第269話 康太の魔神退治:その60「最終決戦 その2! 総力戦!!」
「お、おのれ、オノレ、オのレぇ!」
タクト君のプラズマ火炎に焼き払われた邪神は再び肉の塊になったかと思うと、姿を変え複数の大蛇が絡み合ったような姿になり、宙に浮かぶ。
そして大蛇の口から俺達前線組にビームを放った。
「させません!」
コトミちゃんは、タイル九十九神を巧にあやつり、前線の俺達を守ってくれる。
「ぎゅワァぁ!」
それに気がついたのか、邪神は後方組、ナナやリタちゃん達がいる方に大蛇の首を向けて集中砲撃をしようとした。
「させるかよぉ!」
俺は魔剣を袈裟切りに振るい、結界ごと大蛇の首を2本程切り飛ばした。
しかし、残る首からビームがナナ達に放たれた。
「次元回廊!」
「調」ちゃんは、シンミョウさんが貼る防御結界の前に漆黒の球、いや円を差し出す。
その「円」はビームを飲み込み、異空間へと飛ばす。
「ギォぉぉん!」
しかし邪神は尚もビームを放ち、「調」ちゃんの防御「円」は押し負け、破壊された。
「オン バサラ サトバ アク! 金剛薩埵 金剛壁!」
危機が迫る中、シンミョウさんが唱えたのは、釈迦如来の脇侍、普賢菩薩の別形態の呪。
金剛は、ダイヤモンド。
白く煌く壁がビームの前に立ち塞がり、ビームを弾いた。
そして、弾かれたビームは邪神自身を襲った。
「ぐぉォぉ!!」
邪神も自分が放つビームは効くらしい。
「よし、いくぞぉ!」
俺は魔剣を上段に構え、魔力を込める。
「秘剣 氷雨!」
金色の刃が魔剣の周囲に無数に展開され、俺が魔剣を振り下ろすと同時に邪神を襲う。
この技は爺ちゃん直伝の雨シリーズ。
手数を多くして敵を屠る技だ。
「ドうシてぇ?!」
金色の刃は邪神の結界を更に粉砕し、大蛇の首も多数薙ぎ払われた。
「ドウして、どうして、オれのてには、ナにもノこらナイんだぁ!」
ん、これって「這い寄る混沌」の台詞じゃないよね。
「将」が起きだしたのかな?
「兄上、イイ加減、眼を覚ましてソコから出てくるのじゃぁ!」
チエちゃんは自分の周囲に虚無球を多数展開して、それを邪神に叩きつけた。
「そうだ、兄上。這い寄るナントカの言いなりになるのかよぉ!」
「槍」さんも巨大な虚無槍を展開して、邪神に投げる。
「ぐゥう、オ、おレは、オれはぁぁァぁ!」
「このバカ息子がぁ!」
魔神王は邪神に飛び掛り、おもいっきりぶん殴った。
づどぉーん!
音速を超えた王の一撃は、宙に浮いていた邪神を結界ごと地に叩き付けた。
「見えました! 『将』の核はアソコです!」
コトミちゃんは邪神内の魔神将が居る場所を見つけたらしい。
そこにタイル九十九神が張り付く。
「コウタ殿、突き技でアソコに大穴開けるのじゃ! 後はワシがなんとかするのじゃ! 助け出した後は、母様、ナナ殿、リタ殿。一気に畳み込むのじゃ!」
「おー!」
「りょーかい!」
俺は地面にめり込んだ邪神、そこに張り付く赤いタイルを目印にする。
「ふぅぅ……、やぁぁぁ!」
俺は瞬動法+瞬間移動で目印のタイルの前に移動する。
そして瞬動法の勢いを腕に伝え、音速を超える全力の突きを邪神に放った。
ずどぉぉぉん!
