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功刀 康太の遺跡探訪、時々お祓い ~女難あふれる退魔伝~  作者: GOM
第一部 第一章 功刀康太はエルフの姫様と出会う
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第4話 康太の大変な一日:夕方その1「遺跡探訪」

 ゴタゴタがあったものの無事除霊も出来たし、ナナの宿題も一区切りつけた俺は母屋から出て行く。

 夕方から教授に頼まれた仕事、未調査の古墳の下見及び草刈をしなくてはならないからだ。


「コウちゃん、今日は帰り遅いの?」


 マユ姉ぇはどうやら晩御飯も準備してくれているようだ。


「20時までには片付きそうだけど」


「じゃあ、今日は晩御飯もウチで食べてね。ナナの宿題の残りも見て欲しいし、石の件もあるし」


 う、これは有無を言わせないつもりだな。


「うん、じゃあ帰る前に電話するから」


 俺はそう言って玄関に出ると、狛犬の上にシールが張られていて「1号」「2号」って書かれているのを見つけた。

 お前たちそれで良いのか?


〝うわふぅ〟


 どうやら名前をもらったのが嬉しいらしく、動く尻尾があればブンブン振り回しているくらいご機嫌のご様子。

 それならいいんだけど、折角なんだからもっと考えて名前付けてあげろよ、ナナ。



  ◆ ◇ ◆ ◇



 今、俺は頼まれた仕事を片付けるべく古墳の上で草刈をしている。

 流石に8月の今、真昼間に草刈する度胸は無い。

 少しでも涼しくなった夕方にするのが正解。

 なお、本当ならシルバーの方でも雇って草刈するのが一番だろうけど、研究室が予算不足なのと、一部だけ草刈をすれば当分の発掘には問題ないから俺が一人でやっている。

 バイト代もちょっとだけど出るしね。


 この古墳は小山の上にある円墳。

 古墳自体は奈良前期のありふれたものだけれども、この古墳が普通と違うのは何か別の遺跡の上にわざわざ作られているから。

 小山の中には超音波やレーダー測定だと空洞があるっぽいのだが、妙に超音波や電波が遮られて正確な空洞の位置が分からない。

 地磁気的にも怪しいものが埋まっているのは間違いない。

 これ以上の詳細データを得るのは、宇宙線から発生するミュー粒子を使ったミュオグラフィとかやる必要があるらしいけど、そんな予算があったら俺が草刈する訳は無い。

 ピラミッドとか火山内部の研究なら予算ふんだんにあるから、こういった科学技術使えるんだろうけどね。

 俺はオカルト系もやるが科学も少々(たしな)む。

 せっかく現代に生きているんだから、使えるものは何でも使えなきゃね。



「よっこいしょっと」


 少々年寄りくさいが、こうやると重いものを持ち上げやすいから、つい言ってしまう。

 鎌を地面に置いて草刈に邪魔な大石をどかしていると、石の下に窪みがあるのを俺は見つけた。


「こりゃ、なんだろう?」


 俺は窪みを不思議に思って近づくと、急に足元の感覚が無くなった。


「ひゃ――!」




 俺はどうやら空洞を踏み抜いたらしく、地下に続く穴に落ちていく。

 幸い、穴は途中から坂になっていたので、俺は頭と首を腕でかばってゴロゴロ転がっていった。


「痛って――」


 転がる勢いが止まると同時に俺は広い空間に飛び出していた。


 まず、こういう場合に確認するのは全身の状態。

 頭、意識があるから大丈夫。

 首、問題なし。

 手、少々痛いけど動かせるから良し。

 脚、同じく痛いけど動く。

 腹部、ドロだらけだけど、大きな切り傷とか無し。

 おおむね良し。

 今度はゆっくりと起き上がっててみる、うん、大丈夫。

 草刈の時に危ないから、暑いけど長袖・長ズボンにしていて良かったよ。

 じゃなきゃ、肘や膝が傷だらけになっていた。


 俺は次に周囲の状況を観察した。

 空間の空気はカビくさいけど、硫化水素臭や腐敗臭が無いからたぶん大丈夫。

 酸欠なら、さっきまでに息した瞬間に気絶してその後死んでいるはず。

 遺跡とか下水道等の閉鎖空間に入る場合の酸欠事故は結構ある。

 こういった事態での注意点は大学で叩き込まれていた。

 発掘のたびに死にそうになるのは嫌だからね。


 空間は暗闇に閉ざされており、俺が落ちてきた穴のほうからは光が差し込んでいる。

 元々気密性が良くなかったのが幸いして酸欠にならなかったのだろう。

 俺は無事だったスマホを懐から取り出し、照明モードにして目の前を照らす。


「おお!」


 目の前には半径5mほどの半球形の大きな構築物があり、その周囲には全長2mくらいの石版状のものが8枚ほどある。

 床も大きくて平らな岩を組み合わせて平床になっている。

 このような形状の遺跡は見たことが無いし、日本では聞いた事が無い。

 海外ではあったかも知れないが、それが日本であったとなれば大発見だ。


「こりゃ、大発見で修士論文どころか博士号論文も書けるかな?」


 と、俺が取らぬ狸の皮算用を思ったときに、首にかけていた石が光った。


「え! どうして今光るんだよ?」


 俺、何の力も石に込めていませんよ。

 そのうち、石の光が目の前の半球形に移っていき、石版と共に光りだす。

 俺は急いでスマホで写真を撮って、壊さないようにスマホを再び懐にしまいこむ。


「これって、漫画とかラノベだと古代遺跡が起動して遺跡が空に飛び出すとか、遺跡から何か出て来るんだよな」


 ああ、どうやらその通りの様だよ。

 半球形構造物の上の空間に渦巻きが発生して円形の「門」(ゲート)らしきものが形成される。


「ここから早く逃げなきゃ」


 俺は立ち上がってゆっくり後ろずさりしながら構築物から距離を取ろうとした時に、「門」から何か白いモノがゆっくり落ちてきた。


「え!!」


 アレってどう見ても裸の女性、いや女の子だ。

 このままじゃ地面に落ちる。

 それは男としてはやってはいけない事。

 目の前で女の子が空から落ちてきたら拾うのが願望であり、義務なのだ。

 俺は瞬間的にそこまで考えてダッシュする。


「おら――!」


 女の子が地面とぶつかる前に俺は彼女を受け止める。

 一安心して女の子を見る、いや裸の女の子をあんまり凝視しちゃダメ。

 ちょっと見た感じでは、ナナと同じくらいか、少し年下の幼い外見。

 身長は135cmくらい。

 胸も腕の下にあるお尻も薄そうだし、手足も細い。

 肌の色はとても白く、アーモンド形の目や幼いけど整った顔立ちを見るにアジア系では無い。

 髪の色はプラチナブロンドでボブカット、眉毛も同じ色で、下の方は……、見ちゃダメだ。

 というか、耳がエルフ耳、それも古典バルカン耳ではなくて、ロバの耳形。

 うん、地球人類、ホモ・サピエンスじゃないよね。


 俺が女の子を観察(?)していたところ、「門」から大きな真っ黒い鉤爪付きの腕がにょきって出てきた。

 はい、逃亡する女の子を追いかける悪魔、とってもテンプレです。

 俺は急いでその場から女の子を抱えて後ろに逃げる。

 この子、ナナよりも大分軽いね、たぶん体重は30kgくらいかな。


 「門」から5m程逃げる頃に、その腕の本体、ねじくれたヤギの角に大きな牙、身長3mくらいで真っ黒のどう見ても悪魔なお方が完全に姿を現す。

 これ言っても良いよね。


「こんなの、ありえねぇ――!」


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