第247話 康太の魔神退治:その38「魔神女王への謁見!」
「では行ってきます、ヒラムさん」
俺達は今、南極狂気山脈遺跡にいる。
「古のもの」ヒラムさんは5つの目で俺達を心配そうに見ている。
リタちゃんを可愛がってくれたヒトだ。
その思いに答えたいよ。
〝ああ、吉報を待っておる。是非ともリタを救い出してくれ〟
「はい、なんとしても」
◆ ◇ ◆ ◇
リタちゃんが誘拐された翌日、俺達は早朝から活動を開始した。
まず、急いで帰宅し、CPのシステムをアップデートする。
今回は星間戦争でのオペレーション。
この作戦における情報支援の意味は大きい。
「ここをコウじゃ!」
チエちゃん、昨日は一睡もせずに戦略戦術の立案、そしてCPのシステムアップへのプログラム・機器のアップデート計画まで作っていたらしい。
「ふむふむ、こーじゃ!」
いつもの喜々とした表情っぽいけど、眼が腫れぼったい感じを見るに大分泣いたんだろうね。
「マサト殿、ここを頼むのじゃ! コトミ殿はここ、ルナ殿はここじゃ! フランツ殿は簡易じゃがマニュアルがあるので読むのじゃ! 教授、ここの戦術についてご指摘頼むのじゃ!」
何人にも影分身しつつ、他の人に指示しているチエちゃん。
「コウタ殿、ナナ殿。すまぬがグレイ殿へ連絡願えんか。もうすぐ病院の面会時間がくるのじゃ! そこの紙に詳細を書いておるから、グレイ殿に渡すのじゃ!」
「りょーかい!」
「うん!」
俺達は連絡後、バイク2人乗りでグレイさんが入院中の大学病院へ向かった。
「そういえばナナとの2人乗りって久しぶり?」
「うん、そうだね。確かボクが小学6年の時だったっけ?」
後ろからしっかり俺の身体を掴むナナの身体の温かさが気持ち良い。
ナナ、しっかり成長しているよ。
何処とは言わないけど。
因みに、夕べはナナとはキス以上はやっていません。
そんな事態でも無いし、正明さんやマユ姉ぇとの約束もあるしね。
◆ ◇ ◆ ◇
「こりゃまたスゴイ装備を御所望だな。ウチでも数丁しか入荷していないモデルだぞ」
グレイさん、大分元気になって今はチエちゃんが作ってくれた新しい義手義足のリハビリ中。
おそらく新年開けには退院、現場復帰の予定。
事件自体は、誰も公にしたくないという事情から訓練中の事故という事で落ち着いている。
なので、グレイさんにもお咎め無し。
「すいません、チエちゃんがやるからには本格的にやらなきゃって」
「チエちゃんなら考えそうだな」
「うん、ボクもそう思うの」
リストには、どうやら小銃だけでなく手榴弾やプラスチック爆弾とか仕掛け地雷とかもあるらしい。
「M67破片手榴弾にC4にM18クレイモア。戦争でも仕掛けるつもりかよ。あ、そうか。リタちゃん奪還戦争だもんな」
俺は詳しくないから一応勉強して確認したけど、どれもエゲつない威力の兵器。
魔力付与でもしたらデーモンでも一撃必殺じゃない?
「おい! M32グレランにM72 LAWもかよ! 戦車相手にするのかよ!」
確かM32ってショゴス専用にモデルガン使ったやつだよね。
M72も後から写真見たら、俗に言うバズーカー。
大型魔獣を蹴散らすつもりなんだろか?
「それ、チエちゃんは全部はムリじゃろうって言ってたけど」
「そりゃ、貸し出しなんてムリさ。米軍の誰かが付いていかなきゃな」
ん?
それどういう事?
