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功刀 康太の遺跡探訪、時々お祓い ~女難あふれる退魔伝~  作者: GOM
第二部 第一章 功刀康太はダンジョン攻略をする
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第73話 康太は迷宮探索をする:その26「チエさん、悪魔形態を見せる」

 とりあえず一件落着したのだけど、それは俺達の事情について。

 他のご迷惑をおかけした箇所への謝罪行脚が残っている。


「では、落ち着いたところで、まずは『御山』に謝りに行きますか、チエさん?」


 マユ姉ぇからの問いに、チエさんは両手で涙を拭ってからニッコリと笑い答える。


「うむ、そうじゃな。引越しは『(おぼろ)』に任せるとして、謝罪にはワシが直接出向かねばならんからのぉ」


 あら、結局朧さんがまた無茶言われる訳ね。


「御意。では発送先はマユコ様の御自宅で宜しいですか? 荷の到着日時等ご指定がありましたら、今日明日中でしたら変更可能ですので主に申してくださいませ」


 宅配便使うのかな?

 まあそれが間違いないけど、朧さんどうやって荷を集配所まで持っていくのだろうか?

 まさか迷宮(ダンジョン)まで取りに来いとは言えないだろうし。


「では、皆の衆準備良いか? では、時間がもったいないのじゃ。ワシの力で飛ぶのじゃ!」


 チエさんは、俺達の反応を確認してから飛翔(テレポート)をする。


「では、我が主をくれぐれも宜しくお願い致します」


 俺は朧さんが頭を下げたのを見た直後、暗黒に捕らわれた。

 ・

 ・

 そして、周囲が急に明るくなった。

 そこは、『御山裏』の事務所前、一気に飛んできた訳だ。


「しもうた。(みな)の着替えがあるところに飛ぶべきじゃったか」


 チエさんは、うっかりという感じで舌を出した。


「いえ、それは後から『御山』の方に取りに行ってもらいましょう。まずは、中に入って説明しましょう」


 しかし、いきなり幼女が行って、「ワシが魔神将(アークデーモン)じゃ」とか言って信用されるんだろうか。

 目の前で色々見た俺達でも納得するのに時間がかかったし。

 これは、マユ姉ぇのお手並み拝見だ。


  ◆ ◇ ◆ ◇


 それからが、大変だった。

 信用をしない玄覚和尚(げんかくわじょう)を説得する為に、俺やカレンさん、シンミョウさんが色々話したけど一向に納得してくれず、チエさんを睨んでいる。

 そこでチエさんがぶち切れて、悪魔形態の朧さんを召還したり、部屋ごと迷宮(ダンジョン)へ飛ばしたり返したりしたので、やっと分かってくれた。

 分かるまでは馬鹿にされていると思い込んでいた怒りからか赤い顔だった和尚、チエさんの正体を知って今度は顔を真っ青にした。


 チエさん、俺達の手前穏健な方法で正体を説明してくれて助かったよ。

 ん?