衝撃波を伴う金色の槍は邪神を大きく穿った。
「チエちゃん!」
「おうよ!」
俺は瞬動法によるステップバックで邪神から離れる。
「ぎぃがぁ・どぉりぃるぅ・ぶりゃ――くぅ!」
チエちゃんは妙な技名を叫びながら、右手に漆黒のドリルを発生させて突撃してきた。
チエちゃんは、そのまま邪神に突き刺さる。
「いけぇぇ!」
「おねーちゃん、がんばれぇ!」
ナナとリタちゃんの声援を受けたチエちゃんは邪神にめり込み、そのまま潜り進む。
「だぁぶぅるぅ・どぉりぃるぅ・ぶりゃ――くぅ!」
多分左手にもドリルを発生させたと思われる技を叫んで、邪神の体内を削り進むチエちゃん。
「兄上、とったどぉぉ!」
すさまじい金属音をさせながら邪神を貫いたチエちゃん、両手で光る宝玉らしきものを抱えて飛び出してきた。
「危ねぇ!」
「お姉様!」
「槍」と「調」ちゃんが、チエちゃんのフォローに入って邪神の攻撃を弾く。
「ありがとーなのじゃ。皆の衆、もう手加減要らぬのじゃ! いてもーたれ!!」
地面を転げまわりながら大事に抱えたモノを守るチエちゃん。
アレがお兄さんなんだろう。
「もう障壁はろくにありません。一気に叩いてください!」
コトミちゃんからの報告があがる。
よし、大技叩き込んでやるぞ!
「お母さん、アレいくよ。リタちゃん、バスター砲お願い!」
「ええ、分かったわ。カレンちゃん、シンミョウちゃん、足止めをお願い」
「おねえちゃん、りょーかい!」
ナナはマユ姉ぇとリタちゃんに技を指示する。
そしてマユ姉ぇは、カレンさんとシンミョウさんに邪神を動けないように縫い付ける指示を出した。
「オン ハンドマダラ アボキャ ジャヤデイ ソロソロ ソワカ! 不空羂索観音菩薩 捕縛呪!」
カレンさんとシンミョウさんの呪が重なり発動する。
その呪によって生まれた虹色の羂索が邪神を地面へと縫い付けた。
「うォおぉォ。何故、ワレが、この神たるワれがオマエら如き下等生物に負ケねばナらんのダぁぁァァ!」
もう暴れてもムダ、その羂索は物理的力では外せない。
「将」と秘宝を失い、この世界への干渉力の大半を失ったオマエに、もはや勝ち目は無いのだ。
「父上、イッパツ頼むのじゃ!」
チエちゃんの声援を聞き、王も吼える。
「よし、ウチのバカ息子を誑かして世界を乱した愚かな神よ滅べ! 滅殺陣!!」
王の呪が完成し、邪神の周囲に無数の漆黒の球が生まれ、それが一気に邪神に突き刺さる。
それは無音ながら邪神をボロボロに抉った。
「おろかな じゃしん、ほろぶべし。 きゅうーきょくおうぎ! しゃいにんぐ・ぶれいく・ばすた――!」
リタちゃんの魔法少女杖の先端にものすごい魔力が集中する。
そしてその魔力は暴力的なまでにふくれあがり、桃色の光となって邪神に放たれた。
その一撃は、桃色の火の鳥の形を成して邪神に突き刺さった。
一瞬の無音の後、激しい閃光と共に桃色の魔力光に邪神は包まれた。
爆風を一切発生させない光が消え去った後、そこには羂索に今だ囚われているダークエルフが居た。
「ノウモボタヤ ノウモタラマヤ ノウモソウキャ タニヤタ……」
マユ姉ぇとナナの呪が重なる。
そして力は2人の背中に生えた天使の羽から放たれた。
「オン マユラキランテイ ソワカ! 仏母孔雀明王光翼呪!!」
親娘詠唱による破邪の光は、ダークエルフの姿をした邪神を焼く。
「な、ナぜ……。ナゼにワれは、イつもオマエらに勝てぬのだぁ!」
俺は「這い寄る混沌」の疑問に答える。
「そんなの簡単さ。オマエは沢山の人々を苦しめ、沢山の小さな子達を泣かせた。それが俺達を怒らせ、決起させたんだ。影から嘲笑し、嘲る卑怯なオマエに勝ち目なんて最初から無いんだ。この世界は、ここに住む人たちのものだ。オマエのような外様に勝手にする権利なんてねーんだよ。もう二度とこの世界に来るな! 無限の闇の中で後悔して滅べ!!」
邪神に対して、啖呵を切るコウタ。
今まで裏で暗躍して多くの人々を苦しめた邪神相手に、手加減なんて一切しません。
次回、いよいよ戦いの決着です!
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