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功刀 康太の遺跡探訪、時々お祓い ~女難あふれる退魔伝~  作者: GOM
第一部 第五章 功刀康太は悪魔退治をする
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第45話 康太は遺跡発掘を手伝う:その14「今度も後始末、そして一旦の終焉」

 周囲の機動隊の方々と一緒になって俺達は喜んだ。

 強大な力を持つアークデーモンを退治したのだから当たり前だろうね。


「ねえ、やっちゃった後でなんだけど、これ後どうしましょうか?」


 そうマユ姉ぇが困り顔で俺や中村警視の方を見てくるので、俺は冷静になり周囲を見た。

 あ、こりゃ不味いよ。


 内藤広重氏の邸宅前のお客用駐車場で対決をしたのだけれども、そこはナイトの突撃(チャージ)攻撃で掘り返されていて、もはや荒地。

 邸宅の門扉や塀、家屋はリタちゃんの砲撃によってズタズタ、こちらも家の形をやっとなしている状態。

 周辺家屋にもガラス等に被害が続出しており、消防車がこちらに続々向かっているのが近づくサイレンで分かる。

 うん、この惨状は爆撃喰らったとか言われた方が説明しやすいね。

 火災にならなかった分だけマシかなぁ。


「これ、保険で治せるのかしらぁ」


 マユ姉ぇ、流石に魔砲、いや魔法被害を見てくれる火災保険や地震保険は無いよ。

 確か戦争とかの場合は免責って契約書にあった覚えがあるし。


「真由子君。まずは、その前にそこで転がっているご老人をなんとかするのが先ではありませんか?」


 教授、常識的な回答ありがとうございます。


「あら、そうね。では、御脈等見ますね」


 マユ姉ぇは気絶してる広重翁のところに近づき、バイタルを確認する。


「呼吸と脈拍に異常は無いから、大丈夫ね。あら、気がつかれる様よ」


「うぅん、は! 和也は、和也は何処(どこ)だ、どうなった!」


 広重翁はガバっと起き上がり周囲を見ながら叫ぶ。


「申し訳ありません。和也君を乗っ取っていた悪魔ごと私達が滅ぼしました」


「なにぃ、おまえが和也を殺したのかぁ!」


 そう言ってマユ姉ぇに掴みかかる。


「はい、結果的にはそうなります。ごめんなさい」


 マユ姉は、急に歳をとった様に見える老人に申し訳なさそうに謝る。

 しかし、しょうがないじゃないか。

 本当の和也君はとっくの昔に死んでいて、悪魔が身体を使っていたのだから。


「おまえが、ワシのただ一人の可愛い孫を殺したのかぁ。おい、警察こいつを早く捕まえて死刑台に送れ! さもないとワシがこのオンナを殺す!」


 そこまで激昂(げきこう)するのも分かるよ。

 でもあのまま悪魔を放置していれば犠牲者は更に多くなるし、俺達ももう少しで殺されるところだった。


「すいません、お話を聞いて頂けますか?」


 そう言って吉井教授は老人に問いかける。


「なんじゃ、お前は発掘をしていた大学先生じゃないか。お前は関係ないだろ!」


 老人は教授に掴みかかる勢いだ。


「いえ、関係あるんですよ。和也君を乗っ取っていた悪魔が貴方に言っていた事を覚えていますか?」


 そう言われた老人はハッとした。


「あの悪魔は、私が発掘している古墳の地下にある遺跡から出てきました。和也君が幼い頃、古墳周辺で行方不明になった事があるでしょう。あの時に憑依されていたんです」


 教授はここに来る前にマユ姉ぇから詳細情報をメールで受け取っていたそうで、事件の全容を理解していた。


「そして交通事故を引き起こし、あの時に和也君ご本人は亡くなってしまいました。それからは乗っ取っていた悪魔が和也君に成り代わり、お嬢さん夫婦まで手に掛けたのです」


 教授は残酷な事実を再度老人に説明する。

 いやな仕事だと思うけど、淡々としかし老人を思いやって優しい声で説明できる教授は凄い。

 俺、こんなオトナになりたいよ。


「それじゃ何か、ワシは悪魔にまんまと騙され、全てを失ったという事か!」


 老人は泣きながら教授にしがみ付き、大声で喚く。


「悲しい事ですが、それが事実です。(おう)、お気を確かになさって下さい」


「すいません、自分は県警で警視をしております中村です。本来、このような事態は警察の手に負えないのですが、民間の方々のご協力で解決する事が出居ました。ご子息やお嬢様夫婦につきまして、我々警察がお力になれず申し訳ありません」


 中村警視が続いて説明をしてくれる。

 彼もしんどいのに立派だね。


「もしお嬢様ご夫妻の事故の時に我々が気が付いていれば、ここまで事件が大きくなる事もなかったでしょうし、もっと言うなら最初の行方不明時に異常に気がついて悪魔憑きが分かっていれば誰も犠牲にならずに済んでいたかも知れません。謝って許される事ではありませんですが、本当に申し訳ありませんでした」


