第263話 康太の魔神退治:その54「強襲 その7!:混沌の影」
秋山老夫婦が魔神将分身体と戦闘している頃、別働隊が城内の地下、厨房がある部屋へ向かっていた。
「ルーペット様、厨房はこちらですか?」
部隊の先頭を歩く「朧」は、後を歩く城内を良く知るルーペットに確認をする。
「朧」自身、一応事前に見取り図は確認しているし、今もイルミネーターによって城内見取り図と現在位置が表示されている。
しかし、実際に城内で暮らしている人に確認するのが一番間違いないからだ。
「そうだ、この曲がり角の先に地下に降りる階段があるのだが……」
ルーペットはまだ完全にコウタ達を信用し切れていないものの、城内全員を助けに行くという彼らの言葉を信じて、リタ姫の元を離れて再び城内に舞い戻った。
しかし、彼らが廊下を曲がったところ、彼らの目前に上位悪魔の集団が屯していた。
「ここは『将』様の命により通行止めだ。うん? お前らエルフでは無いな。何ヤツだ!」
上位悪魔共はアヤメや朧達を見て、戦闘態勢に入る。
「あらぁ、困りましたわぁ。わたくし、せっかく異世界のお城を堪能しておりましたのに、このようなところで無粋な殿方にジャマされるなんて」
クロエは、朧よりも前に歩み出て愚痴る。
「なんだ、オンナ? オマエ、殺されたいのか?」
上位悪魔は、手に持つ槍をクロエに向けた。
「そんな訳あるはず無いですわ。さあ、『調』ちゃん、出番ですわ!」
「はい、お姉様!」
そしてクロエは魔神将へと合体変身して上位悪魔に襲い掛かった。
◆ ◇ ◆ ◇
「よし、作戦成功じゃ! 先王陛下及び城内下働きの方々を全員回収に成功したのじゃ! 今から脱出支援に砲撃再開じゃ!」
チエちゃんの掛声で砲撃が再開された。
出番がなかったススムさん、喜々としてMk.19で砲撃を再開したのが、神殿外、城へと続く大通りにいる俺達にも見える。
そして、チエちゃんの分身が気持ち良さそうにM2を射撃して、時々飛んでくる下位悪魔やらインプを撃墜している。
いうまでも無く、迫撃砲もどんどん撃っている。
チエちゃん、攻撃に魔法を使わなくていいから、砲撃手として多数分身しちゃっている。
「皆の衆、御爺様達が大金星じゃ。誰一人怪我せずに兄上の分身体を撃破したのじゃ!」
おお、爺ちゃん婆ちゃん、すっげー!
「これでまた一つ兄上を削ったのじゃ! また王族は全てこちらの手の中じゃ。もうチェックメイトなのじゃ!」
「そうまで簡単なら良いけど、そこまで甘くないよね。軍師とやらの動きが気になるし」
「そうよねぇ。ここでお兄さんおびき出してボコる?」
「ボクはそれにさんせー!」
「うん、わたしも」
「そうだな、ワシもここいらで暴れたいぞ!」
今回の俺達のチームは、マユ姉ぇ、チエちゃん(本体)、ナナ、リタちゃん、王様。
完全に殴りあうパーティだ。
「では、父上。ご登場なのじゃ!」
「おうよ!」
そして別位相空間から王様が出てきた。
「こら、バカ息子! オマエ、本当にバカか? バカの顔見に来たから顔出せよ!」
王様、最初から喧嘩腰で「将」を呼ぶ。
〝オ、オヤジ!!! なんで、オヤジがココに!?〟
「そんなの、チエに話を聞いてに決まっているだろ?」
〝ど、どうして!? オヤジはチエの抹殺命令を出していたんだろ?〟
「そんなの昔の話だ! それよりはオマエの今の反逆の方が問題だろ?」
すっかりうろたえ混乱している「将」。
準備をしてから下剋上するつもりの相手がいきなり、それも別件で戦闘中に来たら混乱しないはずは無い。
俺でもパニックしちゃうよね。
「さあ、こっちにコイや! 肉体言語で話そうか!」
あー、王様も脳筋かも。
まだ聞き分けあるのと、今回はおびき寄せる意味があるから、イイ手なんだけどね。
◆ ◇ ◆ ◇
「どうしよう、どうしよう」
すっかりうろたえ、玉座の周囲を歩き回る「将」。
城内はチエ達からの砲撃で大きくゆれ、崩れる部屋すら発生し始めていた。
火災が発生したら、もうお終いである。
「『将』様、落ち着いてくださいませ」
ダークエルフ、アルラトは「将」に問いかける。
「これが落ち着いていられるものか。人質は全て奪われ、分身体は倒され、オヤジまで来ちまった。もうお終いだぁ」
しかし、「将」は頭を抱えてしゃがみ込む。
「大丈夫です。まだ策はございます。秘宝ですが、本来の起動方法ではありませんが、動かして無限の力を使う方法がございます」
「それはマコトか?」
「はい、ただし『将』様にはお願いする事がありまして……」
「将」は、アルラトの提案に希望を持ち顔を上げた。
しかし、その時「将」は気がつかなかった。
アルラトの笑みが安堵を与える微笑では無く、自分を弄ぶ嘲笑である事を。
◆ ◇ ◆ ◇
「オヤジ、出てきてやったぞ!」
破壊され煙に包まれた城門から複数の影が飛び出してきた。
それは、魔神将「将」と配下の上位悪魔達。
後、耳がとても長く色が黒いエルフ、俗に言うダークエルフの青年が一緒にいる。
「リタちゃん、あのダークエルフ誰か知らない?」
「わたし、だーくのひと、だれもしらないの。いまは、べつのさとに くらしているってきいたの」
ふむ、ダーク種とエルフ種はあまり仲が良くないのが普通、リタちゃんが知らないのを見るに、少なくともリタちゃんがここに居た時城内で働いていた人物ではなさそうだ。
もしかしたら、彼が軍師かな?
気になった俺は視力を魔力強化して、彼を見た。
そして恐怖した。
あの、底のない真っ黒い嘲笑を再び見たから。
「チエちゃん、マユ姉ぇ。あのダークエルフ、……」
「そうじゃ、そういう事じゃったのか」
「あらまあ、またなのね」
「ボクも分かったよ。もう一回アイツと戦うの?」
「おにいちゃんたち、どうしたの? あ、あのだーくさん、えるふじゃないの!」
「ほう、アヤツが黒幕か。オマエ達アイツを知っているのか?」
王様を除く俺達は恐怖と冷や汗をかく。
再び「這い寄る混沌」と対決する事になるなんて。
「はい、王様。アレはこの宇宙の外側から来た邪神、『旧支配者』の一柱にして『外なる神』の僕、『這い寄る混沌』、その顕現の1人でしょう」
俺は心の中で「トリガー」を強く連想して起動させた。
ここが最終決戦ということに気がついたから。
今回も裏側には、這い寄る混沌の存在あり。
コウタ達は、邪神にどう対処するのか。
クライマックスに向けて、激しくなる戦闘!
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