第261話 康太の魔神退治:その52「強襲 その5!:怪しい軍師」
「という事で、教授戦術支援よろしくなのじゃ!」
「了解しました。しかし、星の海を越えてのオペレーション、私も腕がなります」
「コウタ、くれぐれも無茶しないでね」
「うん、俺、誰も泣かしたくないからね。マサトも色々お願いね」
「ナナちゃん、リタちゃんをお願いね」
「うん、りょーかいだよ」
「るなおねーちゃん、かえったら またあそぼうね!」
「リタちゃん、待ってるよ!」
俺達は魔剣によるチャットを終えるとイルミネーターを通して各方面に連絡をした。
チエちゃんの作ったイルミネーターに付属のゲート式通信機、何光年も離れている地球のCPとも数秒のラグ程度で通信が出来るのはスゴイ。
「じゃあ、また俺達が侵入するんだな」
「そうじゃ、今度は『草』殿が加入なのじゃ。グレイ殿よろしくなのじゃ!」
今回はススムさんは屋上砲台に残って、代わりに「草」さんが潜入してくれる。
「ぐれいおじちゃん、『かべぬけ』が こうかばつぐん だよ!」
「では、姫様の仰せのままに」
グレイさんは、苦笑いしながらリタちゃんの助言に朧さん風にチョっとふざけ気味に答えた。
それを受けたリタちゃんもニッコリだ。
「さて、いよいよワシの出番じゃぞ!」
「父上、言っておくがワシらは囮というのを忘れずにじゃ。あまり兄上を追い詰めすぎると困るのじゃ。うかつに攻めすぎて人質の有用性や秘宝の起動を思いつかれたら大変なのじゃ。適度に良い勝負に見せるのじゃ」
「それ、えらく面倒くさいんじゃないか、チエよ?」
「そこが作戦なのじゃ、父上! うまくいくと効果抜群でスッキリ楽しいのじゃ!」
「面白いのなら、しょうがないか」
チエちゃんは魔神王にコンコンと説明をしている。
王様もそれを素直に聞いているのは、ちょっと不思議な眺めだね。
「じゃあ、作戦開始なのじゃ!」
「おー!」
◆ ◇ ◆ ◇
「『将』様、落ち着いてくださいませ」
「これが落ち着いていられるかよ! 人質が取り返されるは、コケにされるは」
「将」は、涙と鼻水が止まらない顔で荒れる。
「慌てずとも、今だこちらには人質は居ります。塔の先王陛下、閉じ込めている城内の側使え達、そして都市内のエルフ住民。これらをうまく使えば、どうとでもなります。お勧めとしましては、先王陛下に秘宝を起動してもらうことでしょうか」
「ほう、そういえばそうだな。やはりアルラト、オマエは賢いな」
「いえいえでございます」
「将」は助言をした漆黒の肌のダークエルフを賞賛した。
「この星制圧の折、オマエの言う通りにしたのが正解だった。住民を皆殺しにせずに生殺しにした方が、より大量の精神エネルギーが得られると。それに秘宝のありかや使い方も分かった」
「それは私にも利がございましたからです。我ら闇族は、過去の族長が魔王となって討たれた後、エルフ共から迫害を受けて参りました。その復讐でございますから」
ダークエルフ、アルラトはニヤリと笑う。
「そうかそうか。ではオレが宇宙を支配した時、この星はオマエに与えようぞ。好きにするが良い!」
「『将』様、ありがたき幸せにございます」
アリラトは頭を下げ、「将」に見えない顔は嘲笑じみたものをしていた。
「これで、また一手……」
◆ ◇ ◆ ◇
「では、塔を避けて迫撃砲で連続砲撃じゃ! 今度は通常榴弾を打ち込むのじゃ。朧よ、ワシの弾に当るではないぞ。ススム殿、城門をMk.19で砲撃じゃ。飛行部隊以外を足止めじゃ」
「御意!」
「了解!」
さて、「将」は如何動く?
ここで連絡なければ城を崩して生き埋めにするも良い。
幸い、側使えや調理員がいるであろう場所は丈夫な地下室、火災によるガスさえ発生しなければ、後からゆっくりと助け出せば良い。
それまでに人質として使ってくれたら、別の方針に変えるだけ。
向こうに主導権を渡さねば、こちらの思い通りに状況は動く。
場をかき混ぜるだけかき混ぜる事で、向こうのミスを誘う。
アグロデッキによる速攻でコントロールデッキをあっぷあっぷさせるのと同じだね。
しゅぽん!
