第61話 康太は迷宮探索をする:その14「第4層へ」
単眼巨人を攻略後、第四層への門を確認した俺達は、帰還の途に着いた。
もう攻略しているので、第三層は何の障害も無く「歩く歩道」も止まっていた。
もしかしてトイレも止まっているかも気になって、前に休憩した部屋を確認ついで立ち寄ったけど、トイレは無事稼働中。
どうやら衛生系は止めないのね、その方が助かるよ。
実際、女性陣は助かったみたい。
◆ ◇ ◆ ◇
「御不浄を止めなくて良かったわい。さて、今日はもう帰る様だから明日の準備やらコインの使い方考えねば。コインに何の意味も無いと知られたら、きっと怒る。ワシ、こんな些細な事で怒られるのはイヤじゃ。迷宮作った事で怒られるは、しょうがないのじゃ。さもないとワシがマユコ殿達と接触する方法が無かったからじゃ。いきなり、魔神将『知』じゃとか会いに行ったら警戒される上に攻撃されてしまう。そんな出会い、ワシはイヤじゃ、イヤじゃ」
幼女、いや魔神将「知」は名前通りの知恵を駆使して、少しでも初対面時の雰囲気を良いようにしたいと考えていた。
それが世間一般でいう処の「普通」とは程遠いものだとしても。
悪魔に良識や「普通」を考えろというのは本来無理な事、その悪魔の中でも善良で良識派に分類される「知」であろうが。
◆ ◇ ◆ ◇
無事、地上に帰還した俺達は十分な補給・休息をして英気を養った。
そして翌朝、迷宮攻略3日目が開始された。
残り俺達が攻略に使えるのは2日、今日中に第4層を片付ければ良い計算だ。
「じゃあ、参りますか、皆様!」
「おー!」
第4層は照明が全く効かない空間や、ちょっとした段差があったりと仕掛けが多い。
凶悪なデストラップは今のところ無いけれども、気をつけないといけないのは確か。
迷宮探索に必須のアイテム、10フィートの棒で怪しい所をつっつきながら進んでいく。
10フィートは約3m、結構長い棒なんだけれども短いと仕掛けに巻き込まれるから少々邪魔でもしょうがない。
古典であり原点のD&Dから使われている必須アイテム、君子危うきに近づかずとは言うけど迷宮なんて危ない所に冒険に行くんだ、準備しておいて損は無いよね。
◆ ◇ ◆ ◇
「ほう、古典TRPGも抑えているとは優秀だのぉ。しかし、迷宮主が性悪だと、11フィート離れた所に仕掛けを作るぞ。まあ、ワシは、プレイヤーが楽しめる迷宮を作っているから、そんな事はしないがのぉ」
幼女魔神将「知」は、段差とかで転びそうになっている康太達を楽しそうに見ていた。
◆ ◇ ◆ ◇
第4層を進む俺達だが、この層のモンスター達は結構凶悪。
グレーターデーモンとかも出てきて、なかなか苦戦しちゃう。
ザコ敵でも数が多く、今までよりも連戦が続き、前衛で暴れている俺はかなりきっつい。
「皆、大丈夫?」
俺は、だいぶ息を切らせながら全員の安否を聞く。
「今のところは、コウちゃんが踏ん張ってくれているから大丈夫よ。でも、そろそろ休憩しましょうか。もう半分くらいは、マップできているわよね」
マユ姉ぇも前衛で戦っている筈なのに、涼しい顔で答えてくれるのは流石。
「はい、お姉様ぁ。ボス部屋らしき場所もありそうな目星は突きましたぁ」
シンミョウさんが、ちゃんとマッパーしてくれているので大分安心。
特に暗黒ゾーンがある第4層では、方向感覚を失ったらどうなるか分からない。
「じゃあ、そこの部屋を調べて大丈夫なら入ってお昼休憩にしましょう」
「りょーかい!」
俺達はマユ姉ぇの提案で近くにあった部屋を調べて入った。
そこには敵はおらず、またトイレ表示のされた小部屋と机、椅子、そして奥の壁の窪みにカギがおいてあった。
「あら、この部屋は元々小休憩用なのね。そこのカギはもしかして2層のドラゴンの部屋のものかしら?」
カギを見ると「2F」と掘り込まれていて龍の意匠がなされている。
「意匠と文字からしてその通りっぽいね。じゃあ、また安全確認するから俺からトイレを確認するね」
なお、トイレはウォシュレットの水圧が非常に高い以外は普通でした。
しかし、予想以上の水圧はびっくりしたぞ。
思わず変な声出しちゃったから、皆俺の安否を気にしてトイレを覗き込みに来て、俺は恥ずかしい姿晒しちゃった。
もー、お婿さんにもらってもらえないよぉ。(笑)
◆ ◇ ◆ ◇
「ひゃひゃっひゃ。ひっかかった、ひっかかった! 命の危険が無いイタズラくらいは許してもらえるかのぉ」
幼女悪魔は、康太の情けない姿を見て爆笑した。
◆ ◇ ◆ ◇
俺一人が恥ずかしい思いをしただけで、俺達は無事昼食と休息が出来た。
迷宮主や、この恨み(笑)は必ず返すぞ。
さて、それからも探索途中に襲いくる動く彫像、幽鬼、人食い鬼なんかをバッタバッタと薙ぎ払い、やっとボスフロアーの場所が判明した。
すでに夕刻前、これで勝負を付ければ日程的にも問題は無い。
しかし、ドアに書かれている表札には予想もしない名前が書かれている。
「魔道騎士団の間」と。
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