 そう言って中村警視は頭を下げる。

 それに続けてマユ姉ぇが話す。


「最初の行方不明時に私が全て知っていればなんとかできたはずです。何も出来ず本当に申し訳ありませんでした」


 3人から謝罪をされた広重翁、まだ泣き止まないものの3人からの話を聞き、更にナイトの自白を思い出して、もうどうしようも無かった事に気が付いた様だ。


「ワシの人生は一体なんだったんだ! やっと娘に良い思いさせられると思ったら、孫ごと全部失うなんて!」


「悲しいですわ。誰も彼も一生懸命生きているだけなのに」


 マユ姉ぇは、さめざめと泣く老人を抱いて一緒に泣いていた。


  ◆ ◇ ◆ ◇


 こうやって事件は、俺達の勝利ながら悲しい結末となった。

 俺にとっても後味があまり良くない事件だ。

 ナイト自身に対しては怒りがあるが、それは和也君とは関係ない。

 カオリちゃんの時は運も味方してくれて無事彼女を救えたが、既に死んでいた和也君を俺は救えなかった。

 そして広重翁は人生全てを奪われてしまったのだ。

 また、長期間悪魔に憑依されていた人達も「魂」が磨り減ってしまい、意識を取り戻せない人が多数いる。

 幸いといえるのは、ナナが通っていた中学校で憑依されていた人達は短期間での汚染だったので、全員無事に意識を取り戻したという事くらいだ。

 俺には元々力が無いから全員救えないのは悔しいし悲しい。

 しかし、力がありながら人を救えなかったマユ姉ぇは、いつもこんな思いをしながら戦っているのだろうか?

 そうだとしても戦い続けられているマユ姉ぇは凄いや。


  ◆ ◇ ◆ ◇


「おじいちゃん、またきたよー」


「もう、こんなに散らかしてしょうがないなぁ。ボクが片付けるね」


 事件以降、すっかり弱ってしまった広重翁が可哀想だと思ったナナ達。

 マユ姉ぇの許可を得て、時々広重翁のところに遊びに行くようにしている。


「おう、リタちゃん、ナナちゃん。よくワシのところに来てくれたのぉ」


 可愛い少女達が訪問してくれるようになってから、少しは元気を取り戻しつつあるという事だ。

 リタちゃんは、ナイトにトドメを刺した関係でとても気に病んでいた。


「わたし、おじいちゃん、ひとりにしちゃった。あやまりたいの」


「そうね、だったらおじいちゃんのお家に遊びに行ってあげたら良いと思うわ。多分寂しい思いをしているでしょうから」


 そうマユ姉ぇはリタちゃんに言ったそうな。

 で、リタちゃんだけでなく(ナナ)がくっ付いていくのはデフォ。


「ボクも随分(ずいぶん)やっちゃったから、リタちゃん一緒に謝りに行こうよ」


 最初に広重翁宅に訪問した時、翁はたまげたそうな。

 幼い少女2人がいきなり揃って、


「ごめんなさい!」


 と謝って来たから。


 それから2人は和也君を間接的にとはいえ殺してしまった事を翁に謝ったそうだ。

 すでに落ち着いていた翁は2人を許し、もし良かったらまた来て欲しいとの話したとか。

 それ以降は時々2人で赴き、3人で楽しくしているらしい。

 俺としても、これで少しでも深く傷ついた翁の心が癒されたらと思う。

 なお、翁宅の破壊については、翁自身の保険で修繕が適ったようだ。

 警察側からガス爆発事故だという説明が保険会社にあったと俺は後から聞いた。

 近所のガラス破損についても、翁からガス爆発でご迷惑を掛けたという説明があり、こちらもなんとかなったそうだ。



  ◆ ◇ ◆ ◇



「コウちゃん、目が離れているわよ」


「坊主、そんなんじゃ何回も死んじまうぞ!」


 俺は今、警察署の武道室にて沢山の人から揉まれている状況だ。

 事件以降俺は自らの実力不足を(かんがみ)み、色々と足掻いている。


「コウ兄ぃ、かっこ悪いところ見せないでよぉ」


「こうにいちゃん、がんばれ!」


 妹2人からの応援を受けながら俺は励む。

 俺自身はちっぽけな一人の人間に過ぎない。

 たぶん今後修行してもマユ姉ぇ程は強くはなれまい。

 しかし、俺の両手の届く範囲くらいは守れる人になりたい。

 せめて妹達の「勇者」でなくてはならないのだから。


「マユ姉ぇ。次は何をしたら良い?」


 俺は息を切らしながら聞く。


「そうねぇ、じゃコレどうかな?」


 マユ姉ぇは、いつものヒマワリのような笑顔をして俺に教えてくれる。

 この日々が続くよう、俺は答える。


「うん、宜しく!」


 さあ、更に修行だ!

 まあ、命や心を削る修行は勘弁して欲しいけどね。


  ◆ ◇ ◆ ◇


 そこは、どことも分からぬ部屋。

 暗い部屋の中、モニター画面のみが明るく光り、画面前にいる人物を照らす。


「『(ナイト)』を倒した者達、実に面白いのじゃ! よし、こやつ等と遊ぶのじゃ! 『(おぼろ)」よ、早速準備をするのじゃ!」


「御意、我が主(マスター)


「さあ、これからが楽しみじゃ! 待っておれよ、コウタ殿、マユコ殿!」


 その「人物」は、実に無邪気にモニター画面に映った康太達を見ていた。


(第一部 完)


ブックマーク、感想、評価を頂けますと、とても嬉しいです。


皆様、宜しくお願い致します。


なお、この話で第一部終了です。

第二部も好評連載中ですので、今後とも宜しくお願い致します。

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