第267話 康太の魔神退治:その58「強襲 その11!:最終局面へ!」
「そうか。ルナ殿、ご苦労じゃった」
イルミネーターから地球で起こっていた襲撃について報告があった。
どうやら、「将」は予め地球に下位悪魔からなる尖兵を潜ませていた様で、俺達が強襲する隙をついて拠点を攻撃するつもりだったらしい。
しかし、それを予見していたチエちゃんがルナちゃんに「次元石」からなる変身セットを渡していた様で、蜘蛛少女に再び変身したルナちゃんと巨大化した「ぐっちゃん」が敵部隊を全て無力化したらしい。
「チエちゃん、見事な先読みだったね」
「弱いところを攻めるのは定石じゃからな。しかし、まさか兄上がアソコまで脳筋だったとは思わなかったのじゃがな。嫌らしい手はアヤツらしいのじゃ!」
しかしルナちゃん以外に秘策を教えていない、つまり誰に予想外の戦力を控えさせて置くチエちゃんの方が何枚も上手だったという事だ。
「今度は、こっちの番だね」
「そうじゃ! 父上、『槍』、『調』ちゃん、カズヤ殿、朧、『草』! あのバケモノを押さえ込むのじゃ!」
「おー!」
チエちゃん達悪魔は、空中に待機する。
その足元では、「将」が変貌してしまった異形のバケモノが更なる増殖を繰り返して、ますます巨大になろうとしている。
「皆の衆、ワシの元に位相空間を集めるのじゃ!」
チエちゃんの指示で、悪魔達はチエちゃんの元に力を集める。
それはチエちゃんの頭上に漆黒の球体となって現れる。
「元気っぽい球? 黒いから嫉妬っぽい球かな? それとも巨大ワームな球?」
ナナはチエちゃんの様子を見て、オタクらしいネタを話す。
まあ、最初のネタは俺にも判ったので、オタクネタだと判断できるんだけどね。
「では、いくのじゃ! ナナ殿、こういう時にナニを言うのか分かるのじゃ?」!」
「うん! 勇者なアレだよね」
「そうじゃ! では唱和を頼むのじゃ!」
チエちゃんは何故かナナに指示を出す。
そして球を細長い槍状のモノへと変形させ、それを左手に持った。
「いくのじゃ!!」
そしてチエちゃんは黒い槍を持ったまま、「将」が変化したバケモノに突撃をした。
「え? チエちゃん!」
俺はびっくりする。
だって、あのままではチエちゃんが「将」に飲み込まれるからだ。
「くうーかんわーんきょーく!!」
しかし、気にせずに何か叫びながら、肉の海に突っ込んでいくチエちゃん。
そして肉の海に槍が触れたとき、チエちゃんは咆哮した。
何故かナナも一緒に叫んだ。
「「でぃ○いでぃんぐ・ど○いば――!!」」
因みに、地球のCPでは何故かマサトが一緒に叫んだんだそうな。
チエちゃんの叫びと同時に槍は三回程光ったかと思うと、肉の海に打ち込まれた。
そしてそこから、黒い球が急速に広がっていった。
「ナナ、えーっと今のはマサカ勇者なロボのアレ?」
「うん、そーだよ。せっかく同じ技使えるんだもん。必殺技は叫んでナンボだよ!」
「そうなのじゃ! こういうのは勢いとノリじゃ。気持ちよく打ち込んだほうが効果抜群なのじゃ!」
大仕事終えて気持ち良さそうなチエちゃんが俺達の下へ帰ってくる。
他の悪魔な方々も、さーちゃん以外は首を傾げながらだけど帰ってきた。
「やっぱり日本のスパロボはイイわぁ」
あれ、さーちゃんじゃなくてクロエさんが表に出ているよ。
「もうチエちゃんの悪乗りには慣れたけど、実にすごい眺めだな。で、チエちゃんよぉ。あの中に攻めに行くのかい?」
「そうじゃ、グレイ殿。オヌシはどうするのじゃ? 出来れば、こちらの防御をお願いしたいのじゃが」
グレイさんはバケモノを完全に飲み込んだ漆黒の球を見て、ビックリしたようにチエちゃんに話す。
「もう俺が相手出来そうなヤツじゃないから、この場所の防衛にまわるよ。ここは必ず守るから、絶対勝って生きて帰ってこいよ!」
「うむ、約束じゃ! 無事帰ってきた暁には、皆に褒美を出すのじゃ! そうじゃな、お年玉を期待して待つのじゃ!!」
今年の年末は大変だけど、年始は楽しくなりそうだ。
◆ ◇ ◆ ◇
「では、バケモノ退治並びに兄上を引っこ抜き部隊の選抜をするのじゃ!」
チエちゃんは皆の顔を見ながら話す。
「先ずは、コウタ殿。オヌシと魔剣がワシらの勝利のカギじゃ。存分に戦うのじゃ!」
「うん、任せてよ!」
「コウ兄ぃ、突撃はナシだよ!」
「おにーちゃん、ふぁいとぉ!」
俺は、胸の中に熱いものを感じる。
俺にはナナやリタちゃん、他にも沢山守りたい人々が居る。
最初、リタちゃんを救った時から冒険は始まった。
