第29話 康太は身内のトンデモなさに困惑する
俺にとって家庭教師は良いとして、他の日常はとても過酷だ。
なにせ家に帰っても俺が「強さランキング」最下位なのだから。
マユ姉ぇのデタラメさは、もうしょうがない。
霊能力にしろ人脈にしろ、全く全貌が見えない。
もはやあの人を「人類」の範疇に入れていいかどうかの部類だろうから。
次にスーパーパワーアップしたナナ。
まさか九十九神達を某Gダムのビット兵器宜しく扱えるようになっていたとは思わなかった。
「ナナ、お前が九十九神を扱えるのは良く分かったよ。で、なんでGダムのオールレンジ攻撃兵器なんて知っているんだい?」
なお、本来のオールレンジ攻撃とは円状の飽和攻撃の意味だそうで、Gダムのファンネル攻撃が有名になってそっちの意味で使うのが主流になったんだとか。
「ボクね、『天上人』を見てすっかり嵌っちゃったんだ。だってパイロット皆イケメンなんだもん」
もうだいぶ前の作品なんだけど最近10周年とかで再放送されていたし、あのあたりから映像も綺麗で女性人気も高かったよね、確か。
「鉄血」とかは泥臭いし、最後が悲しい結末だから女性人気が微妙だったらしい。
「特に二重人格の人が良いの。映画まで見ちゃったもん。あの『赤くなって強い』とか、目で追えないくらいのハサミでの大暴れが良かったの」
だから牙とかハサミなのね。
「そこまでは分かるけど、漏斗は無理やりすぎないかい?」
「実は逆なの。漏斗さんが先に九十九神化していて、漏斗さんに聞いてみたら飛んでビーム飛ばせるって言うから他の子にも頼んでみたの」
おいおい、本当かよ。
漏斗自身が自分から空飛んでビーム撃つとは。
まさか、Gダムのイメージを九十九神達が取り込んでいたのか?
そりゃ大抵の妖怪は人のイメージから生まれるそうだけど、アニメネタまで拾うとは。
「だからなのかよ。で、まさかもっと種類とか数が増えるとは言わないよね」
「うふふ、それはまたのお楽しみで。コウ兄ぃ、もっとびっくりさせてあげるね。」
一発のダメージが弱い分大物退治には向かないだろうけど、先日の対インプ掃討戦なんかは得意だろう。
「まさか、火力不足対策なんて考えて……」
「うふぅふ」
満面の笑みで返されたら俺は何も言えない。
でも見慣れているはずなのだけれども、ナナの元気な笑顔を見ていると不思議と安心できるから、ナナに勝てなくても別にいいや。
なお、小柄さんとか和バサミさんは怖いから漏斗さんだけで試合させてもらったら、黒焦げにされたよ俺。
続いて、夏に少し日焼けしたせいか大分元気っぽい感じになったリタちゃん。
もともと色素が薄く地球で言うところの北欧みたいなところに住んでいたリタちゃんにとっては、日本の夏は厳しいものだったそうな。
初めて体験する蒸し暑さにはだいぶ参っていたし、色素不足から日焼けよりも火傷に近くなりそうになっていたリタちゃんの為に、マユ姉ぇは念入りに日焼け止めとか使ってあげていた。
目の光彩も翠なだけに俺達よりも眩しく感じるそうで、サングラスをマユ姉ぇがリタちゃんに買ってあげていた。
しかしそのうち身体も慣れたのか、夏の終わりごろにはナナと一緒に屋外へ遊びに行くようになっていった様だ。
リタちゃん、最初念話ではいかにもお姫様的なニュアンスでの話し方をしていたけれど、ナナに引きずられたのか若しくは自らの拙い日本語での会話能力が影響したのか、はたまた「地」がそうだったのか。
えらくラフな念話をするようになり、今では日本語での会話とそう変わりない年齢相応の話し方をしている。
まあ、その方が可愛いんだけどね。
