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功刀 康太の遺跡探訪、時々お祓い ~女難あふれる退魔伝~  作者: GOM
第二部 第一章 功刀康太はダンジョン攻略をする
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第63話 康太は迷宮探索をする:その16「心癒して」

 無事、第4層ボスを撃破した俺達は休息、コイン集めをした後にボス部屋の中にある階段を下りた。


「マユ姉ぇ、(みんな)。色々と心配させてごめん。俺、自分で思う以上に心が弱かったよ」


 俺は階段をパーティの先頭に立って下りながらマユ姉ぇ達に謝った。

 人間相手に戦えないのではないかと悩んだ思いが、今も俺の中に鈍く(くすぶ)っている。

 この思いを抱えたままでは、俺はどこにも行けない気がしたから。

 その上、俺は家族を失う事を非常に恐れていて、いつ「トリガー」が引かれるか分からない。

 またマユ姉ぇ、ナナ、リタちゃんが危機になったら正気でいられるんだろうか?


「もういいのよ、コウちゃん。今の日本で殺す殺さないとか言っている方がおかしいんだから。多分自衛隊の人でも敵を撃てって言われて躊躇(ちゅうちょ)しない人はいないわ」


 そう言ってマユ姉ぇは俺を慰めてくれる。


「そうですよ。私だって、まだ人間は傷付けたことはありませんから。模擬戦闘は何回もやっていますけど、実戦は全く違いましたし」


 カレンさんも俺を慰める。


「しょうがないなぁ、コウ兄ぃは。後でボクの膝でも貸してあげるから、そこで泣いても良いよ」


 ナナや、それは膝枕しても良いという事なの?

 ありがたいけど、それはちょっと恥ずかしいよ。


「こうにいちゃん、わたし、だっこしてあげようか?」


 ああ、リタちゃんにまで気を遣わせてしまったよ、俺。


「コウタさん、私は何をしてあげたらいいのでしょうかぁ?」


 シンミョウさん、話しの流れで言ってくださったのでしょうけど、トランジスタグラマーのシンミョウさんに何かしてもらったら、流石(さすが)にシャレになりませんから。


(みんな)、どうもありがとう。お気持ちだけ、ありがたく頂戴します」


「えー、ボク本気だったのにぃ。ねえ、リタちゃん!」


「うん、わたしも、こうにいちゃん、だっこしたいよ!」


 二人とも、とってもありがたい申し出だけど、マジでシャレにならんので、そのくらいにして下さい。


「ナナ、リタちゃん。そういうのは俺じゃなくて本当にスキな人が出来たら、その人に言ってあげてね。俺はもう大丈夫だから」


「ぶー、ボク達を子供扱いするぅ。コウ兄ぃの事ホントに好きなのに。ねぇ、リタちゃん!」


「ぶぅー。そうだよねぇ、おねえちゃん!」


 揃ってふくれっ面でぶーたれて俺に文句を言う妹達。

 ホント、可愛くて優しくて暖かい妹達だよ。

 だからこそ、大事に思うから俺なんかで2人を(けが)したくない。


 俺が困っている様子を笑いながら見ていたマユ姉ぇ、


「コウちゃんが困っているから、そのくらいしてあげてね、二人とも。またお家に帰ってから色々としてあげたらいいから」


 マユ姉ぇ、頼むから娘2人を俺に(けしか)けて来ないで下さい。

 俺のSAN(しょうき)値、ガリガリ減っちゃうよぉ。


「マユ姉ぇに2人とも、ちょっと勘弁してよぉ!」


 とまあ、そんなこんなで俺の中にあったモヤッとした黒い影は、妹達やマユ姉ぇ達の愛で浄化され、綺麗さっぱり消えた。

 ホント、(みんな)に感謝だ!


  ◆ ◇ ◆ ◇


「コウタ殿、良い仲間をお持ちじゃな。自分が甘いのを自覚しているのは、良い事じゃ。後は、どうするかだけなのじゃ。精進するんじゃぞ」


 幼女悪魔は、モニター越しに康太達の微笑ましい会話を聞いて笑った。


「さあ、いよいよワシの出番じゃ。流石に明日だろうが、準備して待っておるぞ」


 幼女悪魔は、明日が楽しみで仕方がない。


  ◆ ◇ ◆ ◇


 俺達は階段を下りて、第5層の「門」の前に立った。

 いつも通りの「地獄の門」と「考える人」、そして石碑がある。

 石碑には、以下のように書かれている。


「岡本真由子殿、以下5名の勇者よ。よくぞ(われ)の作りし迷宮を突破してきた。最後に待ち構えるは、我と我が作りしツワモノなり。心して戦うがいいぞよ」


 あれぇ?

 どうしてマユ姉ぇの本名がバレているの?

 っていうか、よく見ると下の方に俺やナナ、リタちゃん、カレンさん、シンミョウさんの名前が本名込み(リタちゃんの場合は、ドイツ語表記)で書かれてある。

 完全にこっちの事を知られている、というか遊ばれている。

 たぶん、これは俺達が迷宮(ダンジョン)内に入った時に作られたんだろう。

 というか、トイレの件からして俺達を観察して、適示対応しているんだと思う。


「マユ姉ぇ、絶対この迷宮主(ダンジョンマスター)、俺達を(もてあそ)んでいるよね」


「でも、私あんまり悪意は感じないのだけれど。さっきのボスもワザと人形にしてくれたし、トイレの件も助かったし」


「うん、それはそうだけどね。じゃあ、(ぬし)は俺達に何をさせたいんだろうか?」


「あ、ボク、分かったかも! このヒト、ボク達と遊びたいんじゃない? TRPGとかのマスターと同じ事やっているんだもん」


 ありゃ、TRPGを遊び慣れた筈の俺が気が付かなかった事をナナが先に気が付いちゃったよ。


「そうか、言われてみればTRPGのGM(ゲームマスター)と同じだ。俺達プレイヤーを楽しませるために色々と準備しているんだ」


「じゃあ、私達は楽しんで遊んであげるのが一番でしょうね」


 マユ姉ぇはそう言うけど、尼僧2人は不満そう。


「では、私達『御山』はダシに使われたのでしょうか?」


 がっかりウンザリした表情のカレンさん。


「私達の、あの苦労は一体何だったんでしょうかぁ」


 今にも泣きそうなシンミョウさん。

 まあ、何回も「全滅」を味わった2人が愚痴(ぐち)るのもしょうがないよね。


「その文句は、明日直接言ってあげたら良いわ。多分今も聞きながら、どう言い返すのか考えているのでしょうから」


 クスっと笑いながら話すマユ姉ぇ。

 実際、どうなんだろう?


  ◆ ◇ ◆ ◇


「う、流石はマユコ殿、鋭いわい。さあ、しっかりと考えておかねば、叱られるぞ、ワシ。コインの使い道もまだ考えておらんし、どーしよう! 明日、土下座した方がいいんじゃろーか。 あー、どうしたらいいのじゃぁぁ!」


 ここにきてイタズラのツケが廻りそうな幼女悪魔であった。

 さっきまで明日が来るのが楽しみだったのに、今は不安と困惑でいっぱいだ。


  ◆ ◇ ◆ ◇


 そういう訳で第4層の攻略は無事終了、残るは最下層のボスのみ。

 ちょうど明日は迷宮攻略に使える最終日、このままボスとっちめて色々聞き出しましょうか。

 ボスの正体はたぶん俺が思っている「アレ」だから、聞きたい事山ほどあるしね。


ブックマーク、感想、評価・レビュー等を頂けますと、とても嬉しいです。


皆様、宜しくお願い致します。


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