そしてリタちゃんの母星で邪神との対決が迫っている。
「ナナ、リタちゃん。俺は必ずキミ達や他の人を守り、キミ達のところに帰るからね」
俺は「両手の花」2人の頭を撫で、2人に誓った。
「うん!」
「おーにーちゃん、かっこいい!」
「おい、そこの2人。オヌシらも出陣じゃ。ここまでの冒険でナナ殿、リタ殿は強く美しく育ったのじゃ! 今時の女子は守られるだけでは無いのじゃ! コウタ殿と並んで共に守りあうのじゃ!」
「うん! ボク、がんばるよー!」
「わたしも がんばるの! ばけもの なんて どっかーんだよ!」
チエちゃんの指名で2人の妹達は仲良く笑いあう。
その笑みは、俺に百、いや千人力を与えてくれる。
「さて、次は……。はいはいなのじゃ。母様、お願いなのじゃ。本当は身重な母様に頼むのが嫌なのじゃが、戦力的にも来てくれた方がありがたいし、呼ばねば怒って後から拗ねるのじゃろ。それで晩御飯抜きとかされる方が大変なのじゃ!」
「もー、チエちゃんったらぁ。私、そんなに呼んで欲しそうな顔してたの?」
皆の間に笑いが広がる。
本当は身重なマユ姉ぇにムリはさせたくない。
けど、戦力的には最大火力だし、置いていくほうが後から荒れそうだものね。
「尼僧のお2人、今度も貧乏クジじゃが頼むのじゃ。防御、火力共に頼りになるのじゃ!」
「チエさんに、そう言われるのはくすぐったいです。チエさんの迷宮で酷い目に合わされましたからね」
「チエお姉様、もうあんな事は勘弁ですぅ」
カレンさん、シンミョウさんは以前の迷宮ネタでチエちゃんを弄る。
「もうそんな事は考えぬのじゃ。まあ、帰った後のお風呂は楽しみじゃがな」
「えー、もうエッチなんですからぁ」
「シンミョウ殿、オヌシはなかなかイイモノを持って居るのじゃ。カレン殿も均整が取れておるのじゃ。イイデハナイカなのじゃ!」
更に笑いが広がる俺達だ。
「火力支援、タクト殿、出番じゃ! オヌシの火力で敵を全て薙ぎ払うのじゃ!」
「姉さん、俺今まで姉御や姉さんに教えてもらった事をここで全部出します!」
「タクト君、私の分までお願いね。でも怪我しないで帰ってきてね」
アヤメさんはタクト君を心配して話す。
「姉御、俺この冒険が終わったら……」
「タクト殿、いらぬフラグはそこまでじゃ! それ以上は帰ってから言うのじゃぞ。お約束な台詞を今言って死なれたらワシ困るのじゃ!」
また周囲が笑いに包まれる。
アヤメさんとタクト君は2人とも真っ赤になる。
もう何を言いたいのか、全員分かっているものね。
「タクや、アヤメさんを泣かせるなよ。こんなイイ姉さん女房ナカナカいないぞ」
「そうそう、アヤメお姉ちゃんは、わたし達に任せてね」
「もう、マヤちゃんにカズミちゃんたらぁ!」
アヤメさん、ますます真っ赤になる。
どうやら小姑問題はタクト君には発生しないようだね。
「コトミ殿、オヌシは敵の弱点探知、及び兄上の居場所の探査をお願いするのじゃ。くれぐれもムリに戦闘に参加せぬで良いのじゃ!」
「はい、りょーかいです。ナナちゃん、リタちゃん、カレンさん、シンミョウちゃん、宜しくね。後、先輩はよーく考えて動いてくださいね」
コトミちゃん、その「眼」と感知能力は悪魔族をも上回る。
確かに純粋戦力としてはアヤメさん級だけど、弱点を的確に突ければ作戦は優位になる。
特に今回は、「将」を助ける可能性がある以上、肉の海から「将」を探し出す役目が重要だ。
「うん、これだけ皆に釘さされたら、さすがに俺も無茶はしないよ」
「ナナちゃん、リタちゃん。お兄ちゃんをしっかり抑えていてね。これでも危ないんだもの」
「うん!」
コトミちゃんに掛かったら、俺はすっかりオモチャだよね。
彼女とは男女別にして、ふざけ合えるイイ友達だよ。
「後は、父上、『槍』、『調』ちゃん、カズヤ殿、お願いするのじゃ。『朧』に『草』は、この場所を死守するのじゃ!」
「さあ、やっと暴れられるぞ!」
「オヤジ、今度は共に戦えるのが嬉しいぞ!」
「お父様、一応兄上を助けるのですから、そこはお忘れなく」
「では、ワシを加えた13人で邪神をぶっ飛ばして、兄上引っこ抜いてくるのじゃ! すまぬが後の事は御爺様、御婆様頼むのじゃ」
「おう、まかせておけよ」
「皆、帰ったら美味しいご飯作るわね」
「おー!」
これが最終局面、冒険の仕上げだ。
やってやるぞぉ!!!!
とうとう最終決戦が始まります。
長い物語も最終局面、激しいバトルがこれから行われます。
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