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功刀 康太の遺跡探訪、時々お祓い ~女難あふれる退魔伝~  作者: GOM
第二部 第一章 功刀康太はダンジョン攻略をする
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第55話 康太は迷宮探索をする:その8「お宝」

 迷宮(ダンジョン)第一層目の攻略及び第二層の半分制覇・裏ボスであろうドラゴンの撃破を「裏」に報告した俺達は、掛け流し温泉と美味しい精進料理を存分に堪能し、翌日からの迷宮攻略へ英気を養った。

 ゴールデンウィークで攻略に使えるのは後3日、それなりに時間が厳しいけれど出来ない事も無い。

 迷宮の最下層で待っているであろう「黒幕」に文句を言うべくがんばるのみである。


  ◆ ◇ ◆ ◇


「おう、今朝(けさ)も早ようから攻略とはご苦労な事なのじゃ。『土産(みやげ)』も用意しておるから、楽しみにしているのじゃ!」


 今は朝7時、コンビニおにぎりを頬張りながら、モニターを眺めている幼女。

 今日も康太達と遊べるので楽しみで仕方が無い。


  ◆ ◇ ◆ ◇


 俺達は一直線に迷宮第二層入り口へ向かう。

 すでに第一層は「裏」の方々により整備されていて、電源等のケーブル類が所狭しと這い回っている。


「マユ姉ぇ、今朝は何処(どこ)から探索するの? あの宝箱からにする?」


「そうね、多分大きな仕掛けとかは無いと思うけれど、裏ボスが所有している秘宝なのですから、『使えるモノ』なんでしょうね」


「この迷宮主(ダンジョンマスター)なら、こういう(ところ)は基本を守るから多分そうだね。という事でナナ、宝箱については宜しく」


「うん、コウ兄ぃ。鍵はボクに任せてね」


「カレンさん、そういえば迷宮から出てきたアイテムの所有権は誰のものになるんですか?」


 俺はアイテムの取り扱いについて和尚から聞いていなかったのを思い出して、カレンさんに聞いてみた。


「迷宮内で使う分には皆様の中でお決め下さってかまいません。その後は、上層部に問い合わせる必要があるかと思いますが、報酬の一部としてお持ちかえって頂けたらと私は思います」


「そうね、報酬額について確約を貰った訳でもないから交渉しだいよね。コウちゃんかウチの娘達に合うモノなら良いし、もちろんカレンちゃんやシンミョウちゃんも使いたいなら言ってね。貴方たちにも権利はあるんだから」