「コウタ坊、俺をスカウトしねーか?」
「はい!?」
「随分とチエちゃんやオマエ達には世話になったし、借りもある。ここいらで返したいのさ。オレもリタ嬢ちゃんを助けたいしな」
そりゃ百戦錬磨、強襲作戦とかに詳しいグレイさんが付いてきてくれたら嬉しいけど。
「軍にはどう説明するんですか?」
「オレはまだ負傷休暇中だし、ナメた事してくれた本国にも貸しが大分ある。少々の物資弾薬くらいならオレの采配でどーでもなるさ」
「とりあえず、今からチエちゃんに相談しますね」
俺はチエちゃんに電話して、大体の事を話した。
するとチエちゃん、「ちょっと待っておれ!」って言って、
「グレイ殿! ありがとうなのじゃ!」
チエちゃん、病院にテレポートですっ飛んできた。
「おう、忙しいのに態々すまんな、チエちゃん」
「大丈夫じゃ。分身に仕事させておいて本体で来たのじゃ!」
こういう所で礼儀作法に拘るチエちゃん。
「すまぬ。ワシらのワガママにつき合わす形になってしもうて」
「いや、それこそオレのワガママさ。で、装備はオレ含めて3人分でかまわねーか?」
「そうじゃな。銃火器を使えるのはウチではアヤメ殿とススム殿。それにグレイ殿がおれば負けは無いわい」
今回、アヤメさんも刀に拘らず銃を使う予定。
さすがにバトルライフルでは無く、軽めのSCAR-LのCQCモデルを使うとの事だ。
今はソフトエアーガンと睨めっこして銃の取り回しを練習しているとか。
SATやグレイさんの部隊の動きを復習中って。
「じゃあ、作戦決行日時が決まり次第、できる限り早く知らせるのじゃ!」
「おう! じゃ、これから急いでリハビリだ。チエちゃんに貰った義手義足軽いのに強いから良いぞ!」
「それはそうじゃ! ワシが精魂込めて作った傑作じゃ!」
チエちゃん、いつもの「無い胸」張りのドヤ顔が出来るくらい調子が戻ってきたらしい。
今まで係ってきた人々が全員助けてくれるのも嬉しいんだろうね。
人の縁は大事だね。
◆ ◇ ◆ ◇
「『槍』さん、お迎えありがとう」
「おう! 一応、母上には内諾を取ったぞ。兄上の件、母上は大分お怒りだ」
俺、マユ姉ぇ、ナナ、チエちゃんは、南極にある転送門から悪魔母星に来た。
ここは大聖堂っぽい建物の中。
「エイリアン」や「ネクロノミコン」系のギーガーっぽい雰囲気を想像していたけど、案外神聖な感じでびっくりだ。
「チエちゃん、そういえば、この星の名前って何?」
「確かワシらが征服する前は、Ceteと呼ばれていたと聞くのじゃ。海生生物が豊富で、クジラ系の生き物が水中都市を建設しておった」
へー、クジラが作った都市か。
考古学者としては見てみたいよね。
「でももう居ないんでしょ。今まで見てきた悪魔族の侵略なら滅ぼしそう」
「それが、ワシらは水中が苦手なのじゃ。攻めたは良かったのじゃが、戦線は膠着。お互いに戦闘フィールドが大きく違いすぎたのじゃ。向こうも陸戦は不得意じゃしな。結局、停戦して友好条約結んでお互いの生活領域を侵さないで、今も残っておるはずじゃ」
「ああ、クジラのヤツラは俺達とは今じゃ知らん振りしあっているぞ」
へー、案外融通が効くんだね。
「母上はそこまで戦争好きじゃないし、父上も負け戦は嫌い。地上を好きに使えればこっちに問題ないから、こういう成り行きになった訳じゃ」
「じゃあ、チエちゃんの初陣の星は状況が違うの?」
俺はチエちゃんが離反する事になった戦いの事を聞いた。
「アレは『将』兄上の直属の名持ちの上位悪魔指揮の戦いじゃったのじゃ。ワシは指揮権も貰えず、コキ使われたのじゃ!」
あら、昔から「将」はダメダメだったのね。
戦闘指揮官としてはソコソコかも知れないけど、政治家としては三流だね。
戦争は政治や経済活動の一部ってのが分かっていない。
そして俺達は、女王謁見の間に来た。
「よくいらしてくれました。マユコ様」
その巨体と異形に似合わぬ優しい声で魔神女王が話した。
グレイさん、参戦です。
ここいらで借りを返したいのと、ずっと活躍できなかったのがあるっぽい。
それにチエちゃんが使いたいといったのもあったのでしょうね。
謁見までやっと書けました。
チエちゃんのパートは文章増えるの早いです。(笑)
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