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功刀 康太の遺跡探訪、時々お祓い ~女難あふれる退魔伝~  作者: GOM
第一部 第一章 功刀康太はエルフの姫様と出会う
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第6話 康太の大変な一日:夜その1「姫様を連れて」

 俺は一旦遺跡から出て、幸いな事に壊れていなかったスマホを取り出しマユ姉ぇに連絡をした。

 不安がる姫様には、俺のシャツを被ってもらい出口の近くまで来てもらっている。

 姫様はスマホで連絡する俺を不思議そうに見ていた。


〝それは魔法の道具ですか?〟


「いいえ、科学というか人が世界の(ことわり)から学んで作った、誰にでも使える連絡アイテムです」


 姫様がそう思うのもしょうがない、進んだ科学技術は魔法と変わらないし。


 先ほどの戦闘でかなり大きな音が出たものの、幸い近くに人影は無く誰にも気が付かれてはいなかった。

 良かったよ、これで大騒ぎになっていれば、姫様をここから逃がすのが大変だろうし。


  ◆ ◇ ◆ ◇


 悪魔に追われた異世界の女の子を助けたなんていう、突拍子も無い俺の話をマユ姉ぇは、


「やっぱり何か起こっちゃったのね」


 とため息一つで信じてくれて、ナナのお古の服と靴を持って自動車で遺跡まで来てくれた。

 ナナもオマケで付いてきてたけど。


 姫様にマユ姉ぇ達を紹介して、一応姫様には二人の事を信用はしてもらえた。

 逆に女の子を裸にしたままだった俺は二人から白い目で見られたのは言うまでも無い。

 なお、姫様が裸だったのは「門鏡」を通れるのが生体だけだったからだそうな。


 とりあえず誰かが穴に落ち込んではダメなので、俺は蓋をしていた大石を置きなおし、念の為に発掘調査用で準備していた三角ポールを石の周りに置いて「足元注意」と書いておいた。

 後、半球型構造物の内容物がどう見ても俺の持つ石と同種だったので、少々拝借しておいた。

 もちろんマユ姉ぇにやり方を聞いて簡単な封印術を内容物の石に掛けたけど。


 俺はバイクで遺跡に来ていたので、姫様には目立たないように帽子を被ってもらいマユ姉ぇの車で母屋まで送ってもらった。

 バイクから車内の様子を見ていると、ナナは興味深そうに姫様を見て話しかけているようだったし、姫様は異世界の様子を車窓から少し不安げに見ていた。



 母屋の居間には、俺とマユ姉ぇ、ナナ、姫様、そして「光兼」がいる。


「まずは、お腹すいていらっしゃるでしょうから、晩御飯食べながらお話しましょうね。でもお姫様、こっちの世界の食べ物食べられるかしら。あ、それ以前にちゃんと見ていなかったから御怪我してないか確かめないと。コウちゃん、申し訳ないけど……」


