第78話 康太の新たなお仕事:その2「混ぜるな、危険?」
「そういう訳だから、すまないけど彼女に会ってくれない?」
俺は、マユ姉ぇとチエちゃんにコトミちゃんの事を相談した。
「コウちゃんの事をそこまで見ているなんて、まさかその子コウちゃんの事が好きなのかしら?」
マユ姉ぇ、それはピントずれていませんか?
もし、それが事実だったら俺ちょー怖いんですけど。
並みのストーカーレベルじゃないぞ。
そうだったら、チエちゃんから朧さん借りてボディーガードしてもらわなきゃ。
「それは多分無いじゃろ。『朧』から報告があがってきておるが、その娘は純粋に情報を集めるのが好きなだけじゃ。コウタ殿に近づいたのは、ネタをいっぱい持っておるからじゃろう」
ほっとするよ、チエちゃんの答えは。
しかし、先手打って調べてくれているとは流石知恵の魔神将だね。
「じゃあ、会って貰っていいの?」
俺の質問にチエちゃんは答える。
「しょうがないのじゃ。彼女の事じゃ、放置しておいても多分もっと危険な事に首を突っ込みかねんわい。なら今のうちに監視できるように身内に入れる方が、ワシらも彼女も安全じゃな。それでいいのじゃな、母様」
「そうね、噂レベルから真実を導ける異能者なら味方にしておいた方がいいわよね。第一、向こうから仲間になりたがっているんですものね」
マユ姉ぇも結局会談には応じてくれた。
なお、ナナとリタちゃんは今お風呂中。
危険な話は2人を巻き込みたくは無いし。
しかし、多分2人も会わせないとややこしくなるんだろうなぁ。
◆ ◇ ◆ ◇
「はじめまして、私、綾瀬コトミと申します。功刀先輩には、いつもお世話になっております」
コトミちゃん、今日はしっかりと「猫かぶり」状態。
お茶菓子まで持ってきている。
もちろんナナ達や正明さんを含めた人数分なのが怖い。
「はい、はじめまして。コウちゃんから貴方のお話は聞いています。私が叔母の岡本真由子です。で、こちらの子が私の娘の……」
マユ姉ぇの紹介に続いてチエちゃんが答える。
「岡本チエじゃ。お主、なかなかにスゴイ能力持ちじゃな。ワシの事も知っておるのじゃな?」
チエちゃんは、早速コトミちゃんに「攻撃」をしてみる。
「そうですね、実の娘さんじゃないのは顔立ちから分かりますね。気配からして、そちらの奥に隠れているうちの1人が叔母様の実の娘さん、もうひとり気配が強い女の子が古墳での娘さんでしょうか?」
コトミちゃん、気配消しからして「力」持ちだとは思っていたけど、気配の読み方が普通じゃない。
見事に察知されてびっくりしたナナやリタちゃんの気配は、俺でも集中しないと分からないのに。
「ほう、お主気配の察知やコントロールにも長けておるのじゃな。ならば、ワシが全力で気配を出したらどうなるのじゃろうなぁ!」
そしてチエちゃんは「気」を幼女形態での最大解放をした。
その「気圧」は圧倒的で、俺でも正体を知ってて尚、震え上がるレベルだ。
「え――! スゴ過ぎですね。とても『人間』では出せないレベルですよ。流石は超上級魔物サンですね」
この「気圧」の中、平然と気を受け流して限りなく正解に近い答えを出すコトミちゃん。
襲われないと思っているのか、それとも逃げきれる自信があるのか。
このすごい度胸、コトミちゃんも十分バケモノだよぉ。
因みに、マユ姉ぇはニッコリ状態で優雅にお茶を飲んでいるのが、いつもどおりの「変」。
ナナも「へ-」とした感じだし、リタちゃんも「おねえちゃん、すごい!」だって。
俺の周りの女性、普通人が誰も居ないぞ。(泣)
「ほう、この『気圧』に耐えるどころか怯えもせずに『正解』を出すとは見事じゃ。これじゃからコウタ殿達と連るむのは面白いのじゃ!」
「気圧」を消したチエちゃん、すっかりワクテカ状態で身を乗り出して顔をコトミちゃんに近づける。
「ふ――、ありがとうございます。流石にアレだけの『気』は苦しいですねぇ。アタシは、昔から気配を察知したり消したりしていたので、慣れているのもあるかも知れませんね。で、チエさんの正体は何なのですか? アタシが知る魔物では該当しそうなのは、もう神様レベルしかいらっしゃらないのですけど」
「ふむ、知識や推理力も合格じゃ。その通り、ワシの正体は魔神将じゃ!」
そして珍しくチエちゃんは俺達以外に真の姿、巨大美人悪魔形態を見せた。
「チエさん、いえチエ様、チエお姉様ぁ。どうも御身を見せて頂き、ありがとうございますぅ」
コトミちゃん、すっかりチエちゃんのファンになったもよう。
手を合わせてチエちゃんを拝んでいる。
「うーむ、やっぱりコウタ殿の周辺は変なのじゃ。皆揃ってなんでワシを拝むのじゃ?」
「さあ、俺に聞かれても困っちゃうよ」
まあ、俺もチエちゃんの事を時々拝んでいるんだけどね。(笑)
さて、それ以降は興奮状態のコトミちゃんを幼女形態に戻ったチエちゃんが抑えるという珍しい状態が見えた。
この2人、相性が良い様だけど、もしかして「混ぜたら危険」なのかも。
その後、もちろんその場にナナやリタちゃんも同席してきて賑やかな話になったのは言うまでも無い。
「は――、一生分の面白い話を聞けましたぁ。満足ですぅ」
すっかり恍惚状態のコトミちゃんだが、これで終わってもらっては困る。
アケミちゃんから聞いた話のウラ取りをしないといけないし。
「今日コトミちゃんに来てもらったのは皆への紹介というのもあるけど、アケミちゃんの事もあるんだ。コトミちゃんが知っていることを教えてくれない?」
「はい、アタシの同級生の話でもありますから、是非とも皆様で解決して欲しいので、宜しくお願いします」
コトミちゃんは急に表情を引き締め頭を下げた後、話し始めた。
「それは、アタシ達の同級生、マサミちゃんの身の上に起こった事なんです」
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