第66話 康太は迷宮探索をする:その19「迷宮最終戦その1!」
俺達は作戦会議を終え、幼女悪魔、チエさんを大声で呼んだ。
「チエさん、こちらは作戦会議が終わりました。来て頂けますか?」
俺の呼び声を聞いた、チエさんは隠し部屋のドアを開き、楽しそうに出てきた。
「十分作戦は練られたのでおじゃるかな? 今回もワシを存分に楽しませるのじゃ!」
ワクワクテカテカ状態の幼女。
ホントこの幼女が魔神将だとは、本人から聞いても信じられないくらいだ。
「で、戦う前にお願いがありまして。シンミョウさん、どうぞ」
俺はシンミョウさんに話を向ける。
「すいませぇん。お恥ずかしい話ですが、私トイレが近くて緊張したのか、またトイレに行きたくなったんですぅ。この層にトイレはありますかぁ?」
ごめんなさい、今回シンミョウさんに恥ずかしい役を押し付けてしまいました。
この借りは、後で必ずお返しします。
「それなら、そこのモノを使うがいい。ホレ!」
そう言って、ドヤ顔のチエさんが壁を指さすと、そこにドアが出来て開き、中に洋式便座があるのが見えた。
よし、目的のモノもあったぞ。
「はい、どうもありがとうございますぅ」
そう言ってシンミョウさんはトイレへ走って行った。
よし、これで作戦は完璧だ!
じゃあ、チエさんの注意をこっちに向けるべく、お話ししますか。
「チエさん、何かとお気遣いありがとうございます。しかし、ここまでお優しく力があって賢いのなら、誰にもご迷惑をかけない方法があったのではないですか?」
俺はチエさんに直球をぶつける。
「それはそうかも知れんが、あの時はワシはこの方法しか思い浮かばなんだのじゃ。『騎』の外道アホたれが、あんな事せなんだら、もっと時間もあったのじゃ」
チエさんは苦しげに話す。
「皆には迷惑をかけたのじゃ。これが終わったら各方面にワシが直接謝りに行くのじゃ。もちろん損害補填も必ず行うのじゃ。それでも許してもらえるとも思わんが」
チエさんは俺達に頭を下げて謝る。
まー、俺個人は結構楽しませてもらったし、良い修行になったから良いけど。
「そうね、じゃあ私達が負けたら一緒に謝りに行ってあげるわ。私達が勝ったらご褒美を、特に困らせたカレンちゃん達にあげてね。そうしたら一緒に謝りに行ってあげるわ」
マユ姉ぇは、いつもの癖で右手人差し指を頬に当てて、チエさんに提案をした。
そのマユ姉ぇの提案に、チエさんは顔を上げた。
「ワシの事を許してくれるのか? ワシは悪魔じゃぞ! いつ裏切らないとも限らないのじゃぞ!」
チエさんは、今にも泣きそうな表情で叫ぶ。
「大丈夫、泣いている女の子を許すのはオトナの仕事ですから。それに裏切る人が裏切るぞって言わないでしょ」
マユ姉ぇは、チエさんに笑いかけて彼女を慰める。
「ワシは泣いてなぞ、おらんぞ」
そう言いつつ、涙を拭うチエさん。
ホント、これが演技だったらアカデミー賞モノだよ。
「はいはい、わかりました。チエさんは偉いですからね」
マユ姉ぇは、苦笑いしながらチエさんを褒める。
「そうじゃろ、そうじゃろ!」
今まで泣いていたチエさん、今度はドヤ顔で「無い」胸を張った。
ここまでちょろくて、お人好しなチエさん、良く今まで悪魔やっていられたよねぇ
◆ ◇ ◆ ◇
シンミョウさんがトイレから帰ってきて、俺達全員が戦闘準備に入った。
「では、始めるとしようかのぉ。最終戦開始じゃ!」
玉座に座ったチエさんが右手を挙げると同時に、「むせるクン1号」の目が赤く光る。
様式美だと思うけど、何故にロボットの目は赤く光るのだろうか?
俺とマユ姉ぇが前衛、中間にカレンさん、後方に残り3人の布陣だ。
まず俺達前衛2人が「むせるクン」に突撃した。
「むせるクン」は脚の車輪を起動し、床石との間に火花を出しながら疾走しはじめる。
オリジナル通りの動きで「むせるクン」は俺達に接敵、右手のマシンガンを撃つ。
ぱんぱんぱん!
連射速度は思ったよりも遅かったけど、弾が飛んでくるには変わりない。
いくらスポンジとはいえ、当たったら痛い。
「痛て、痛て!」
俺は左手に持った三鈷杵から「盾」を生成してはいたけど、飛んでくる弾全部を弾けられる訳はない。
一部は盾で防げたけど、結構被弾した。
これ、実弾なら俺死んでるよね。
「コウタ殿、しっかり避けんと痛いぞ。いくらスポンジとはいえ当たれば痛いし、痣にもなるのじゃ。今晩の風呂で身体が面白い模様になっているのじゃ」
チエさんは高笑いしながら、俺を声援する。
うーん、敵に声援される俺って。
俺は瞬動法でなんとか「むせるクン」の射角から逃れ、右手小手から気弾を撃つ。
気弾は「むせるクン」の胴体に当たるけど、全く効果なし。
まあ、想定内だよね。
マユ姉ぇは、瞬動法で完全にマシンガンの弾を避けきって、薙刀モードの光兼サンで切りつける。
しかし、やっぱり鋼鉄であろう装甲には傷ひとつ付かない。
ナナは小物達を多数展開して攻撃をする。
小柄、和バサミ、望遠鏡サン達をこちらに送り、タイル、漏斗、狛犬サン達を手元に置いてある。
タイルサン、狛犬サンは後衛の守護に、そして漏斗サンはシンミョウさんの近くで仕掛けの準備中。
小柄、和バサミサンは「むせるクン」に幾度も突撃はするものの、簡単に弾かれて効果なし。
「望遠鏡サン、ふぁいやー!」
ナナの掛け声でレーザーが「むせるクン」に突き刺さるも、装甲を溶かす事は無かった。
どうやら対光学兵器のコーティングが装甲にされているみたいだ。
「ふふふ、対刃物、対レーザー対策は存分にやっておるのじゃ。そちらの手の内は既に把握済みなのじゃ!」
やはりそうね。
じゃあ、知らない策にはひっかると。
「カレンさん、お願いします!」
俺はカレンさんに作戦指示を出した。
「了解です。不空羂索観音菩薩 捕縛呪!」
カレンさんから羂索が何本も伸び、「むせるクン」に向かう。
「その手も把握済みじゃ。もう手は無いのか、つまらんのぉ」
そうチエさんがつまらなそうに言うのまで計算済み。
そして、その後チエさんが驚くところまでも計算通りなのだ。
「え!!」
そう、俺の予想通り、チエさんは驚いた。
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