「はい、しばらく居間から出て行きます」


「ええ、お願いね」


「姫様、すまないけど」


〝はい、分かっています。では宜しくお願い致します〟


 俺が部屋から出て行ってしばらくすると、


「きゃー綺麗」


「あ!」


「ごめんなさい、変なところ触っちゃいましたか?」


〝いえ〟



「うみゅ!」


「ごめん、ボクつい綺麗で触っちゃったの」


〝耳は弱いのであまり触って頂いては……〟


「ふふぅ!」


「あら、ここも弱いのですか?」


〝もしかしてワザとやっていませんか?〟



「そんな事は無いわよ。ね、ナナ」


「うん、お姫様真っ白でお肌もスベスベ、とっても綺麗なんだもん」


〝そうですか……〟



 おい、真面目にやっているのかよ、マユ姉ぇ。

 声だけ聞いていると18禁ネタに近いことやっている気がするんだが。

 一応、15禁くらいでやめとけよ。

 じゃなきゃ、姫様の裸を俺が思い出しちゃうだろ。

 せっかく意識して記憶から排除しているのに変な声聞いたら、あの細めだけれど真っ白で綺麗な裸体思い出しちゃうから。

 俺にはロリ趣味は無い、無いはずだ、無いよね、無かったらいいな。



「コウちゃん、もう良いわよ」


 俺は頭の中の雑念をなんとか消して居間に入ると、姫様はもちろん服を着ていて、耳を真っ赤にしつつも平常心を保とうとしていた。


 ナナはうっとりとして、


「あー、ボクもあんな風に綺麗になりたいよー」


 マユ姉ぇは、


「もう少し肉付きが良い方が良いけど、すり傷くらいで大きな傷も無いし良かったわね。それと破傷風が怖いから、ちゃんと手当てはしておいたわ」


 怪我と肉付きは関係ないと思うぞ、たぶん。

 後、遺跡内の淀んだ環境だと破傷風菌が居てもおかしくないから、手当てしてくれたのは助かる。

 姫様の「玉の肌」に傷が残っても嫌だしね。


「さて、本題に入るけどお姫様、リタ様には大きな傷も無いし栄養状態も問題なさそうね。血の色や外見をざっと見た感じ、そう大きく地球人類と違わないし、話を聞けば食生活も地球とそう大変わりないから大丈夫ね」


 実はマユ姉ぇ、看護士の資格を持っている。

 結婚後もしばらくは大病院に勤めていて、病院で起きる怪奇現象を全て一人で解決していたそうだ。

 ホント何処の完璧超人なんだよ、マユ姉ぇ。


「じゃあ、今から晩御飯の仕上げするから待っててくださいね」


 そう言ってマユ姉ぇは台所に行った。


「お姫様、もし良かったらリタちゃんって呼んでいい」


 おいナナ、流石にそれは不敬だぞ。


〝はい、宜しくお願いします〟


 それでいいんだ姫様、結構寛容なのね。


〝私は同年代の子達とはあまり触れ合えなかったので、お付き合いの仕方がよく分かりませんが……〟


「うん、大丈夫だよ。やったー、ボク異世界のお姫様と友達になれたよ」


 ナナはお気楽モードだけど、異世界に一人残された姫様にとって安心できる友達が出来るのなら良いかな。


〝しかし、この家の方々やコウタ様はどうして私を信用してくださるのですか?〟


「リタちゃん、それはね。ウチのお母さんは困った人や困った霊さん達は助けてあげなさいって人なの。だから目の前で困っているリタちゃんをそのままにしておくのは絶対出来ないし、不思議な事には慣れっこだからね」


