表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
功刀 康太の遺跡探訪、時々お祓い ~女難あふれる退魔伝~  作者: GOM
第五部 功刀康太の女難たっぷりな退魔伝

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

272/272

第272話 グランドフィナーレ 「あれから……」

 とうとう、コウタ達の物語もこれで終わりです。

 では、ナナちゃんが語るグランドフィナーレ、どうぞ。


「ななおねーたん、なにしてるの?」

(あんず)ちゃん、これはね日記を書いているの。お姉ちゃんは、どんな事があったのか、毎日書いているのよ」


 わたしが、机に向かってパソコンで書き物をしているところに妹の杏ちゃんが来た。

 どうやらお母さんがリタちゃんの出迎えで忙しいから、こっちに来たらしい。


「わたちにもみせてぇ」

「うん、いいよ。じゃあ、お姉ちゃんの御膝に座ろうか」


 わたしは、杏ちゃんを御膝に持ち上げて座らせた。

 杏ちゃんも2歳半、結構重くなってきた。

 おしゃまで可愛い、わたしの大事な妹だ。


「なんて かいてあるのぉ?」

「ここにはね、杏ちゃんが生まれる前の事が書いてあるの。杏ちゃんはね、リタお姉ちゃんの事お腹にいるときから大好きだったって」

「そうなんだぁ。わたち、ななおねーたんも、りたおねーたんも だーいすき!」


 杏ちゃんの中には、リタちゃんを大事に思ってくれていた近衛兵のアンゲリカさんの魂がある。

 今は杏ちゃんとして生まれ変わり、皆で楽しい毎日を過ごしている。


 杏ちゃんの所有魔力量は、今のわたしとどっこい、年齢からしたらかなり多めだ。

 チエ姉ぇの見立てだと、杏ちゃんはいずれ前世、アンゲリカさんの記憶が蘇るかもしれないらしい。

 その時、前世に呑まれず杏ちゃんとしての自分を失わないように、のびのびと自我を強く育てる方針というのがお母さんやチエ姉ぇの見解だ。


 でも、わたしのカンだと、多分大丈夫かなって思う。

 だって、杏ちゃん、結構ガンコだし、言いたいことやりたいこと押し通すもん。

 そう簡単に自分を失ったりしないんじゃないかな。

 これに関しては、どうもチエ姉ぇの影響が大きいんじゃないかと睨んでいるの。

 チエ姉ぇも無茶してでも自分を押し通すタイプだもんね。



「おねーたん、おねーたんはおにーたんのこと、すきぃ?」

「コウ兄ちゃんの事? うん、だーい好きだよ。杏ちゃんはどう?」

「わたち、おにーたんもすきだよ。いっぱい、たかいたかいしてくれるもん」


 リタちゃんの救出奪還作戦から3年、あれからも沢山の事があった。


「杏ちゃんが生まれてすぐの時、お兄ちゃんすっごく大変だったもんね」

「わたちが うまれたときぃ?」

「杏ちゃんは何も悪くないんだけどね」

「なにがあったのぉ?」


 2年前、性懲りもなく「這い寄る混沌(ナイアルラトテップ)」が再びわたし達に挑んできた。


 ヒラムさん達「古のもの」のご先祖が作った転送門等の宇宙ネットワーク、その基幹システムがある惑星で暴れてシステムを乗っ取り、チエ姉ぇのお婆様、母悪魔(マザーデーモン)さんが張った宇宙全体の防護壁を壊そうとしたの。


