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功刀 康太の遺跡探訪、時々お祓い ~女難あふれる退魔伝~  作者: GOM
第二部 第一章 功刀康太はダンジョン攻略をする
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第52話 康太は迷宮探索をする:その5「ゴブリンキング」

(みんな)準備は良い?」


 マユ姉ぇの掛け声に俺達はうなずいた。

 俺は出来る限りの多重防御呪と加速呪を、自分だけでなくシンミョウさんにも掛けてもらった。

 マユ姉ぇ、カレンさんはいつでも動けるよう待機、ナナも小物(ビット)達を全部展開している。

 シンミョウさんは更なる呪の準備。

 そして今回のダメージ源(DSP)役、リタちゃんは魔法の(ロッド)に最大級の光る球を充填している。


「じゃあ、いくわよ!」


 マユ姉ぇは掛け声と共に両開きの扉を開き、カレンさんと二人で扉を開閉状態に固定する。

 俺は、開け離れた扉の中に楯を最大の大きさで展開して突っ込んでいった。


「うぉぉぉ!」


 部屋の中央に突っ込んだ俺に小鬼(ゴブリン)達が群がる。

 楯の力を全身に展開しているので、少々殴られても俺には効かない。

 勢いを落とさす走りまわり、捕まれたり抑え込まれないように動く。

 部屋後方にある玉座っぽいものから立ち上がった「(キング)」は叫び声で指示を集団に出しながら、盾と剣を構えて俺に向かってくる。

 小鬼魔法使い(ゴブリンメイジ)小鬼弓矢兵(ゴブリンアーチャー)から飛び道具が来るのを、俺は横目で見ながら楯で叩き落とす。

 田舎小鬼(ホブゴブリン)も鈍器を構え、俺に向け突っ込んでくる。


 マユ姉ぇが予想した通り、小鬼達は部屋の中に入った敵にしか反応していない。

 こいつらは生き物では無くて、ゲームでの「コマ」。

 一見生きているように見えてはいるけど、ただの幻影。

 まあ、殴られたら痛いけどね。


 そしてシンミョウさんが詠唱していた呪が発動する。


 「ノウマク サマンダ ボダナン センダラヤ ソワカ 月天酒精呪!」


 月天チャンドラは神酒神ソーマと同一として扱われており、そのお力を利用したのが、今回の呪。

 効果範囲内にアルコール系の化学物質を発生させて、範囲内の生き物を酩酊させる。

 いくらゲーム内のモンスターといえど、動いている間は生物と同じ反応をする。

 以前もこの呪で足止めまでは出来たそうだけど、効果時間切れで負けたのだとか。

 小鬼達は酩酊効果で動きを止め、倒れたり(ひざまず)くものが出てくる。

 小鬼王すらも動きがゆっくりになる。

 あらかじめ呪文の対象外だった俺は、小鬼達の動きを確認後急いで扉の方へ帰る。


「いまだ、リタちゃん!」


 両扉から俺が飛び出して叫んだのにあわせて、リタちゃんは撃つ。


あぶそりゅーとぜろ(ぜったいれいど)、しゅーと!」


 それは光弾を冷凍系呪文に変えたもの。

 氷系の能力を持つ九十九神(つくもがみ)さんをリタちゃんの(ロッド)に入れている。

 迷宮(ダンジョン)など密閉空間で戦う場合、火炎系呪文は酸欠を引き起こしたり術者が高温に(さら)される、崩落が起こる等の危険性があったので、今回火炎系九十九神さんの代わりに氷系を採用したそうだ。

 10個大玉の氷バージョンはキラキラとした(あお)い固体空気の結晶の軌跡を(まと)わせながらボス部屋の中央に向かい、そこで炸裂した。


 きゅぃーん!


