第266話 康太の魔神退治:その57「強襲 その10!:蜘蛛美少女の降臨」
「恥かしいから、ちょっと男の人は後ろ向いててね。いっくよー! へんしーん!!」
私は、急いで戦闘ジャージを脱いで下着姿になって、胸元のペンダントを握った。
そして唱えた、変身呪文を!
「あらくね、くねくね、ぴっぴかりん!」
実に恥かしい変身呪文よね。
こんなのを設定したチエ姉さんを少し恨むよぉ!
ぴかー!
私の体は魔法少女モノのコ達の様に光に包まれる。
そして横腹から脚が2対飛び出す。
また、お尻のほうで何か生えてくる感触がある。
光が消えた後の、私の姿は以前とは随分と違う。
前は仰臥位になった状態で這い回る姿だったけど、今回は普通の人間に蜘蛛の脚と小さいけど蜘蛛のお尻がくっついた感じだ。
ちゃんとスポーツウエアタイプのスポーツブラとブルマ穿いていたから、胸もお尻も完全ガード!
「あれ、いっぱい見えるの?」
私は視覚が拡張されたのを感じだ。
「ルナちゃん、かっこいい! 蜘蛛女さんだぁ!」
「うん、まるでライダーさんみたい!」
「え! ルナさん! それが蜘蛛女なんですか?」
「うぅ――ん」
最後、森川君が気絶しているけど、他の皆はおおむね好印象っぽい。
鏡を見た私も、自分がカッコ可愛いのを見て安心。
顔周りは複眼がこめかみ周辺に増えただけで、あんまり変化無い。
口元はアクセントっぽく八重歯っぽい牙がチラリ。
お腹周りは腹筋がしっかり見えて、シックスパット。
手足もすっかり細マッチョ。
私、ここまで筋肉質じゃないんだけどねぇ。
胸のサイズは、……。
まあ大きくなってもブラが窮屈になるだけだから、イイか。
「よーし、外の敵全部簀巻きにしてくるね!」
「では、任せたよ、ルナ君!」
「いくね、ぐっちゃん!」
「ぐぅぅ!」
巨大化したぐっちゃんと一緒に私は飛び出した!
◆ ◇ ◆ ◇
「どこだ! 一体どこにいるんだ!」
マユ母さんの家の周囲に集まる群衆。
これ、10人じゃ下らないよね。
「ふぅーっと」
私は、ふぅと息を吐くように舌先から糸を吐く。
その糸は、私を探そうとしている群集の中の1人の男に巻き付く。
「よいっしょ!」
そして糸を絡ませて動けなくした男を背負い投げ風に引っ張り上げ、電柱にぶら下げた。
「あ、あそこだ!」
群集は私の方を見る。
しかし、次の瞬間、金色の巨大縫いぐるみに蹴散らかされる。
「ぐるぅぅぅぅ!」
ぐっちゃんは3本の首から様々なビームを撃ちだす。
ギザギザっぽいビームを浴びた人は、電撃を受けたように痺れて倒れる。
ワッカっぽいビームを受けた人は空中に浮かんで身動きが取れない。
火の玉っぽいビームを受けた人は派手に吹っ飛ぶ。
「あれ、火の玉って不味くない?」
「ぐるぅ?」
よく見ると火の玉を受け焦げた人から下位悪魔が這いずり出てすぐに滅んでいる。
焦げた人もピクピクしているから一応大丈夫っぽい。
「少しは手加減してあげてね、ぐっちゃん」
「ぐるぅぅ!」
私は、電信柱や周囲の家屋の屋上を元祖蜘蛛男っぽく飛び回り、悪魔憑きの群集をどんどん無力化していった。
◆ ◇ ◆ ◇
「さあ、これでフィニッシュ!」
私は最後の1人を簀巻きにして近くのビルの屋上から吊るした。
「後は、マユ母さん達が帰ってきてから除霊だね」
そう私が一瞬油断した時に、細い針らしいものが私の太ももに刺さった。
「い、痛いよぉ」
私は急いで場所を移るべく糸を吐きながらビルの谷間を高速移動。
隙を見て太ももに刺さっている針を抜いた。
「毒無いよね?」
刺さっていた針は、太さ数mm、長さが20cmくらい。
傷口は綺麗で少し血が滲んでいる程度。
痺れたり動悸がするとかも無いから、少なくとも即効性の毒は針には塗られていないっぽい。
「これ、狙撃だよね。足で良かったかも。アレ、頭に当っていたら即死よね」
私は一旦マユ母さんの家から離れた方向へ逃げた。
「これ、引き離されているんだとしたら、アリサちゃんとかが危ないよ。ぐっちゃん、聞こえる?」
私は、ぐっちゃんへ念話を飛ばした。
私だってこのくらいの術は覚えたもん。
〝ぐぅ?〟
どうやら、ぐっちゃんが狙撃手と今戦闘中らしい。
元が「縫いぐるみ」なので、針で刺されてもへっちゃらな、ぐっちゃん。
「じゃあ、狙撃手もう少し引きつけて置いてね。私が後ろからそいつ簀巻きにするから」
〝ぐぅ!〟
さて、作戦考えようかな。
私はチエ姉さんが作ったイルミネーターを操作した。
「CP、こちらルナ。現在、大半の敵は撃破するも、狙撃手と戦闘中。ぐっちゃんが足止めしているから、対処したいので情報頂戴」
「こちらCP、無事でよかった。こちらにも最初狙撃が来て大変だったよ。一応皆無事。マリちゃん、大活躍だよ。じゃあ、地形図等情報を送るね」
マサトお兄さんは、私を安心させるように落ち着いた声でオペレートしてくれる。
向こうはショウタ君の守護精霊、マリちゃんが守ってくれたらしい。
イルミネーターの画面に周囲の建物や、ぐっちゃんの位置、及び狙撃手の推定位置が出てくる。
「さあ、こっそりとやるよ!」
◆ ◇ ◆ ◇
「ぐるる?」
狙撃手、狙撃に特化した下位悪魔は、頭を捻っていた。
目の前に鎮座する毛むくじゃらな竜もどき。
いくら弾を撃ち込もうと気にしていない。
コチラにむけて挑発するように叫んでいる。
「ぐる、ぐるぅ」
このままでは埒があかない。
悪魔は、針サイズでは無く杭クラスの砲撃をしようと、砲身である右腕を変形させ始めた。
「チェックメイト!」
「ぐ?」
悪魔は後から声が聞こえた時、振り向こうとした。
しかし、時既に遅しであった。
悪魔の胴体、そして砲身は妙に丈夫な糸に巻きつかれ身動きが出来なくなった。
「じゃー、ぐっちゃん手加減無しでどーぞ!」
目の前に竜もどきが見えた時、悪魔は恐怖した。
何処か間抜け風だったはずの竜の3対の眼が真っ赤になっているのに。
「ぐぅぅぅぅぅ!!」
3つの口が大きく開き、そこに電光が走る。
そして閃光が輝き、次の瞬間悪魔は世界から消滅した。
「ぐぅぅぅ!」
「ぐっちゃん、えらい!」
ルナちゃん、蜘蛛美少女に変身して、ぐどら縫いぐるみの「ぐっちゃん」と大活躍。
悪魔軍の地球残存兵力を打ち砕きました。
しかし、変身呪文や変身パターン。
絶対、チエちゃん楽しんで作ったに違いないです。
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