第42話 康太は遺跡発掘を手伝う:その11「対決!」
「夜分、遅くすいません。県警の中村と申します。内藤和也さんにお聞きしたい事がありましてお伺いしました。お取次ぎして頂けますか?」
中村警視が内藤宅のインターホンを押して、中に用件を伝える。
周囲ではSATの方々が狙撃準備をしているし、機動隊の方々もナナ達の前で盾を構えている。
俺も多重に呪を唱えて、独鈷に三鈷杵のフル装備。
ナナは、九十九神さん達をフル展開、確かタイルさんは学校で見たけど、後一個見かけないのがいらっしゃる。
アレは望遠鏡? 全長10cmくらいのアンティークな望遠鏡が飛んでいるのは、なかなかシュール。
もしかして、アレはレーザー砲じゃないのか。
火力不足を言っていただけに、ありそうで怖い。
リタちゃんは、いつものステッキに既に弾を装填済み。
ステッキ先端が明るく輝いている。
吉井教授も抜刀済み、マユ姉も抜刀し後方支援呪の準備をしている。
「はい、お入り下さい」
そう抑揚の無い声でお手伝いさんが答え、ロックが解除され大きな門が開く。
そこには和也、いやナイトが一人立っていた。
「お前らの方から死にに来るとは殊勝な心がけだね。ようこそ、悪魔の館へ」
その異様な気配に一瞬躊躇する中村警視だが、ナイトに問う。
「君が和也君だね。生徒失踪事件、中学校破壊事件及びSNSでの犯罪幇助などについてお聞きしたいので、出来たら大人しく署まで来てくれないかい?」
「ここで僕がうんとでも言うと思った? それとね中学校を壊したのは、そこのオンナ共でしょ」
確かに学校を壊したのはリタちゃんの魔法だけど、その原因はキミじゃないか。
「じゃあ、こちらが実力行使しても良いと」
「14歳未満の未成年者を警察は逮捕できるのかな? 家宅捜査令状や逮捕状もまだ取れていないんでしょ」
「だからこれからは警察の仕事じゃないぞ」
そう言って俺はナイトの目前に立つ。
「ほう、僕にまだ勝てると思って思っているんだ」
「へー、さっき俺達から逃げていったキミがそんな事を言うんだね」
俺がナイトを挑発している間に、中村警視は後方へ移動していく。
俺も何が仕掛けられているか分からないから、迂闊に門の中には入らない。
「また僕を挑発するつもりなんだ。もう引っかからないよ。『知』に叱られちゃったからね、さっきは無様な姿さらしたから」
「知」というのが参謀格なんだ。
注意しないとどういう罠をしかけているか分からない。
「その割には注意散漫だよ。また俺に執着しすぎ」
俺は左に飛び去ると同時に、リタちゃんからの光る大玉がナイトへ向かっていき着弾する。
「ぎゃあぁ!」
後から聞いたけど、この時はリタちゃん7個大玉の爆縮弾を撃ったそうな。
昼間の時が3つ玉の爆縮弾だったので、その2倍以上の威力、それはすさまじい威力であった。
ちゅどぉぉぉーーーーーん!!!
閃光と爆風が吹き荒れた後、門扉は吹き飛びナイトを中心に半径2m程度の大穴が開いていた。
ナイトは黒焦げ、衣服は全て吹き飛び、もげてしまった手足等を異形になりながら再生をして立ち上がる。
「おのれぇーー!」
もはやヒトとしての姿をなくし、その丹精な顔以外は鋭い鉤爪を持った腕、ヤギの脚、コウモリの羽を生やした悪魔の姿を晒すナイト。
「おまえ、学習能力無いなぁ。砲撃を一日に2回も喰らうなんてね」
「くそぉー!」
ナイトは罵声を叫びながら俺を飛び越え、リタちゃんの方へ向かう。
「リタちゃんに攻撃はさせないよ!」
ナナの叫びで小物達が展開され、ナイトを襲う。
俺もナイトに追いつき、後ろから光の剣を叩きつける。
「お前ら、ちょこまかとしてぇ!」
俺がナイトを足止めしている間にSAT狙撃組が.30-06スプリングフィールド弾でナイトを穿つ。
もはやヒトで無いモノに銃を撃つのを躊躇する必要は無いし。
「くそう!」
ナイトが罵倒をした時、どこからか「声」が聞こえた。
〝『騎』、オヌシはバカでごじゃるか。また性懲りも無く力押しして負けるとはのぉ。人質が居るのになんで使わないのじゃ?〟
なんか幼い子が無理して「のじゃ」言葉を言っている気がするけど、こいつが「知」か?