 爆発とは全く違う音を立てて綺麗(きれい)な蒼い「氷の花」が広がる。

 それは触れたものを氷塊にしてしまう液体空気や固体空気の「花」

 呪文の効果範囲内にある部屋の中のモノ全てはその蒼い「花」に触れた途端氷結し、そして温度変化による体積変動に耐え切れず砕け散る。

 小鬼達は「花」に触れずとも余波の冷気だけで氷結して塵となる。

 そしてその圧倒的な冷気は部屋の中だけではとどまらず、扉の外まで迫りくる。

 俺は扉の大きさまで「光の楯」を展開し、吹き荒れる氷嵐(ブリザード)に耐えた。

 ナナもタイル小物(シールドビット)サンを俺の前に全力で展開してくれて助けてくれた。



 吹き荒れる氷嵐が収まった後、俺はあまりの寒さに半分凍っていたが防御呪文やタイル小物(シールドビット)サン達のおかげでなんとか耐えきった。

 ガタガタ震える俺にカレンさんは急いで近づいて火天による炎を錫杖に灯してくれたので、俺は急いでそれで暖を取る。

 シンミョウさんは、俺に薬師如来系の回復呪をしてくれた。

 またマユ姉ぇやナナが俺を前後から抱きしめ暖めてくれたおかげで、俺はなんとか話せるようになった。


「ふぅ、スゴイ威力だったね、リタちゃん。もう少しで俺も凍ってたよ」


 俺はボス部屋の中を覗き込んだが、もちろん小鬼共は影一つ残っておらず、部屋の壁や調度品すらも一部砕けていた。

 

「ごめんなさい、こうにいちゃん。いりょくすごすぎちゃった」


 心配して俺に近づいた涙目のリタちゃんの頭を撫でて、俺は言う。


「いや、俺も予定より前に行き過ぎたから悪いよ。でもすごいね、爆発系よりも威力がスゴイかも」


 リタちゃんは「絶対零度」と言っていたけれど、蒼い固体空気が出来ていたからマイナス200℃以下なのは確か。

 本当に絶対零度(-273.15℃)なら、たぶん部屋ごと破壊されていただろうね。

 そこまでの威力が無かったのは幸いだけれども、スゴイのは確か。

 ちなみに固体空気が蒼いのは酸素が液体や固体になると蒼いからだ。


「これがリタちゃんの魔法なのですか?」


「リタさん、凄すぎですぅ」


 二人の尼僧はその圧倒的な威力に驚愕している。

 俺達も初めてリタちゃんの全力全開魔砲(ブレイカー)の威力を見たときは困惑したものだからね。


 氷結しきった部屋、床には小山になった多くのコインが散らばっているが、その奥に第二層目への階段が見えた。


「じゃあ、次の層へ行きますか!」


  ◆ ◇ ◆ ◇


「あんな倒し方、ワシの想定外じゃ。やっぱりこやつらは面白いのぉ」


 そこは小さな部屋、いっぱいの雑貨やコンビニ袋、ペットボトルが散乱している中、卓上の複数あるモニター画面をじっと見ている黒系ゴスロリを身に着けた9歳くらいに見える幼女がいる。

 幼女は東欧系に見える整った顔立ちをしており、長く黒い巻き毛の髪を垂らしている。


「あともう一歩で部屋どころか躯体(くたい)(建物の構造を支える骨組み)まで砕け散っておったわ。ワシでも防御結界無しで喰らうと滅びかねん。あのエルフ、リタ殿と申したか、中々の逸材じゃのぉ」


 幼女は古風なしゃべり方で、素直にリタの呪文に感心をした。


「他の者達も実に見所がある。こやつら、どんだけの大技を迷宮内でぶっぱなすか分からんから、迷宮の壁や柱を強化せねば。まあその方がワシも面白いがのぉ」


 幼女は手元のポテチの袋を開けて、取り出した一枚のチップを(くわ)えながらキーを叩き、迷宮の設定を変える。


「ワシ、もう独りで寂しいはイヤじゃし、退屈なのはもっとイヤじゃ。(はよ)う、ワシの元へ来い。ワシと存分に遊び楽しもうぞ」


 幼女は本当に楽しそうに、屈託の無い無邪気な笑顔をした。


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