第265話 康太の魔神退治:その56「強襲 その9!:その頃地球では」
「『朧』さんより入電、リタちゃん無事回収に成功!」
私の報告で、マユ母さんの家のリビングに展開された戦闘指揮所に待機していた皆から歓声があがった。
「ぃやったー!!」
「流石、コウタ兄ちゃん達だぁ!」
「良かったね、アリサちゃん」
「うん、おねえちゃん よかったぁ」
これで私も一安心、リタちゃんは私にとっても妹同然の可愛い子。
皆の役に立てたのがとっても嬉しいの。
「チエ君から、戦闘続行の指令が来ている。状況は随時変わるから、戦闘指揮の気は抜かないようにね」
「はい!」
教授先生から指示が来る。
私は、画面から一切眼を離さず、皆の声に耳を傾ける。
私の仕事は、戦術オペレート結果のアナウンス。
チエ姉さんによると女性の声の方が騒音環境でも聞き取りやすいから、私がその役に抜擢されている。
最近、私は学校でも生徒会関係の校内放送を担当しているし、マイクを使うのには慣れている。
けど、一歩間違うと誰かが危険な目に合う戦闘指揮でアナウンスをするのが大変だ。
私のミスで誰かが、ナナちゃんやマユお母さんに何かあったらと思うと心配でたまらない。
「ルナちゃん、大丈夫。もう勝ち戦モードだからゆっくり確実にしたらイイよ」
横に座って多くのディスプレイ画面やキーボード等を駆使しているマサトお兄さん。
コウ兄ちゃんのお友達で、どうもコトミお姉ちゃんの彼氏らしい人。
自分も忙しいのに、優しい声で私を励ましてくれた。
どうも私の手が震えているのが気になったっぽい。
「マサトお兄さん、ありがとうございます。私、リタちゃんに会うまで頑張ります!」
「うん、その粋だよ。さあ、僕も踏ん張らなきゃね」
ココは、コウ兄ちゃん、正明お父さん達優しくて強い男の人で一杯。
そしてナナちゃん、チエ姉さん、コトミお姉ちゃん、マユお母さん達のように、抱きしめてくれる女の人も一杯。
ここの皆のおかげで私は、あの暗い闇の中から助け出された。
そして、一時期疎遠になっていた両親とも毎日笑って暮らしている。
感謝しても仕切れない事ばかりだ。
でもリタちゃん救出に集まった皆に話を聞くと、それぞれ大変な目にあったけど、コウ兄ちゃん達の活躍で助かったらしい。
カオリお姉ちゃんとケイコお姉ちゃんは、悪魔に唆されてあと少しで命に係っていたらしい。
内藤のお爺ちゃんとカズヤ先輩も悪魔によって家族を失い、カズヤ先輩自身も一度は死んだのだとか。
コトミお姉ちゃんは教授先生に助けてもらったし、黒田のおじさんもチエ姉さんに心身ともに助けてもらった。
タク兄ちゃんも同じくチエ姉さんには一生返せない恩義があるって言っている。
皆、助けてもらった恩義をコウ兄ちゃん達に返すだけでなく、他の人を助けてくれている。
マユお母さんによると、幸せは「おすそ分け」するものだって。
自分だけで留めないで、また別の人を助けていけばいいって。
そうすれば「皆幸せになれるのじゃ!」ってチエ姉さんも言っている。
こんな幸せな空間を守る為に、私頑張らなきゃ!
◆ ◇ ◆ ◇
「あ、こりゃちょっと不味いぞ。中村さん、寺尾さん、急いで所轄とSAT辺りに救援をお願いします」
もう大丈夫と皆安心していた時、ナナちゃんの伯父さん、勝也オジさんが急に叫んだ。
警察関係の2人に連絡をするなんてナニがあったの?
「どうやら敵さん、こちらのベース叩きをするつもりだぞ」
そう言って、勝也オジさんはお爺ちゃんから借りたらしい日本刀を持ち出した。
あ! 私にも分かったよ、これ悪魔の気配だ!
「これは下位悪魔ね。私にも分かるわ」
「うん、アタシにもね。だって、アタシにくっ付いていたし」
カオリお姉ちゃんやケイコお姉ちゃんも気が付いたっぽい。
「ふむ、では私の出番ですかね?」
教授先生も日本刀を準備しだした。
「私も戦闘準備しますね」
フランツさんも魔法が掛かったらしい短剣を準備しだした。
「こいつは多勢だぞ。10人以上の下位悪魔に憑依された人間達だ。今、浄化系の呪文使えるのはココにいないし、無力化するのに切り払うわけにもいかねー」
勝也オジさんは、困った様子。
確かに人間を日本刀で切っちゃうのは不味い、でも放置していたら、私達だけでなくショウタ君やアリサちゃんも危険。
「これがチエ姉さんの心配だったのね」
出陣前にチエ姉さんは、私にコソっと話してくれていた。
「最悪の場合、兄上はココを襲う可能性がある。その場合の最大戦力はルナ殿じゃ。もしもの際には、コレを使うのじゃ。すでに浄化済みで今のルナ殿なら存分に使いこなせるのじゃ! 皆の事を頼むのじゃ!」
私は、胸元にあるチエ姉さんから貰ったペンダントを服の上から握った。
「カオリお姉ちゃん、ぐっちゃんを攻撃に、ショウタ君はマリちゃんを拠点防衛に配置お願いします。外の敵は私がなんとかします!」
「ルナ君、一体ナニを言うんだい?」
教授先生はびっくりして私を見た。
「チエ姉さんから秘策を預かっています。私、変身したら強いんですよ」
私は教授先生にそう話してウインクした。
この場所を守るのは私の仕事、借りた恩を返すのは今だもん!
「恥かしいから、ちょっと男の人は後ろ向いててね。いっくよー! へんしーん!!」
地球の指令所を襲う悪魔達、そこに立ち上がる乙女。
秘密兵器、ルナちゃんの登場、蜘蛛少女、再びです。
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