいけど、危ないよ。
今回も幼めの女の子が狙われているんだ、中学生でも危険だよ。
まあ2人だと襲った相手の命の心配も必要だけど。
しかし2人とも性的って言っていた意味分かっているのかな?
「2人とも一応聞くけど、性的に貢ぐって意味分かって……」
「コウ兄ぃ、ボク達もいつまでもコドモじゃないんだよ。ね、リタちゃん!」
「うん、いやらしいおじさん、だいっきらい!」
「まあ、2人は戦闘になったら呼んでもらうようにするから、それまでは迂闊に動かないでね。もしかしたら中学校で聞き込みとかしてもらうかもしれないけど、それもとっても危ないのよ。2人とも役に立つのは十分分かっていますから、まずは自分を大事にね」
「うん、お母さん」
一応、マユ姉ぇのまとめでナナ達が暴走する事は避けられた。
コイツら、自分達の強さ分かっていないから、襲われたら逆に突撃して宗教法人を「皆殺し」にしかねない。
特にリタちゃんの火力は戦略兵器級なんだから、怖いったらありゃしない。
ビル毎全員抹殺とか、見渡す限り死屍累々とか。
今回は人間相手なんだ、戦力を小出しにしなくちゃならない苦労を分かって欲しいよ。
「という事なのじゃ。だからコトミ殿、安心するのじゃ。コウタ殿と我らが事件を解決するのじゃ!」
と、美味しいマトメをしたチエちゃん。
こういう所が「美味しいもの好き」だね。
「はい、お姉様、先輩。皆様宜しくお願い致します」
女の子の救助作戦だ。
さあ、頑張りますか!
ブックマーク、感想、評価・レビュー等を頂けますと、とても嬉しいです。
皆様、宜しくお願い致します。