ナイトよりは名前の通り知性は感じられるけど、どこか俺達やナイトを弄んでいる気もしないでも無い。
「『知』、すまない。また助けてくれるのかい」
〝いいや、ワシはあんまりにオヌシがバカなので、もう助けないのじゃ。これが最後、ここを突破できたら考えてあげてもいいのじゃが。では、オヌシがどう足掻くか見せてもらおうかのぉ〟
「おう、じゃあ待ってろよ。僕が本気出せばこいつらくらいどーとでもなるんだから。レッサー共、出て来いよ!」
ナイトの掛け声で、門の中から20人以上の人々がゆらゆらと歩みだしてくる。
学生、背広の男性、スカートの女性、メイド服やナース服の女性もいる。
あまりに多種多様でナイトの趣味が分からないぞ。
彼ら多くの「人形」になった人が俺に向かってくる。
さあ、やっと出てきたのか、人質兼兵隊さん。
いつ出してくるのかと思っていたけれど、ナチュラルに忘れているとは、ナイトは本当に脳筋。
「知」とやらが近くに居なくて良かったよ。
「これでもうお終いだよ。これだけの人間相手にどうするんだい? 彼ら自体はまだ人間のままだよ。傷つけたら死んじゃうかもね」
「すいません、警察の方撃たないで下さいね」
俺は囲まれないように少しずつ後退していく。
「ありゃ、もう手出しできないか。あれだけ吼えていたのにねぇ」
言うだけ言ってりゃいいの、こっちは考え有っての後退なんだからね。
「おい、グレーターも出て来いよ。こいつら皆殺しだ」
ナイトの声で俺の左右5mくらい離れたところにグレーターデーモンが2体現れる。
俺、ピンチぃ。
「出し惜しみ無く、全部出してきたんだね。ナイト君」
もう少しで目的地、ばれないようにゆっくり後退。
「そりゃそうさ、ここでやらなきゃ僕に後は無いからね」
そういうナイトの背後に、ナイトの異形な姿を見て腰を抜かした内藤広重がいる。
「和也、なのか? お前は?」
老人の声に気がついたナイトは振り返って答える。
「そうだよ、おじいちゃん。ごめんね、いままで騙していて」
「それはどういう事なんだ?」
「おじいちゃんの本当の孫は交通事故の時に死んじゃっているんだ。お父さんやお母さんを殺したのも僕だよ」
ここでバラすのか、残酷なヤツ。
「一体お前は何なんだ!」
「僕はこの宇宙を支配する魔神王『皇』様配下、この地球担当の魔神将、『騎』さ。ナイトが内藤なんて偶然にも程があるね。お孫さんの魂は美味しかったよ」
お前は必ず滅ぼしてやるよ。
しかし、悪者って誰も彼もしゃべりすぎ。
自分の悪事を語りたいんだろうかねぇ。
「おまえが孫や娘を殺したのかぁ!」
「いままで面倒を見てくれてありがとう。お礼にこの星で一番最後に殺してあげるね」
「おぉぉぉ」
すっかり怯え泣き叫ぶ老人に背を向け、俺を見るナイト。
「あら、だいぶ後退しちゃったんだ。レッサー、グレーター、もっと囲めよ」
その油断がお前の敗因だ。
ナイトを含め全部の悪魔が予定円内に入ったのを確認した俺は叫ぶ。
「マユ姉ぇ、今だ!」
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