 この防護壁がある限り、宇宙の外側からは邪神の仲間達がこちらに入れない。

 邪神は、宇宙ネットワークの空間を繋ぐ効果を利用して、外側へ繋がる大きなトンネルを開こうとしたんだって。


「悪い神様が悪い事しようとしたんだけど、お母さんやコウ兄ちゃん、チエお姉ちゃん達の活躍で、悪い神様をいないないばぁしたんだよ」

「いないないばぁ?」

「うん、こっちに来ないでって、神様のお家のあるところに送ったの」


 コウ兄ちゃんは、邪神を魔剣さんの力で倒して、残った魂ってのを「むこう側」へ追い出したんだ。

 チエ姉ぇやチエ姉ぇのお母さま(デーモンクイーン)によると、これで少なくとも私が生きている間くらいは、邪神はこっちに来れないだろうって。


「でね、その時に別のお家()と地球が繋がったの。リタお姉ちゃんの『お家(アルフ星)』みたいにね」

「あ、わたち テレビでみたよぉ!」 


 基幹システムがあった星、そこは地球やリタちゃんの星、その他沢山の星々から大昔に転移移住した人々が多く住む星で、ファンタジーそのものの世界。

 最初は色々と大変な事が起こったけど、今は国交というか星交を結んでお付き合いを始めている。

 今では少しずつだけど、人的・物的交流も始まっているの。


「リタお姉ちゃんの処とも、近いうちに正式お付き合いを始めると思うの。そうしたら杏ちゃんも遊びに行けるよ」

「わたち、たのしみぃ!」


 アンゲリカさんの故郷でもあるアルフ星、今は徐々に復興が進んでいるところ。

 悪魔側駐在武官として「(ランス)」お兄さんが常駐していて、隠れて残っている悪魔達が悪さしないようにオハナシアイをしている。


 「槍」お兄さん、時々地球に来てはチエ姉ぇに愚痴って、お母さんに美味しいもの食べさせてもらって満足して帰っているの。


「ナナ、杏! リタちゃんとコウちゃんがもうすぐ帰ってくるからお出迎えしてね」

「分かったよ、お母さん! 杏ちゃん、行くよ」

「うん、おねーたん!」


 今日は、リタちゃんが里帰りから帰ってくる日。

 今リタちゃんは、わたしと同じ高校の一年から二年になるところ、春休みの期間を利用して向こうで頑張っているリタちゃんのお爺様のお手伝いをしている。


 アルフ星には、まだ沢山の人達が生き残っていたので、今は王族を中心とした立憲君主制という形で復興をなしているんだとか。

 そこでリタちゃんが勉強した事を役立てていて、地球の良いところを真似ているんだって。

 もちろん地球の悪いところは真似しないように、リタちゃんだけでなく政治が出来そうなアルフ星の人々を数人地球に極秘に招いて勉強してもらっている。

 内藤のお爺ちゃんとか黒田のおじちゃん、寺尾さんとか中村のおじさん、その他大人の人達が頑張ってくれた結果と聞いているの。

 どうもチエ姉ぇが「神剣」を壇ノ浦から探して返したから、とても「お偉い」方からのご意見もあったんだって。


「ナナお姉ちゃん、あんずちゃん。ただいまぁ!」


 リタちゃんが庭にある転送門(ゲート)から飛び出してきた。


「おっかえりー!」


 わたしは、勢いよく飛んできたリタちゃんをキャッチした。


 わたしもいい加減成長して大きくなったけど、リタちゃんもだいぶ大きくなった。

 わたしは身長162cmくらいだけど、リタちゃんも160cm手前くらいまで背が伸びた。

 お互い胸のサイスはとんとん、小さくもなく大きくもなく、スレンダー体形。

 どうやら2人揃ってお母さんには「下剋上」は難しいっぽい。

 カオリお姉さんは凄かったと思うの。


「向こうはどーだった?」

「お城もだいぶ治ってきたよ。あとね、町にすいどうを引くじゅんびできたの!」

「それは良かったね」


 衛生環境の充実は大事、どうしてもお城の周囲に人が集まる以上、病気とか起きにくい様にしないとね。


「姫様、お淑やかさを忘れてはなりませぬ」


 口うるさくリタちゃんに話すルーペットさん。

 あれからお母さんのアパートの一室に住み、リタちゃんにべったりなの。


「ルーペット、わたくし向こうでは頑張ってお姫様しているのですから、こちらでくらい羽を伸ばさせてくださいませ。ねー、お姉ちゃん、あんずちゃん!」


 リタちゃんはルーペットさんにお姫様っぽく神聖(ドイツ)語で話した後、わたしと杏ちゃんの方を向いて日本語で話す。


「もー、向こうではきゅーくつなんだもん。それにトイレもウォシュレットじゃないし、お風呂も無いの。わたし、向こうに帰りたくないよぉ」