 うむ、ナナ良い事を言うね。

 そう、この世界はお互いが関係しあって生きている。

 こうやって出会えた時点で縁があり、その縁は大事にしないといけない。


〝その通り、我が主の行う事こそ正しいのである〟


 おい、そこでお前が口挟むのかよ、みっちゃん。


〝今のは何方ですか?〟


 ほら、姫様びっくりしているだろ。


「今のはマユ姉ぇの守り刀、光兼さん。九十九神って分からないですよね。魔法風に言うと知性(インテリジェンス)(ソード)です」


〝この世界にも魔法剣が存在するのですか?〟


「どういうものを想像しているかは分かりませんが、確かに魔法剣の一種ですね。実際魔力付与出来ますし」


(それがし)、生まれてより七百有余年、女性(にょしょう)を守護せし刀なり〟


 また自慢話を鎌倉時代から始められたら長いから、この辺りで止めとかなきゃ。


「はい、光兼様は物凄く偉いし御強いですね」


〝うむ、そうであろう、そうであろう〟


 よし、うまく長話止められたよ。



「さあ、晩御飯できましたから皆で食べましょう。リタ様にはお箸は無理だから、スプーンとフォーク、ナイフを出しますね」


 流石マユ姉ぇ、完璧である

 また料理も洋食風に、豚の照り焼きに温野菜の付け合せ、コンソメスープにデザートのプリン。

 白米ご飯も姫様用はお皿に盛ってある。


「リタ様、お肉はなんでも大丈夫でしたよね」


〝はい、私の国の戒律では食事に対しての決まりはありません。殺生はあまり好ましくないのですが、奪った命・恵みはありがたく頂くのが感謝だと聞いております〟


「そうよね、私たちは他の命を頂いて生かせてもらっています。だからこそ食べる前に言うの、『いただきます』って。これは料理になったものの命、そして調理してくれた方々への感謝の気持ちなの」


 そうだよね、この世界は命がめぐりめぐって動いている。

 ムダに奪って良い命なんて何処にも無い。

 食べるために奪った命、それを大事に美味しく頂く事こそ感謝であり供養だと俺も思う。


〝いいお言葉ですね、いただきます、って〟


「じゃ、皆で言いましょうね」


「「「いただきます」」」


〝いただきます〟


「お味はどうですか、リタ様?」


〝はい、とてもおいしゅうございます。今まで食べたことが無いお味ですが、暖かくてマユ様のお心が伝わってきます〟


「それなら良かったわ。実は地球人類とリタ様が外見が一致していてもアミノ酸が逆構造だったらどうしようかなと思っていたの。美味しく感じられるのなら私たちとリタ様は同じL体なのね」


 おい、試したのかよマユ姉ぇ。

 もし姫様がD体だったらどうしたんだよ。

 でもそうか、D体だったら摂取できる食品が殆どなくなるからやばかったのか。

 L体・D体というのは、人体を構成するタンパク質のこれまた構成分子、アミノ酸の構造の違いの事。

 アミノ酸はその構造からL体とD体の二種類の光学異性体(光を当てないと区別できないもの)があって、地球上の生物は全てL体を使っている。

 異世界でも地球人類、ホモ・サピエンスとほぼ同種の存在ならL体を使っているんだ。

 実は異世界モノ見ていて、いつも不思議だったんだ。

 そこの世界はアミノ酸がD体だったらどうするんだろうって。

 何かのSF小説(戦闘妖精雪風)だと、アミノ酸がD体だったから偽者だったのが分かったのあったはず。

 他にも、宇宙から来た知生体がDLの区別が付かない(時の果ての)(フェブラリー)とか。

 アニメでもあったよね、人体を苗床にしてD体の実をつける花とそれを食する守護者(ベターマン)の話が。

 うむ、勉強になった。

 今度、マサトにも教えてあげよう。


 ちなみにマサト、伊藤雅人(いとうまさと)は大学のゲームサークル仲間で、理学部環境分析系の大学院生。

 俺の霊能力についても良く知っていて、こいつもオカルト・サイエンスの両刀使い。

 よく発掘した青銅器とかの成分分析を依頼する仲だ。

 俺もよく理系の事を教えてもらっている。

 石を漬け込んでいたビーカーも雅人からのもらい物。

 そうだ、例の石もアイツに分析してもらおう。


「L体って何、お母さん」


 そうだよね、中学一年生のナナには難しいよね。


〝えーと、マユ様が何おっしゃられているのか分からないのですが〟


 異世界人が生物学分からなくても何の問題もありません。


「えっとね、簡単に言うと私たちとリタ様では、身体を作っているものが同じですって事なの」


 そだよね、それ以上言うと難しくなるよね、マユ姉ぇ。


〝そうなのですか。不思議ですよね、私たちは世界が違っていても同じもので作られているヒトなのは〟


 多分、収斂進化(しゅうれんしんか)ってやつで同じ生態・環境に生きる生き物は同じような形に進化する。

 おそらく姫さんの種族は耳が長い動物からの進化だろうけど、高度な知能を持つ「ヒト」として進化する上でホモ・サピエンスとほぼ同じ形になったんだろうね。

 うん、実に勉強になるよ。

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