 さあ、何が出るかなぁ? 俺向きのモノが入っていると嬉しいんだけど。


 ドラゴンの居た部屋までは敵との遭遇(エンカウント)も無く、無事に箱の前まで俺達は来れた。


「じゃあ、宝箱開けるね。王鍵(マスターキー)サン宜しくね」


 真鍮製の鍵が勝手に宝箱の鍵穴に入り、カチャっという音と共に箱が開いた。

 ありゃ、箱も自動開閉機能付きですか、至れり尽くせりだね。


 箱の中を(のぞ)くと、一本の剣が入っていた。

 その剣は全長85cmくらい、鞘も含めて全て金箔で覆われており、握り部分は魚の背骨のようにゴツゴツしている。

 柄尻と柄は大きく翼状に広がっていて、鞘の長さから刃渡り60cmくらいの直剣と思われる。

 柄とかの形状からして西洋のソードというより、俺の研究課題にしている古代日本の鉄剣に似ている気がする。


「これ、もし使うならコウちゃん用ね。凄い霊気を感じるけど悪い感じはしないから、とりあえず刃を見てみない?」


「うん、じゃあ抜くね」


 俺は鞘から剣を抜いた。

 そして俺は、剣から溢れる金色の光と圧倒的なまでの霊気、いや「神気」を感じた。

 剣の形状は菖蒲(しょうぶ)の刃に似ていて、錆びやシミ一つ無く鋼よりも白っぽく輝いている。


「これは!!」


 俺は驚くと共に恐怖を感じ、急いで鞘に刃をしまう。

 この剣は、俺なんかが使うどころか、持っていることすらあってはならないものだ。


「マユ姉ぇ、これは使えないよ。(おそれ)れ多すぎる」


 俺は震えながらマユ姉ぇに聞いた。


「そうね、これは聖剣、いえ神剣だわ。何故ここにあるのかしら」


 流石(さすが)のマユ姉ぇも、剣の「正体」に気が付いて身体が震えている。


「お姉様、これは……」


「ええ、もしや壇ノ浦(だんのうら)で失われた……」


 尼僧2人も剣が何であるのか分かったのか驚愕し、震え(おのの)いている。


「何? なんで(みんな)震えていたりするの? この剣そんなにヤバイものなの? ボクにはスゴイ事は分かるけど、怖くないよ」


「わたしも、こわいかんじ、しないけど。どうしてみんな、こわいの?」


 しかし、まったく怖がって居ない姉妹2人。

 そうか、ナナまだ日本史勉強していないんだ。

 今度リタちゃんと一緒に教えてあげよう。


「えっとね、これは神様が使うものなんだ。だから俺じゃなくて本当に必要な人達に返さなきゃならない、日本全ての人の宝物なんだよ。後で詳しい事を教えてあげるから、今はそういう物って2人とも覚えておいてね」


「うん、わかったよ」


「コウ兄ぃ、ちゃんと後から説明してよね」


 俺は大汗かきながら2人に説明した。

 まさかこの剣は、神話で語られる「○○の(つるぎ)」でしたなんて事、簡単に言えるわけ無いでしょ。

 これは、おそらく幼帝と共に壇ノ浦で失われたはずの物、最初の形代(かたしろ)だろう。

 オリジナルは神宮に「ご神体」として祭られており、もうひとつの形代(レプリカ)は陛下の下、御所(ごしょ)にあるのだから。

 しかし形代ですら、ここまでの神気を放つんだ。

 ホンモノを見たら死ぬと言われる逸話もまんざら嘘とも思えないよ。

 考古学者としては、一生掛かっても見られない宝を見せてもらえたのは良かったけど、凄すぎて寿命が磨り減った気がする。

 でもこれで分かったよ、この迷宮の管理者は俺達に対して悪意は無いんだ。

 だって態々(わざわざ)こんなスゴイ「プレゼント」を俺達に用意してくれているんだから。

 しかし、流石(さすが)に「この剣」はイタズラにしてもやりすぎだぞ。


「マユ姉ぇ、俺この剣持ったまま探索はしたくないんですけど」


「え、ええ、そうね。急いで第一層まで帰って回収してもらいましょう。悪いけれど、ややこしい事は『裏』や表の方々にお任せしましょう」


 マユ姉ぇ、声が震えており未だ動揺が鎮まらない様で、神剣をとっとと縁切りしたいから俺の意見に同意してくれた。

 もちろん尼僧2人もコクコクと首を縦に振り、早くなんとかしたい様子。

 しかし、まだ分かっていない姉妹のみ、きょとんとして2人顔を見合わせていた。


  ◆ ◇ ◆ ◇


 俺達は急いで第一層のキャンプまで帰り、事情を現場の僧達に耳打ちした。

 そうしたら、玄覚和尚(げんかいわじょう)が、すっ飛んできて紫色の布で剣を丁重に幾重(いくえ)にも重ねて包み、桐であろう箱に収納してくれた。


「この神剣は、『御山』から御所に必ずお届け致しますので、ご安心下さい」


 和尚も震えながら箱を握りしめていた。


「しかし何故に神剣が迷宮内にあったのでしょうか?」


「あくまで仮説ですが、態々(わざわざ)瀬戸内海の海中から拾い上げたのでしょうね。迷宮を簡単に作れるほどのヒトなら、それくらい簡単なのでしょう。では和尚様、宜しくお願い致しますわ」


  ◆ ◇ ◆ ◇


 幼女は、康太達が剣を見て喜ぶどころか怖がるのが分からなかった。


「せっかく壇ノ浦の海中に潜って探して、綺麗に治したのに何で誰も喜ばないのじゃ? 神剣中の神剣、国宝じゃぞ。アレで刺されれば、ワシでも死ぬような剣なのに何で喜ばんのかのぉ。それにすぐに手放すとは欲も無いのか? まあ、欲深くする(やから)よりは好ましいがのぉ」


 幼女は、モニター画面を見ながら首を傾げていた。

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