 すっかり日本の女の子になっちゃったリタちゃん、清楚なお姫様をやるのが嫌っぽい。

 それに日本の衛生環境知っちゃったら、帰れないよね。


「でも、そういう訳にもいかないんでしょ。お爺様が頑張っているんだから。わたしもお手伝いするし、毎日こっちから通いでも良いから頑張ろうよ」


「うーん、お姉ちゃんがそういうなら、わたしがんばるの。早くウォシュレットとお風呂お城に作るんだぁ!」


 なんか方向性が違う気もするけど、アルフ星の皆が幸せに暮らせるようになるなら良いかな。

 アルフ星では、だいぶ元気になられた先王様が王様に復活して、他の人達と協力して復興をしているらしい。

 今は、闇族(ダークエルフ)の人達とも一緒に暮らしているんだって。


「そこはワシがなんとかするのじゃ! ワシも、もうウォシュレット無しな生活は嫌なのじゃ!」


 チエ姉ぇもリタちゃんと一緒に向こうへ行ってて、今は技術的な指導をしているらしい。

 まだ地球の技術者をおおっぴらにアルフ星には派遣できないから、しばらくはチエ姉ぇが頑張るしかないかな。


「まあ、色々とパテント代が入ったのでワシのお財布はパンパンなのじゃ。資金的や技術的な事はおまかせなのじゃ!」


 チエ姉ぇ、アメリカさんとか日本の研究所にこっそりと自分で開発した技術を売ったらしい。

 他所(よそ)の星とのお付き合いをするのに、ゲート式の通信機は圧倒的に役にたつし、義体作成用のマテリアルは大怪我をした人々を救うのに役に立つ。

 悪用したら大変な事になるよって脅したのは、チエ姉ぇらしいけどね。


  ◆ ◇ ◆ ◇


 他の皆もそれぞれの道へ進んでいる。


 カオリお姉ちゃんは希望だった天文学を大学で勉強中、ケイコお姉ちゃんも医学部へ一発合格して頑張っているんだとか。


 マサトお兄ちゃんは大学院を卒業後、県警の科学捜査研究所に就職したの。

 チエ姉ぇと一緒に科学捜査っぽい事をやったので、その影響なんだって。


 コトミお姉ちゃんは考古学学芸員として大学のミュージアムに就職、多分今年中にマサトお兄ちゃんと結婚するっぽい。


 タクト兄ちゃんは警察に臨時職員として正式採用され、去年の夏にアヤメお姉さんと結婚した。

 どうやらおめでたっぽい話を今年の年始に聞いたの。

 アヤメお姉さん、高齢出産には該当しないから一安心だったとか。


 カズミお姉さんは、弟のタクト兄ちゃんに先を越されたのでヤキモキしてるらしい。

 マヤちゃんは地元高校に通って、スポーツ選抜で大学を狙っているんだとか。


 カレンお姉さん、シンミョウお姉さん共に高野山大学を卒業、今は実家のお手伝いしながら退魔活動をしていて、共に彼氏募集中だって。

 2人とも結婚する気は無かったけど、アヤメお姉さんの幸せそうな結婚式見たのと実家のお父さんから婿さん貰って寺を継いでほしいって言われたんだとか。


 カズヤ先輩は4月から文系国立大学生、イケメンのまま成長したからこれからもモテモテだろうってのは内藤のお爺ちゃんからの話。


 ショウタ君は今度中学2年、声変わりして身長もメキメキ伸びて、この間久しぶりに会ったときにわたしよりも身長が高くなっていてびっくりしたの。


 三木君、森川君、ルナちゃんは私と同じ高校、リタちゃんと一緒に皆で高校でも生徒会役員をしているのは、もう腐れ縁かもね。


 三木君は理系、森川君は体育大学、ルナちゃんは情報系大学を目指して勉強中。


 そういうわたしは、沢山の人達とお友達になって仲良くなる手助けをしたいから、通訳を目指して外国語大学へ行こうかなと思っているの。



 大人の人達も色々、中村さんは警視庁へ帰って警視に出世、都内の警察署長になった。


 寺尾さんは定年間近でそのまま室長、アヤメお姉さんが寿退社しないように引き留めて、育児休暇を取りやすくするよう上と交渉中とアヤメお姉さんから聞いた。


 教授先生は、お兄ちゃんと時々一緒に冒険しているらしい。


 豊原先生は消化器外科の教授に昇格して、「白い巨塔」みたいに「先生のおなーりー」って風な回診をしているって。


 内藤のお爺ちゃん、黒田のおじさんは2人とも元気、パワフルに活躍している。


 秋山のお爺ちゃんお婆ちゃんも元気ハツラツ、確か80近いはずだけど今もラブラブしてひ孫の誕生を待っている。

 岡本のお爺ちゃんお婆ちゃんは、最近ウチのパワーに振り回されていて、ちょっと遠慮気味だけど。


