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功刀 康太の遺跡探訪、時々お祓い ~女難あふれる退魔伝~  作者: GOM
第五部 功刀康太の女難たっぷりな退魔伝
259/272

第259話 康太の魔神退治:その50「強襲 その3!:お転婆リタ姫様」

「『(おぼろ)』から入電じゃ。リタ殿、無事に回収成功じゃ!」

「やったー!」


 俺達は歓喜の声を上げた。

 イルミネーターからもリタちゃん回収の吉報が入っている。

 迫撃砲を撃ちつつ、爆笑しながらチエちゃんは報告してくれる。


「おう、面白い事になっておるのじゃ。リタ殿、迎えを待ちきれずに邪魔者倒しながら壁抜きで最短距離で『鏡の間』まで突撃してきたのじゃと。開口一番『みんな助けに来るの遅いんだもん!』だそうな」


 俺とナナは見合って爆笑してしまった。


「ホントに、リタちゃんは『遅っそーい!』って言ったんだ」

「ここまで予想通りだと笑っちゃうよね、コウ兄ぃ。でもリタちゃん壁抜きなんで方法誰に教えてもらったのかな?」

「ワシとコトミ殿で、以前リタ殿に罠を無視して最短で進む方法を教えた事があるのじゃが、それを今回実践したのじゃな」


 あらあら、とても姫様がやりそうな所業には思えないよ。


「ねえ、マユ姉ぇ。もうリタちゃん、お姫様やるの難しくない? ちょっと過激すぎるよ」

「……ま、まあ、そこは今後の課題よね。今時のお姫様は待っているだけじゃないから、そこは現代的という事にしましょうか」


 マユ姉ぇも、ちょっと動揺気味。

 どこの世界に自分の居城で壁抜きしながら最短距離で暴走する姫様いるのだろうか。


「そろそろ窓をぶち破って、『朧』が飛び出してくるのじゃ! 転移できぬから皆を抱えて飛んでくるはずじゃ。援護のためにこっちから支援砲撃を継続するのじゃ! そうそう『(ランス)』や、M2(重機関銃)Mk.(自動グレネード)19(ランチャー)の銃座も準備するのじゃ!」

「お、おう。しかしチエや。悪魔使いが荒くねーか?」


 チエちゃん、すっかり重火器に魅せられたのか、自分の所有異空間(ポケット)からどんどん武器を取り出してくる。

 もちろん某青タヌキのモノマネCV()付でね。


 そして、それをもくもくと設営する「槍」さん。

 こりゃグレイさん、後から困るパターンじゃないのかな?

 どうやって消費した弾薬をごまかすんだろ?


 どーん!


 城の上層にある小さな窓が爆音とともに吹き飛ぶのが見えた。


「C4とリタ殿の複合爆発じゃな。いかな構造強化呪文で城壁を硬くしておっても、アレでは持つまいて」


 チエちゃんは、嬉しそうな顔で迫撃砲弾をどんどん撃ち込む。

 こりゃ、シュワちゃん主演映画のノリだよ。

 神殿屋上には多くの現代兵器が並べられており、砲台と化していた。


 煙が立ち込める窓から何かがこちらに高速で飛んできているのが見えた。

 そして、それがヒトの形をしているのが確認できたと思ったら、優雅に神殿屋上に着地した。


「皆様、お待たせ致しました。無事リタ様回収に成功しました」


 そして朧さんは、愛用のサロン付き八門遁甲結界を開く。


「おかーさん! おねーちゃん!」


 そこから戦闘ジャージ姿のリタちゃんが飛び出してきた。


「リタちゃん!」


 マユ姉ぇとナナは、しっかりとリタちゃんを抱きしめた。


「わたし、わたし、こわかったよぉ!」

「うんうん、そうよね。でも良く頑張ったわ。偉いわね」

「リタちゃん、すっごいね。壁抜き姫様なんてリタちゃんだけだもん!」


 ナナ、少々混乱気味なのか、とんでもない事言っているけど、まあ良いか。

 俺達は泣き笑いしながら強く抱き合う親子を眺めていた。


「皆様、ご感動のところ申し訳ありません。そろそろ今後の行動を決めていただかないといけません」


 そう言うのは女性上位悪魔(グレーターデーモン)さん。


「この方は?」

「私は女王直属の諜報悪魔、『(グラス)』と申します。現在、場内は混乱をしております。今なら安全に撤退出来ますが、どうされますか?」


 あら、てっきり諜報用の忍者用語としての「(くさ)」かと思ったら、名前が「(グラス)」なのね。


「マユ姉ぇ、どうする? このまま逃げるも良いけど、絶対地球まで追撃来るよね。もうリタちゃん回収したから、安心して戦えるけど」

「ワシとしては、ここで父上を呼んで兄上を片付けるのに賛成じゃ。せっかくリタ殿の星を奪還できるチャンスなのじゃ。なにせ、こちらは殆ど疲弊しておらぬ。兄上だけ引っ張り出して倒せば楽勝じゃ!」