またナナの影響でリタちゃんはアニメを見るようになり、最近では魔法少女モノに嵌っている。
実際、リタちゃんはリアル魔法少女なんだけどね。
その中でもお気に入りなのが、別名魔砲少女シリーズ。
エロゲーのスピンオフだったはずが知らぬ間に映画シリーズまでなっている作品で、他の魔法少女モノが大抵幼女向けなのだけれども、コイツは大きなオトコノコ向け作品。
作品世界では、魔法は科学技術の一種という取り扱いで個人機器を使って大規模魔法を行使している。
作品の代名詞が、主人公少女の撃つ大規模砲撃魔法というのが、とってもキテいる。
先日のデーモン戦で最後にリタちゃんが撃っていたのは、今までの単発光弾魔法とは違い、周囲に数個の光弾を展開してから手元に集めて大弾にしてからぶっ放すモノ。
「かめ○め波」というか「波○砲」というか、砲撃系魔法だよねアレ。
リタちゃんに聞くと思いつきで試したところ想像以上の火力だった上にぶっ放しが気持ちよかったそうで、これを今後は生かしてみたいとの事。
そして、今リタちゃんの目の前には山ほどのガラクタがある。
「リタちゃん、コレお爺ちゃんのお家の納屋にあったものだよね」
リタちゃん可愛い上にとても人懐こいから、秋山の祖父母達は最初から「撃墜」されていて、新たな孫を文字通り孫可愛がりしている。
言うまでもなく、岡本の家も全員「撃墜」済み。
リタちゃんは親衛隊を作られるほどの「撃墜」王、実は俺も出会った時から君には「撃墜」されているんだけどね。
「うん、そうだよ」
リタちゃんはガラクタを眺めては組み合させている。
もちろんナナも妹のお手伝い中だ。
「コウ兄ぃにはないしょだよ、その2、いや3かな?」
「ななおねえちゃん、こうにいちゃん、なかまはずれ、だめ。おしえてあげて」
「妹の頼みとあらばしょうがないね、コレはリタちゃん専用デバイスの材料なんだ」
「へー、でも九十九神なら分かるけれど、デバイスなんて作れるのかい?」
「あの作品でもデバイスは会話していたでしょ。知性あるのは九十九神もおんなじだから出来るよ」
そういえば、デバイスって英語かドイツ語で会話していたっけ。
そうか、ドイツ語で魔法というのはリタちゃん向きだったんだね。
なお、俺も二人のお付で映画館まで行って一緒に見ました。
「それで、魔力の増幅と収束能力がある九十九神さんをうまく使ってデバイス代わりに出来ないかなってのがコレなんだ」
「もちろんマユ姉ぇの許可は取っているんだよね」
「そりゃもちろん、お母さん飛ばして話進めたりしたら怖いもん。」
「うん。おかあさん、おこったらこわいよ」
「なら良いんだけど、出来そうなのかい? 魔力量とかの分類なら俺でも見て手伝えるけど」
「たぶん大丈夫だよ。あと、修行とかさぼっていた方がまずいんじゃない、コウ兄ぃ。ボクそっちの方が心配だよ」
あう、そうでした。
最近剣術の修行も含まれてきたから忙しんだよ、俺。
軽くて良く切れる剣だとしても、振り方一つで威力は大違い。
軽さを生かして連撃を叩き込むのが、光の剣を使った剣術向きなのはデーモン戦で使って良く分かった。
某剣技術通信じゃないけれども、片手剣四連撃とかは知ってて損はない。
「じゃあ、俺は自分の修行に行くからごゆっくりね」
「うん、コウ兄ぃも頑張ってね」
「こうにいちゃん、ふぁいとぉ」
可愛い妹達に見送られるのは実に良いもんだね。
気持ちよく修行にいった俺だが、マユ姉ぇに気持ちよく捻られて悲鳴を上げたのは、もはやお約束かと。
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