 ススムさんは、この春に小学生になるアリサちゃんにべったり。

 再婚以前の状況で、今からアリサちゃんを嫁になんて出せないと言っているんだとか。

 まあ金髪美幼女小学生がランドセルで通学ってのは破壊力満点だよね。

 ウチの銀髪美少女エルフ高校生もナカナカだけど。


 グレイおじさんは、去年から沖縄の海兵隊の隊長として赴任してきて、時々ウチにも遊びに来る。


 フランツお兄さんは、アメリカで大学に入りなおして、もう騙されないように勉強をしているんだって。


 クロエお姉さんは、今も毎日日本に来てはアニメ堪能していて、そろそろ日本の男の子と結婚したいなんて言っている。

 「調(さー)」ちゃん、完全に回復したんだけど、今もクロエお姉さんと一緒に遊んでいる。


 チエ姉ぇ曰く、


「さぼり癖が出たんじゃのぉ」

 だって。

 そういうチエ姉ぇも地球でバカンスしているんだけど。


 悪魔(デーモン)族の人達はいうまでもなく元気。

 復活させてもらった「(ジェネラル)」さん、「(ナイト)」さんと一緒に自分達が破壊した星々の復興をしているんだとか。

 2人がサボると女王様が怒るってのはチエ姉ぇの話。


 お父さんとお母さんは、いうまでもなく今日もラブラブ全開。

 今度は弟なんて言わないとは思うけどね。



「ナナ、ただいま!」

「うん、お帰り、おにーちゃん!」


 そしてコウタお兄ちゃん。

 無事に大学の研究員として就職、今はカツヤ伯父さんや教授先生と一緒に世界、いや宇宙を飛ぶ回る考古学オカルトハンターとして大活躍している。

 今回は、リタちゃんの護衛兼精神安定剤としてアルフ星に行っていたの。


 わたしはお兄ちゃんに飛びついた。


「うわ、ちょっとナナ重いって」

「えー、乙女に対して重いってのは無いよぉ!」


 お兄ちゃんにしっかり抱き着いて、お兄ちゃんの温かさや匂いを堪能。

 しばらくリタちゃんに貸していたんだから、これくらい良いよね。


「もう、ナナっていつまでたっても甘えん坊なんだから」

「いいもん、だってボクもうすぐお兄ちゃんの婚約者になるんですからね」


 後数か月でわたしも18歳、正式にお兄ちゃんと婚約が出来る。


「おうおう、あいも変わらずお暑い事じゃ!」


 チエ姉ぇがハイビジョン撮影しているけど、もーいいもん。


「あれ、久しぶりにナナのボク聞いたよ」

「あ、しまった。辛抱していたけど、久しぶりにお兄ちゃんの顔見たら出ちゃったの」


 もう良いかな、辛抱することないもん。


「ボク、お兄ちゃんだーい好き!」

「あーん、お姉ちゃん、そろそろわたしにも返してよぉ」

「おねーたん! わたちもおにーたんに、たかいたかいしてもらうのぉ」


「はいはい、分かったから皆ちょっと落ち着いて!」


 お兄ちゃんが拾った魔石から始まった女難いっぱいの物語。

 どうやら、まだまだ続くらしいの。



  ◆ ◇ ◆ ◇


 チエはコウタ達の賑やかそうな様子を微笑んで眺めている。

 そして、ふと空を見上げて呟く。


「さて、第四の壁の外側におる(みな)の集、この物語は一端の終わりじゃ。しかし皆の人生は続くし、ワシもまだまだ語り足りないのじゃ! また要望あればいくらでも語るのじゃ。お呼びがかかるのを待っておるぞ! さて、さしあたって作者を脅して、次回作にでも出ようかのぉ!」



(とりあえずの完?)

 10か月にも渡る長期連載にお付き合いいただき、どうもありがとうございました。

 コウタ達の物語、これにて一端の終焉です。

 またご要望等ありましたら、チエちゃんが言うように復活もあります。


 更に同一世界観にて、現在次回作を公開中です。


『異世界における科学捜査の手法について。~新人捜査官の出向先がいきなり異世界だなんて!!~』

https://ncode.syosetu.com/n3313gb/


 では、ブックマーク、感想、評価・レビュー等を頂けますと、とても嬉しいです。

 皆様、宜しくお願い致します。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[良い点] 完結おめでとうございます! 最後まで面白かったです。 [一言] 次回作に期待(^^)/
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