「そうよねぇ。臭いものは元から絶つべきよね。せっかくのチャンスだもの、やっちゃいますか、皆?」

「おー!」


 無事にリタちゃんを回収したから、戦意は絶好調だものね。


「既に地球(CP)には戦闘継続の一報を入れておる。このまま勝負を決めるのじゃ!」


  ◆ ◇ ◆ ◇


「一体、何がどうした? 早くオレに報告しろ!」


 揺れが続く城内で、うろたえ暴れる「将」。

 しかし転移も出来ない上に、情報が入らないのでは側使え達も、皆右往左往(うおさお)するばかり。


 ガシャーン。


 そうこうしてるうちに居室に弾丸が飛び込んできた。


「うむ!」


 「将」は爆発を警戒して防御結界を貼るも、弾丸はボムという音で小さな爆発しかしない。


「不発弾か? いや違う!」


 迫撃砲弾からは白煙(CSガス)が上がった。


「う、ゲホゲホ。なんだこの煙は!」


 それは(クロロベンジリデン)(マロニトリル)ガスと呼ばれる催涙ガス、それに対デーモン用の魔除け草を追加しているから、人間だろうとエルフだろうと悪魔だろうと咳き込み、涙を流し、鼻水じゅるじゅるとなる。

 即効性が高いかわりに持久性は低いが。


「なんじゃ、これは嫌がらせか!」

〝そうじゃ、嫌がらせに決まっておろう! でもなければ爆裂焼夷弾撃ちこんでお終いじゃ!〟


 鼻水と涙が止まらない「将」の脳内に響くその念話は、チエのものだ。


「オマエ、イツの間にこの星に来たんだ」

〝そんなのついさっきに決まっておろう。兄上、油断のし過ぎなのじゃ。警戒される日以外に襲いに来るのが普通なのじゃ!〟


 小憎(こにく)らしいチエの挑発じみた念話に「将」は激怒する。


「オマエら、俺の元に人質がいる事を忘れていないか?」

〝そんなのとっくの昔に取り返したに決まっておろう。兄上、やっぱりバカなのじゃ!〟


 「将」は側仕えの悪魔に叫んだ。


「姫はどうなっておる!」

「はい、先程逃げられたとの報告が来ております」


 予想外の答えに一瞬硬直する「将」。


「おい! 通路には何人もの番兵を準備して頑丈な非常扉で通路を閉鎖していたはずだろ?」

「それが通路を通らずに、横の部屋の壁を全部ぶち破って突破され、一部上位悪魔が姫の捕獲に向かったものの、全て返り討ちにされてしまいました」

「なんだとぉぉぉ!」


  ◆ ◇ ◆ ◇


「おう、兄上、混乱しておるわい。リタ殿、お主途中の通路に番兵やカギ付きの扉あったのを知ってて、部屋の壁抜きをしたのかや?」

「うん、だって おねえちゃんたち おしえてくれたよね。かべには たいてい しかけ ないし、いっちょくせん ですすむのが はやいって」


 うん、もう笑いが止まらないよ。

 軍隊や警察が突入する場合、扉や窓には仕掛けがあるから、何も仕掛けられていない壁に爆薬入れて破壊した穴から突入する事があるそうだ。

 以前、ナナを助ける為に躊躇無く門扉ごと吹き飛ばしたリタちゃん。

 対テロ対策もこなす姫様、すっごいや。


「すいません、姫様。この方々をご紹介願えませんか?」


 あら、ドイツ語だね。

 このエルフご老人、雰囲気からして執事さんとかっぽい。


「あら、ルーペット御免なさい。こちらがお母様のマユコ、お姉様のチエ、ナナ。そしてお兄様のコウタです」

「おかあさん、こちらがわたしの ひっとうそばつかえの るーぺっと なの」


 リタちゃんは、イルミネーターの使い方をチエちゃんに教えてもらいつつ、俺達に同時通訳をしてくれた。


「姫様、この者達を本当に信用なさるのですか?」

「どこに赤の他人の為に、星の海を渡ってまで助けに来てくれる方々がいますか? お母様達は絶対に味方、皆わたくしの大事な家族なのです」


 リタちゃんは疑いの眼で俺達を見るルーペットさんを説得しているらしい。

 しかし、なかなか納得してくれないルーペットさんに焦れたのか、ちょっとふくれっつらをした後、


「おにーちゃん、ひさしぶり! わたし、おにーちゃん、だーいすき!」


 そう言ってリタちゃんは、突然俺に抱きついてきた。


「あ、リタちゃん、久しぶりだからってコウ兄ぃの独り占めはいやだよー!」


 ナナもリタちゃんの反対側から俺に抱きつく。

 それを驚きと疑いのまなざしで見るルーペットさん。

 更に分身体で、俺達の様子を多角的に撮影するチエちゃん。

 とても戦場とは思えない雰囲気に、苦笑する皆であった。


もうやりたい放題のチエちゃん、リタちゃん。

最初、お淑やかだったはずの姫様はどこに行ったのでしょうか?

戦場であろうとも、隙を狙ってコウタの取り合い。

どれだけ、リタちゃんが不安だったかの反動でしょうが、側使えのルーペットさんから見たら驚きしか無いかと。


では、ブックマーク、感想、評価・レビュー等を頂けますと、とても嬉しいです。

皆様、宜しくお願い致します。

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