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功刀 康太の遺跡探訪、時々お祓い ~女難あふれる退魔伝~  作者: GOM
第二部 第一章 功刀康太はダンジョン攻略をする
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第60話 康太は迷宮探索をする:その13「捕縛呪」

「真由子お姉様、いけます!」


 カレンさんは、握っていた羂索(ケンサク)を振り回し、練っていた呪を開放した。


「オン ハンドマダラ アボキャ ジャヤデイ ソロソロ ソワカ! 不空羂索(ふくうけんさく)観音菩薩かんぜおんぼさつ 捕縛呪(ほばくじゅ)!」


 その呪によりカレンさんが手に持っていた縄、羂索(ケンサク)が幾重にも分裂して単眼巨人(サイクロップス)へ向かう。

 そして巨人に縄は絡みつき、脚を取られた巨人は地に倒れた。

 カレンさんは羂索の端の()の部分を握って紐を捻り、巨人を更に縛り上げる。


 因みに羂索とは、今回の呪の不空羂索観音や不動明王が手に握っている5色の紐、元はインドで使われていた狩猟用の投げ縄で、5色の糸をより合わせ、一端に環、他端に独鈷杵(とっこしょ)の半形をつけた縄状のもの。

 仏教的には、救うべき弱者を縄で捕まえて逃さないという意味だそうな。

 今回の呪は、捕獲用に元々使われていた羂索をその用途にして使っている。

 巨人だって二足歩行動物、足元をさらわれたら転ぶし、体重が重い分転んだ時のダメージは人間よりも大きい。

 更に転んでしまえば、もはや棍棒も振り上げられないし、後は攻撃し放題だ。


  ◆ ◇ ◆ ◇


「ほう、足元を(すく)うか。いかな巨人でも足は2つ、実に効果的な方法じゃな」


 幼女は、カレンの行った退治方法に関心した。


「となると、次は第4層か。今度はどうやろうかのぉ。あまり簡単だと面白くないし、かと言って強すぎるのもダメじゃな。このゴールデンウィーク中に全部片付くくらいにせねばのぉ」


 幼女は、康太達の都合も考えて迷宮(ダンジョン)設定を変えてみる。


「さあ、存分に楽しんでくれるのじゃ!」


  ◆ ◇ ◆ ◇


 倒れてジタバタしている単眼巨人(サイクロップス)

 もはや起き上がるどころか棍棒を振り回す事すら出来ない。


「後は、弱いものイジメっぽいけど、袋叩きにする? コウちゃんも来てね」


 マユ姉ぇの呼びかけで俺は巨人の下へ移動する。


「私も削りに参加して良いですか?」


 カレンさんが言ってくるのだが、俺は呪文の維持が心配になって聞き返す。


「カレンさん、捕縛呪の維持は大丈夫なんですか?」


「この呪は一旦発動したら解除するまで捕縛し続ける呪なんです。捕縛した後維持が必要だと捕まえた相手を逃がす可能性もあるので、ずっと捕まえてくれる便利な呪なんです。紐は切れても再生するし、暴れたらその分紐が増殖しますから」


 それはまた恐ろしい呪だこと。

 準備に少々時間がかかるみたいだけれども、今回みたいな力バカ相手では一旦捕まったらそれまで。

 俺でも捕まったら脱出できるか自信が無いよ。


「じゃあ、カレンちゃんも一緒にボコってね。リタちゃんは紐燃やしたらダメだからもう攻撃は良いわ。ナナは切断系使う時は紐がある部分以外を狙ってね。シンミョウちゃんは適時治癒や疲労回復呪をお願い」


 ボコるとは、また怖い表現使うんだね、マユ姉ぇ。

 まあ、倒れている相手を囲って袋叩きだからそうかもね。

 後は別に述べる事も無く、俺達は黙々と攻撃をし続けて巨人が消えるまで30分近く切りつけ続けた。

 しかし残りライフ量が表示されている分、いくらド突いてもホンの少ししかライフが減らないのを見ているのも結構しんどいぞ。



「ふー、やっと倒せたよ。(みんな)お疲れ様でした」


「ええ、お疲れ様でした。しかし攻撃魔法使わないと私達火力不足なのかもね」


「真由子お姉様が火力不足じゃあ、私なんてそれ以前ですよ」


 カレンさんはマユ姉ぇの言葉で自分を卑下する。

 マユ姉ぇは謙遜(けんそん)気味に自虐(じぎゃく)するけど、物理攻撃力なら正直マユ姉ぇが俺達のパーティじゃ最大。

 俺は二刀流で攻撃は出来るけど、実体剣じゃないからどうしても打撃力に欠ける。

 といって実体剣では重くて二刀流は俺では無理だし、光剣では軽いから手数で勝負するしかないね。

 カレンさんも中々の強さで俺よりも物理攻撃では強そうな気はするけど、やはり女性だから限界はある。

 となると、強敵が多いだろう第4層ではどれだけ後衛の魔法攻撃を生かすかになるのかも。


「とりあえず、今回は良しとしようよ。第4層は又明日以降という事で、帰ってから作戦会議だね」


「ええ、そうね。とりあえず、この山になったコインを片付けて下の門だけ見て帰りましょうね。でも、このコイン何に使えばいいのかしら? 素材が金とかならスゴイけれども、見た感じ青銅っぽいし」


 マユ姉ぇも俺が抱いていた疑問に気がついてくれた。


「最悪、古金屋さんにでも売ろうか。銅線とか良い値で売れるから盗まれているそうだし。とりあえず迷宮主(ダンジョンマスター)にはコインの使用方法聞かないとね」


「そうね、聞いてみましょうね」


 なお余談だけど、送電等で使う銅線は電気抵抗を少なくする為に限りなく純粋な銅で作られていて、これが市場では高価で取引されている。

 なので、荒野にある無人の太陽光発電施設から発電されていない深夜に銅線が盗まれる事件が結構発生しているそうな。

 まあ、たまに昼間に盗もうとして感電するバカもいるらしいけど。

 因みに、太陽光発電ユニットは光があれば発電してしまう為に、災害時には困る事もあるんだとか。

 火災時に漏電したら怖いから放水出来ないとか、災害で破損放置されたユニットに触れて感電とか出火なんて起こるらしい。

 環境的には素晴らしいモノだけど、設置場所の崩壊や廃棄方法の不備等、負の面もあるのはしょうがないかな。

 蓄電技術もまだまだだし、今後の技術革新に期待だね。


 と、脳内ヨタ話を数秒で終わらせた俺は、コインを背中の袋に入れた。


 ◆ ◇ ◆ ◇


「そういえば、コインは雰囲気で作ってしまったのじゃ。使い道なんて考えていなかったのじゃ。どーしよう」


 幼女はモニターを前にして頭を抱えていた。


「しょうがないのじゃ。コウタ殿達が第5層に来る前になんとかするのじゃ!」


 幼女は後付設定を必死に考えた。

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皆様、宜しくお願い致します。


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