第33話 康太は遺跡発掘を手伝う:その2「デバイス完成」
俺は、リタちゃん・ナナを迎えに行くべく、マサトの家へ向かった。
マサトは実家に住んでいて、俺達の家から徒歩20分程度のところにある。
一人ならバイクでひとっ走りする距離なんだけれど、今日は妹達のお迎えなので久方ぶりにゆっくり散歩も兼ねて歩く。
夕日を存分に堪能した俺は、マサトの家に着いた。
「ごめんください、功刀です。ウチの従妹を迎えに来ました」
「あら、コウちゃん。いらっしゃい。可愛い子達はマサトと一緒に裏の倉庫の方にいるわ」
マサトのお母様、たぶん四十路にはなるのだろうけど、ショートカットが似合う今も可愛い感じのする女性。
マサトのおぼっちゃん的な童顔はこの人からの遺伝なんだろうね。
「賑やかな連中が急にお邪魔してすいません」
「いいのよ、コウちゃん。あんな可愛い女の子達ならいつ来てくれても良いのよ。ウチ、男の子しかいないから女の子が来てくれるのは今まで無かったし。元気でボーイッシュなのも妖精サンなのも可愛すぎてオバサン、たまらないの。」
うっとり気味にお話されるお母様、そりゃリタちゃんは可愛いのは分かるけど、ナナも可愛く思われるのは嬉しいね。
「おーい、迎えに来たぞ、お嬢さん方」
「コウ兄ぃ、ちょうど良い所に来てくれたね」
「こうにいちゃん、できたよ」
「コウ、デバイスがちょうど形になったところなんだ。見てくれない?」
マサトが提示してくれたものは、一見魔法少女モノ定番のステッキ形おもちゃに見える。
全長50cm弱で淡い桃色のプラスチック、たぶんABS樹脂系の素材で出来ていて先端に宝石状のものがあり、その左右に羽状の飾りがある。
そして棒状になっているところに何箇所かにスイッチが付いていて、握り手部分がトリガー状になっている。
「これ、おもちゃのステッキにスイッチを追加しただけに見えるけど、それだけじゃないよね」
「うん、スイッチは内蔵された複数の九十九神さん達に電子音でお願いを伝えるだけのものであまり意味はないんだ」
「それってどういう意味なんだ」
「ここからはボクが説明するね。マサトお兄ちゃんが作ってくれたのは外側と電子音を出してくれる装置なんだ。このステッキには3柱の九十九神さん達がいてくれて、それぞれに決まった音と回数で能力を使ってもらうようにしているの」
へー、九十九神さん達にお願いを伝達するのに電子音を使っているんだ。
ちなみに神様の数を数える場合は「柱」を使う。
九十九神さんは神様というより妖怪だけど、仲良くしてくれる方々を「匹」とかでは数えたくないよね。
「先端にある宝石みたいなところにいるのが、『力』を貯めてくれる子。この子のところに溜め込んだ力を持ち手のトリガーで放つようにしているの。リタちゃんだけだと光弾を4個くらいしか纏められないけど、この子なら10個は楽に貯められるよ」
それはかなりな火力UPだね。
こっちに来た頃のリタちゃんは、こっちの世界の魔力不足もあってグレーターデーモンの顔を焼くのが精一杯だったけど、最近は皆の影響かだいぶ修行していてレッサーデーモンなら一撃で滅ぼせるくらいになっている。
その火力が2倍以上になるとなると、かなり凄いよ。
「他にはどんな機能があるんだい?」
「よくぞ聞いてくれたね、コウ兄ぃ。 このスイッチが弾の放出パターンを変えるためのもので、普通の弾と散弾と収束ビームの撃ち分けが出来るんだ」
それは便利だね。
「一角獣」Gダムのビームマグナムなんて物語の都合だろうけど「どっかん」しか無かったから使いづらそうだったし。
「撃ち分けについては、また別の子が担当してくれてるの。そしてこのスイッチ担当の子は光系の術を火炎系に変換してくれるんだ。確か先の方は燃えにくいようにしてくれているんだよね」
そういえば、リタちゃんは攻撃は光弾系しか使っていなかったね。