潜入部隊の再出動と共に、援護として軽い発射音と共に砲弾が幾発も城内へ撃ち込まれた。
そして数箇所で爆音が響き渡り、城の一部が崩れだす。
しばらくは砲撃が気持ちよく通っていたが、突然チエちゃんが叫んだ。
「む! コウタ殿、シンミョウ殿、ナナ殿。防御!」
オレはチエちゃんの掛声で、神殿の前面に多重次元断層を作った。
シンミョウさんもいつも張っている通常の防御結界の前面に追加シールドを張り、ナナもタイル九十九神を大量展開した。
皆が防御をした直後、城のバルコニーで何かが光った気がした。
そしてその光は膨れ上がって、俺達を襲った!
びかぁぁぁ!
「ふぅぅ、危なかったよぉ」
「うん! 危機一髪だね、コウ兄ぃ」
「怖かったですぅ」
今のは「将」からの大規模魔力ビーム砲撃?
チエちゃんが早く警告をしてくれたおかげで、その一撃は防げた。
〝ほう。今のを防ぐとはナカナカやりおるわい。オマエら、そのまま砲撃を続けて良いのか? こちらにはまだ人質がいるぞ。 姫、オマエにはまだ肉親が残っているとしたら、どうかな? それに側使えに、この地に住む民草。それを無視できるオマエらではあるまい?〟
ほう、人質を使う作戦に出たのね。
さて、こちらの潜入部隊は、……。
もうちょっと時間がかかりそうだね。
では、時間稼ぎをするのが手ですね。
「チエちゃん、対応宜しく!」
「了解なのじゃ! 兄上、いきなり砲撃するのはお互い様として、人質を使ってワシらに何を望むのじゃ? 話によれば聞かん事も無いのじゃが?」
チエちゃんは、分身に話をさせながら本体で手持ちのタブレットに俺達向けの説明を映し出した。
用は、時間稼ぎをしている間に作戦の準備をしておけ、って事だけど。
〝そうだな、まずは攻撃の中止だな。これ以上砲撃をされては城が保たん。〟
「その件に関しては了解したのじゃ。会談中はお互いに攻撃中止じゃぞ」
さりげなく「将」からの攻撃も中止させるチエちゃん。
流石である。
〝では、次だ。チエ、オマエはオレの仲間にならんか。オマエ程の知恵者は同族には居らぬ。今までの事は水に流してやろう。共に父上や母上と戦おうぞ!〟
「ワシの事を褒めてくれておるのは、感謝しておくのじゃ。それとワシが父上達と不仲だったという事は知って居るのじゃな?」
あれ、今回転送門を使ったのを、魔神王と俺達が組んでいる事に気がついていないぞ。
「騎」辺りからの古い情報を元に話していて、現在の状況を知らないんだ。
「我が息子ながら『将』はアホか? 転送門を堂々と使った時点で気がつかぬのか?」
「そうですね。これ、王様には失礼になってしまうのかも知れませんが、もしかしたら『将』って脳筋ですか? 今までの策って実はご本人が考えていないのでは?」
思わず息子の不出来を愚痴る王様に、俺は聞いてみる。
なお、王様は城から見えないように、別位相空間からちょっとだけ首を出して覗いている状態だ。
「そういえば、『将』は最近賢い参謀を見つけたと言っていた様な」
「納得です。では、今回も人質を使う事までは軍師が助言していて、そこから先は自分ででしょうか?」
でもそれはそれで変かも。
軍師は「将」の事をワザとフォローしていない事になる。
「チエちゃん、これって変だよね。もしかして『将』の軍師って何か裏があって『将』に付いている、利用しているのじゃない?」
俺がチエちゃんに聞くと、うんうんと頷いてタブレットに「ワシもそう思う」と書いた。
〝ああ、詳しい事は『騎』に聞いているぞ。オマエは俺の配下を殺した事もな。そこについては、もう過去の話し。どうせあの頃作った配下は大したことないヤツらばかりだったしな〟
「そうか、そういう事じゃな。まあ、あの時は事情があって、兄上の部下を裏切ったのじゃ」
どうやら「将」の裏側には怪しい軍師が居た模様。
黒い怪しいヒトって、……ね。
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