第254話 康太の魔神退治:その45「リタ姫は諦めない その2!」
ルーペルトは不思議そうに、わたしが他の星の人々と家族になれた事を尋ねてくる。
でも、それはわたし自身も不思議に思う事。
「うふ。そうですね、そこの方々は『縁』と言われていましたわ。人と人には運命があって、元がどんなに離れていても繋がる事があるそうです。向こうのお母様が言っていましたわ。『私達は縁があって親子になれたの』って。おかしいですわよね、別の星の何の関係も無いわたくしを娘にして可愛がってくださるのですから」
「それは……」
ふと可笑しくなって笑ってしまったわたしを見たルーペルトは、一瞬絶句した。
「普通ではないでしょう? でも、お母様、そしてお父様やお爺様、お婆様達はわたくしを愛してくださっています。ナナお姉様もいつも大事になさってくれていますし、学校という学問を学ぶところに一緒に仲良く通っていますの。チエお姉様なんて、『将』と同じ悪魔なのに、とても可愛らしい上に賢くてお強くて、とってもお優しいんです。お兄様は、わたくしの命の恩人ですし、とってもステキな殿方でナナお姉様とお兄様の取り合いをする毎日がとても楽しいのです」
他所の星の人間を家族として大事にするなんて姫様時代なら考えられなかった。
でもマユお母さんの娘になった今では良く分かるの。
人と人の繋がりってとっても大事なものなんだって。
だから、わたしは絶対お母さんやナナお姉ちゃん、コウ兄ちゃんのところに帰るんだ!
「それは良うございました。その御家族のおかげで姫様がご無事でしたのですから。しかし、今は……」
「それはこれからですわ。わたくしは絶対に諦めません。おそらくお母様やチエお姉様は、わたくしを助けるべく動いているはずです。多分すぐに」
チエお姉ちゃんやマユお母さんがゆっくりしている筈ないし、コウ兄ちゃんはすぐにでも飛んできそう。
ナナお姉ちゃんが、飛び出しそうなコウ兄ちゃんを押さえ込んでいるのさえ見えてくるの。
また、わたしは笑ってしまう。
「姫様、何が可笑しいのですか。生まれ故郷とは言え、今は敵地。何も良い事はございませんぞ」
「いえ、ルーペット達が無事だったという吉報もありましたし、わたくしには星の海を渡ってでも必ず助けに来てくれる家族がいますから。希望を捨てずにチャンスを狙うのです」
わたしの様子を見たルーペットは、はっとした。
「姫様、お美しくなられただけでなく、賢くお強くなられたのですね」
「ええ、これもコウお兄様が助けてくれたからですわ!」
そう力説していた時に「将」が数人の悪魔を連れてわたしの寝室にドカドカと乗り込んできた。
「『将』様。申し訳ありませんが、幼子とはいえ女性の寝室に勝手に入られては困ります」
「オイ! 今はオレがこの城の主だ。すべてはオレの勝手だ!」
ルーペルトが苦情を言うが、「将」は一向に気にぜず、ベットに座るわたしを睨んだ。
「ほう、思ったより元気そうだ。てっきり泣き喚いているかと思ったぞ」
「あら、わたくしを人質にして逃げ帰ってきた方のお言葉とは、とても思えませんですわ」
「将」、お父様、そして多くの同胞達の敵。
わたしは、彼をぎゅっと睨んだ。
確かコウ兄ちゃんが両腕を切り落としていた筈だけど、今見ている姿には両手はある。
「お、この両手か。オマエ達達と戦ったのは2回とも分身体さ。確かにアイツの魔剣は怖いな。本体であるオレまで切られたぞ。幸い、こちらには融合させる素材は多い。このくらいの損傷すぐに治るのさ」
「将」はわたしの視線に気がつき、ネタばらししてくれる。
チエお姉ちゃんなら「アホか」と言っていることだろう。
どこから情報が漏れるか分からないのに、情報をペラペラと喋るのは愚か者のすること。
チエお姉ちゃん曰く、どうせ話すなら嘘の中に少し本当の事をいれて相手を翻弄するのが面白いって。
「将」にはそんな頭ないっぽいけどね。
「姫よ。オレはオマエをしばらくは生かしてやる。向こうには10日と約束したが、どうせ準備も不十分に今日にでも突っ込んでくるか、逆にギリギリまで準備して突っ込んでくるだろうな。それまでにアルフの秘宝を動かす必要がある。明日以降にまた来るから、オレに秘宝を渡す心積もりでもしておけや!」
そう言って「将」は、お連れと一緒に寝室を出て行った。
あれ、1人残しているよ。
「私は姫様のお世話をおおせつかったモノでございます」
女性らしいスタイルとキツメだけど美人さんの悪魔。
姿からして、たぶん上位悪魔さんだろうと思うけど、今までわたしが会った朧さんとかの男性上位悪魔さんとは雰囲気が随分違うの。
「『草』とお呼びくださいませ、姫様。あら、姫様の御髪が乱れておりますわ。失礼致します」
そして「草」さんは、わたしの髪を梳く様に触れた。
〝姫様、私は魔神女王の命を受けて姫様をお守りに来ました。マユコお母様、チエ様、コウタ達も、まもなくこちらに姫様をお助けに来てくださいます〟
「草」さんはわたしに接触念話でそう話して、笑みを浮かべた。
びっくりだけど、普通の悪魔さんがお母さんやチエお姉ちゃん、コウ兄ちゃんの名前を知っている筈は無い。
この言葉は真実なんだろうね。
わたしは、先程まで思っていた予想がズバリなので嬉しくなった。
「はい、よろしくおねがいしますね」
わたしは、ルーペルトに気が付かれない様にニコリとしながら日本語で礼をした。
敵を騙すには、まず味方から。
ルーペルトはわたしの味方だと思うけど、うかつに話したらルーペルト自身が危ないし、情報が漏れる危険性がある。
こういう事、チエお姉ちゃん達に一杯教えてもらったの。
〝姫様のワンドもこちらに持ってきております。では、『将』や他の方々に気がつかれませぬ様にお気をつけてくださいませ〟
そして、「草」さんは、こそっとベットにわたしの魔法少女ステッキを突っ込んだ。
これでわたしは100人力!
絶対、「将」をぎゃふんといわせてやるんだ!
そういえば、ぎゃふんってどういう意味なんだろう?
帰ったらお姉ちゃん達に聞こーっと。
リタちゃんが諦めないように、チエちゃんやコウタが助けに来ないことなんてありえません。
こうやって思いあう限り、コウタ達に敗北は無いのです!
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