 そういえば、自身の悪魔形態見せたら早いのに何で見せないんだろうね。


「チエさん、説明するのにどうして御身の真の姿をお見せしなかったのですか? そうすれば手っ取り早いのに」


「コウタ殿、もう一緒に住む仲じゃ、敬語はいらんぞ。ワシの姿か。ワシ、好かれた相手に正体を見せたくないのじゃ。だって怖がらせるだけなものじゃ」


 チエさんはとても恥ずかしそうな感じ。

 まあ、今の可憐な姿を自身のモノと考えるんだ。

 朧さんの人間形態といい、美的感覚は俺達と同じなのだろう。


「えー、ボク見てみたいよ!」


「うん、ちえおねえちゃん、みせて!」


 しかし、妹2人はその姿を見たいらしい。

 まあ、俺も見ては見たいね。

 「(ナイト)」の姿は見たけど、怖いとかは思わなかったし。


「まあ、2人とも女性に恥ずかしい姿を望むのは悪いわよ。そういえば一応確認しますけど、チエさん女性ですよね?」


 マユ姉ぇの問いに、


「もちろんワシはうら若き乙女じゃ。他の悪魔は知らんが我らの種族も有性生殖する生き物じゃ」


 1000年以上生きていて「うら若き乙女」というのがどうなのかは、あえて突っ込まないぞ。


「でも良いのか? せっかくワシの事を知ったのに怖くないのか?」


「うん、ボク、チエちゃん好きになったもん。それに、どんな姿でもチエちゃんはチエちゃんでしょ」


 早速「ちゃん」呼びするナナ。


「うん、わたしも、ちえおねえちゃんのこと、すきだから、どんなすがたでもすきだよ!」


 こうまで言われて嬉しくて顔を真っ赤にしたチエさん。


「正体を知られても、そうまで言ってくれたのはお主達が2人目じゃ。では、その言葉を信じて正体を見せるのじゃ!」


 そしてチエさんの姿はケムリに包まれて、巨大化して現れた。

 ・

 ・

 その姿は身長2m程度。肌は青黒系、こめかみ部に2本のややねじれた短めのヤギ角、額に第3眼、顔や身体には意匠豊かな隈取(くまどり)がある。背中には悪魔らしくコウモリの羽、1m程の尾は細長く先が尖っている。

 ここまでは悪魔らしい異形なのだが、それ以外は絶世の美女。

 つややかで腰までの長い黒髪、やや釣りあがった金色(こんじき)の眼と端正な鼻、そして色気たっぷりな唇、八重歯とも言えなくもない牙。

 バストも大きく、腰はほっそり、ヒップは豊満、腰から脚のラインも綺麗だ。

 もちろん全裸ではなくて、ボディラインが分かる程度の白い薄絹を着用している。

 薄紫のストッキングに靴もピンヒールと、脚のラインを綺麗に見せるのに特化している。


 この姿を見た(みんな)、「ほーっ」という声を思わず出した。

 その場に居た和尚すら見惚れたのは、ちょっと可笑しかった。

 (みんな)が声を出さないのを、自分を怖がったからと思い込んだチエさん、


「だから、イヤだったのじゃ。怖いのじゃろ! 恐ろしいのじゃろ!」


 その声は幼女形態よりは低いものの、やっぱりチエさんの声。

 身体をくねらせながらの狼狽具合が可愛いし、エロい。


「違うの! すっごく綺麗でびっくりしたの。ボク、こんなに綺麗なヒト見たこと無いもん!」


「うん、ちえおねえちゃん、とってもきれい!」


拙僧(せっそう)が言うのも何ですが、良いものを見せて頂きました」


 和尚が拝みながらチエさんを見るのは可笑しかった。

 まあ仏にも魔族出身の方多いから、そういう意味では変じゃないか。


「そうね、その御姿でしたら別の意味で騒ぎになるかもしれないわね」


 苦笑いしながら言うマユ姉ぇの考えも分かる。

 これだけ美人で善良なら悪魔でもひっぱりだこの人気者になるだろうね。


「チエ様、最初から何故にそのお姿で出てこなかったのですか? 説得力も威厳もお有の上にお綺麗ですもの」


「美人でうらやましいですぅ、チエお姉様ぁ」


 1人、危ない方向に行きそうになっているけど、尼僧2人にも好印象の様だ。


「うん、俺も美人だと思うし、そういう事だから卑下しなくても良いよ、チエさん」


 俺達の反応を想像していなかったのか、焦るチエさん。


「なぜじゃ、悪魔じゃぞ。恐ろしいじゃろ?」


「チエさん、日本文化を知っているつもりでもまだ分かっていないよ。何でも神様にしちゃうんだもの。鬼だろうが悪魔だろうが、人間の味方ならどんどん神様にしちゃう国なんだよ。だから美人でお茶目で泣き虫な悪魔なら、あっという間に人気者だね」


 俺の説明に納得しきれないチエさん。


「でも、怖がられたり嫌われたりするよりは良いでしょ」


「それはそうじゃが。うーむ、どうも調子が狂うのじゃ。昔ヨーロッパでは偉く怖がられ、嫌われたものじゃのに」


 首を傾げながら考えるチエさん、すっごい色っぽいね。

 しかし、キリスト教圏かつ昔なら悪魔が迫害されるのもしょうがないかな。


「まあ、そういう事なので、今後も無理しない程度で御姿を見せて頂戴ね」


 マユ姉ぇのまとめでようやく納得したチエさん。


「じゃあ、宜しくのぉ」


 その凄みのある、しかしどこか泣きそうで寂しそうで嬉しそうな笑顔は多分俺一生忘れないよ。

 ね、泣き虫悪魔のチエさん。

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