「うん、そうだよ。先端の方は加熱対策で耐熱樹脂にして羽の部分から放熱しやすいようにしているよ」
耐熱と放熱まで考えているとはパーフェクトですよ、マサト。
「わたし、ほのおまほう、にがてなの」
後から聞くとリタちゃんが使える魔法は、攻撃用の光弾、念話、幻影・幻覚、探知、簡易治療などの後衛系のもの、強化系などの前衛向けや火炎系なんかの攻撃魔法は習っていなかったそうな。
「そういう訳で、リタちゃんが苦手な火炎系の攻撃が可能になったんだ」
これはかなり高性能な魔法ステッキだ。
デザインもリタちゃん向けに可愛い風なのも良い。
「これは凄いものできたね。マサト、ありがとう。こんなに良いものを作ってくれて」
「いや、僕の方こそありがとうだよ。魔法と科学の合体なんてコウやナナちゃん、リタちゃんと知り合わなければ出来ない事だからね」
「で、このステッキの凄いところは、まだ九十九神さんを増やしたり入れ替えたりする事ができるところなの。火炎担当さんの代わりに雷撃や氷を撃てる子を入れ替えたりしてもいいと思うの、ボク」
「そりゃリタちゃんに使いこなせるのかい? 九十九神さん達との相性もあるし、複数の子と魔力供給契約するのもキツイよ」
九十九神さん達は、周囲の霊気や使い手の魔力を「生きる」為の活力として使っている。
複数の九十九神さんに魔力供給するのは楽な仕事じゃない。
「そのコツはボクが教えているから大丈夫。だってボクもう7柱の子達と契約済みだよ」
「うん、わたし、だいじょうぶだよ」
確か、狛犬1・2号、漏斗、小柄、和ハサミで5柱だよね。
「ナナ、2柱ほど増えている気がするんだけど」
「コウ兄ぃ、正解! 今度機会があれば、その子達も披露するね」
こうやって圧倒的にパワーアップしていく妹達。
兄貴としての面目無いぞ、これ。
「凄すぎて、俺もう出番無くても良い様な気がするよ」
「でも、ボクやリタちゃんは後衛系だから、前衛でコウ兄ぃが守ってくれると安心だよ」
「うん、わたしも、こうにいちゃんのうしろならあんしんだよ」
そう言ってくれる二人の妹達の笑顔を見たら、自分のちっぽけなプライドなんてどうでも良いや。
この二人を守れる「騎士」としてがんばるべし。
でも騎士というよりRPGで言うところのターゲット取りの盾役かもね。
「説明はもう良いよね。僕が作った部分はステッキの外装と電子音部。電子音鳴らすために基盤を組み込んでいて小型電池で鳴らしているんだ。なので、電池の残量には気をつけてね。それと殴り合いとかには使わないでね、一応グラスファイバーで強化はしているけど無理したら折れるから」
「うん、わたし、なぐらないからだいじょうぶ」
リタちゃんが鈍器使うのは想像できないな。
エルフは細身の剣や弓、魔法の杖を使うイメージしかないし。
しかし、耐熱加工も含めてただのABSじゃなくてファイバー入れた強化プラスチックとは凄いな、マサトの加工技術。
「そういえば、テストはしたのかい? 試し撃ちしないと大丈夫かどうか分からないし」
「うん、僕もそれは思っていたんだ。でもどこで撃ってみたら良いのやら。一度は全力発射テストはしたいし」
「俺も思いつかないから、マユ姉ぇに聞いてみるよ。多分あの人なら呪の練習で大技使っている場所があるはずだし」
俺はマユ姉ぇに電話をして聞いてみた。
「そうね、ならお父さんのお家の裏山が良いわね。私が車を出すから皆で行きましょう」
裏山でぶっぱした結果だけれども、大音響と強烈な閃光が発生した後、直径10mを超える大穴が地面に開いたのはマユ姉ぇすら想定外だったようで、後の対応が大変だったそうな。
いやー、ウチの妹達もマサトも凄いや。
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