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功刀 康太の遺跡探訪、時々お祓い ~女難あふれる退魔伝~  作者: GOM
第二部 第一章 功刀康太はダンジョン攻略をする
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第54話 康太は迷宮探索をする:その7「ナナ無双再び」

「ああ、とうとう開けてしもうた。もう終わりじゃぁ!」


 小部屋の中でモニターを眺めていた幼女は頭を抱える。

 わざわざ閉鎖していた第2層の部屋に居るのは、裏ボスのドラゴン。

 その扉を開けてしまえば、中に入った者は確実に殺される。

 だからこの先、康太達に訪れるであろう虐殺を想像してしまう。


 しかし、幼女は様子が少し違う事に気が付く。


「ありゃ? 誰も中に入らんのか?」


  ◆ ◇ ◆ ◇


 俺達は部屋の扉に(ロープ)(くく)り付ける。

 ノブをゆっくりと廻してロックが外れたのを確認してから急いで扉から遠ざかる。


 しかし、迷宮(ダンジョン)内なのに、各部屋の扉は現代風に綺麗にしているんだよね。

 床材とかも平坦だけど滑り止め加工している石材だし。

 「地獄の門」とかの事も考えて、この迷宮製作者は創作物の完璧さに(こだわ)るタイプではなかろうか。



 さて、扉の前にはナナの小物(ビット)九十九神(つくもがみ)さん達、ナナの護衛の狛犬さん以外のモノだけが残っている。

 扉を開けたら「どーん」とかは嫌なので警戒しての行動なのだ。

 俺は紐をゆっくりと引き、ドアが10cm程開いたところから小物(ビット)さんは部屋の中に入った。


望遠鏡(コロニーレーザー)サン、暗視映像を私に送って!」


 どうやら望遠鏡さんが部屋内部の映像をナナ宛に送ってくるらしい。

 自動運転機能付き偵察ドローン役まで出来るとは高性能な子達だね。


「部屋の中にドラゴンが居たよ。じゃあやっちゃうね!」


 ドラゴンと言えば強豪モンスターの代表格。

 それを倒す事を、まるでザコをなぎ払うかの様に言うナナが怖いよ。


  ◆ ◇ ◆ ◇


「なんじゃ、あの飛んどるモノは?」


 幼女は、部屋の中を浮遊する小物(ビット)が何をするものか理解できなかった。


「確か、氷結攻撃時には盾になっておったが」


  ◆ ◇ ◆ ◇


「いっくよ――! 秘儀『千本桜』!」


 俺達は部屋の中で何が行われているのか知る由も無かった。

 しかし、(のち)に目撃した「当事者」に聞いたところでは、「ナナ無双」再びだったそうな。


  ◆ ◇ ◆ ◇


 幼女は見た、ドラゴンが何もせぬままに滅ぶ姿を。


 小物(ビット)に反応して起き上がったドラゴンは大きく息を吸い込み、「火の息(ブレス)」攻撃を準備する。

 そのドラゴンをまず分裂した漏斗(ファンネル)達が周囲を囲い込み、獲物を逃がさぬようビームで(おり)を作った。

 ドラゴンは檻を無視してブレスを吐くが、完全にビームバリアで檻を閉鎖しており、それはブレスすらも通さない。

 そこに小柄(ファング)和バサミ(シザー)タイル(シールド)小物(ビット)が技名の様に数千個程にも分裂し、檻の周囲を覆う。


「チェックメイト!」


 ナナの宣言(コール)小物(ビット)が超音速で一斉に獲物に襲い掛かる。

 いかな鋼鉄以上の強度を持つ龍鱗(ドラゴンスケール)といえど数千個の同時超音速攻撃にはとても耐えられない。

 哀れドラゴンは一瞬で挽肉(ひきにく)になって消滅した。


「なんじゃ、こりゃぁ!!」


 幼女は再び康太達パーティのご無体な大技に呆れたとさ。



  ◆ ◇ ◆ ◇



 ズド――ォォン


 衝撃音が、部屋から遠く離れている俺達にまで激しく(とどろ)いた。

 地響きまで起こした攻撃の威力は、半開きだった部屋の扉まで吹き飛ばし、ナナ以外の誰もが扉の近くに居なかった事に安堵した。


「はぁー、キモチイイ! 一撃ひっさーつ! これでボク、ドラゴンスレイヤーだぁ!」


 ナナは術の負担の為か、大汗をかき高揚して真っ赤な顔をしている。

 妙に色っぽいけど、恐ろしや。

 ウチの女性陣、みんな戦術級どころか戦略級の火力持ちだよぉ。


 砂埃(すなぼこり)が落ち着いた頃、俺達はナナの戦果を見るべく扉が吹き飛んだ部屋をこっそりと(のぞ)いた。

 そこにはドラゴンが居ただろう痕跡(こんせき)は全く無く、50cm程の山になったコインと奥に宝箱が残されていた。


「アレって、ドラゴンの秘宝ってやつだよね」


「ええ、そうでしょうけど、鍵を開けられるナナがこの状態だと今無理して箱を開けるのは危険よね」


 まさか擬態箱(ミミック)という事はないけれど、確認もせずに箱を開けるのは絶対やりたくない。

 幸い、迷宮探索をしているのは俺達だけ。

 誰か他の人に取られる心配も無いから、このまま放置が安全だろう。

 もうドラゴン退治もやったんだから、今日の戦果は十分だし。

 俺達はとりあえず山のような大量のコインだけ回収して、本日の探索を終了することにした。

 しかし、このコインどう使うのやら。

 これは迷宮主(ダンジョンマスター)を問詰めねば。


  ◆ ◇ ◆ ◇


「おい、扉の強化まで考えねばならないのでおじゃるか、この火力バカどもは!」


 口では機嫌悪そうにしているが、表情はニンマリとしている幼女。

 予想外の事ばかりしてくれる康太達が、面白くてたまらないのだ。


「あー、もっと早くこやつらと遊んでおれば良かったのじゃ。さすれば『(ナイト)』なんぞ、さっさと消してやったのに」


 幼女は少々後悔していた。

 同族だからとお付き合いで「騎」を放置していたおかげで、人間に被害者が出ている。

 その事で康太達が悪魔(デーモン)族全てを恨んでいてもおかしくはない。

 そうすれば今後自分を受け入れてもらえないかもしれない。

 なんとかして許してもらえないか、「知恵」を振り絞る幼女であった。


「お、今日は帰るのでおじゃるか。ならこちらも『歓迎』の準備が出来るのじゃ」


 幼女は康太達が迷宮から出るのを、慈愛のまなざしで眺めた。


「皆の衆、お疲れ様じゃ。明日も宜しくのぉ」


 誰に言うでもなく、幼女はモニター画面に映った康太達を(ねぎら)った。


「さあ、ワシも夕食にしようぞ。(わび)しいが今日もコンビニ弁当じゃ。いつになればマユコ殿の作ったメシが食えるのかのぉ」


 案外、食い意地の張っている幼女である。


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