第246話 康太の魔神退治:その37「強襲ルートの確保!」
「次の議案は、移動ルートの確保じゃ。これは『槍』に頼むのじゃ!」
「なんで俺なんだ?」
「オヌシ、どうやって母星から地球に来ておるのじゃ?」
「そりゃ、南極のゲート使ってだけど」
南極、狂気山脈の奥、「古のもの」遺跡にある秘宝の間、そこに魔剣すーさんと一緒にあったのが、転送門だ。
「オヌシ、ちゃんとヒラム殿に使う時に礼を言っておるか? いかなデーモンとも言えど礼儀は大事じゃぞ」
「一応、通るたびに挨拶はしてるぞ」
「なら、イイのじゃ!」
「古のもの」ヒラムさん。
怖い外見だけど、中身は良いヒト。
ナナやリタちゃんを可愛がってくれている。
俺も随分と助言などしてもらっている。
「まずは南極から母星に飛ぶのじゃ。そしてそこからアルフ星に飛ぶのが間違いないのじゃ!」
確かに座標も分からない数十光年以上先の場所に、いきなり転移は難しい。
なら、既に使われているルートを使うのが間違いない。
それに、ここは「将」としても今後も使う以上封印するのは難しいルート。
「でも、そのルートはバレバレでしょ。多分そこしか侵入ルートないから」
「じゃから、このルートを使うのは囮部隊じゃ。奪還部隊は、母上にでも新規ルートを作ってもらうのじゃ」
それなら奇襲可能だけど、別の問題があるね。
「そうだとしたら今度は、チエちゃんがお母様とかお父様に会う必要があるんじゃないの?」
「それは元々予定しておったのじゃ! いずれは会わねばならぬ。すまん、母様、コウタ殿。今度一緒に母上に会うのに付いてきてくれぬか?」
チエちゃんは苦しそうな顔で俺とマユ姉ぇに頭を下げた。
「うん、良いよ。ね、マユ姉ぇ」
「ええ、お母様とかには一度お会いしてお話したかったですし」
「ボクも付いてくよ! チエ姉ぇの妹としてお話したいもん」
「ああ、母上はマユコ殿に会ってみたいと言ってたぞ」
へー、魔神女王がマユ姉ぇに会いたいって面白いね。
「『槍』さん、じゃあ道案内宜しくね」
「ああ。ただ、問題は父上だな。この間までチエの抹殺命令を出していたからな」
魔神王かぁ。
絶対魔神将「将」よりも強いんだから、敵に回したくは無い。
でもチエちゃんを害するのなら、なんとかしないといけない。
ここは話す事を考えないと。
「そこは母上に頼るしかないのじゃ。時間があまりにも無い。『槍』や、すまんが早速帰ってもらって母上と話を、アポ取りつけて欲しいのじゃ」
「分かった。マユコ、リタを取り戻した後の美味しい料理、楽しみにしてるぞ!」
「ええ、まかせてね。お鍋とかなら教えてらった猪鍋も良いわよね」
「それ、すごく旨そうだな。じゃあ、またな!」
そう言って「槍」さんはテレポートした。
「さあ、他の皆も忙しくなるのじゃ。今晩はゆっくり休んで明日から動くのじゃ!」
「おー!」
◆ ◇ ◆ ◇
夜、どうしても寝付けなかった俺は、袢纏を羽織って保養施設の庭に来てみた。
そこは戦闘の影響でガタガタになっていたが、イスは無事にあったので座ってみた。
「うわぁ、寒いなぁ」
寒空の中、煌々と明るい月。
もう年末、後4日でお正月になる。
寒くても不思議じゃないね。
「よし、お正月は絶対リタちゃんも一緒だ!」
俺は、リタちゃん達と一緒に迎えるお正月を想像してみた。
皆の振袖姿なんて良いよね。
着付けするマユ姉ぇには大変だけど、華やかなのは眼の保養になるし。
「ん? あれ、あそこまだ照明付いてるぞ」
既に深夜2時、誰も彼もが寝ているはずの時間。
俺は気になって、そこの部屋に近づいてみた。
「リタ殿ぉ、すまん。すまんのじゃぁ! ワシが全部悪いのじゃぁ!!」
それはチエちゃんの泣き声。
影を見ると、机の前に座っていて一生懸命書き物をしているように見えた。
「待っておれ、絶対ワシが命に代えてでも連れ帰るのじゃ。皆で初詣を着物着て遊ぶのじゃぁ」
ダクダクと泣いているであろう声で計画を練っているのだろう。
しかし俺と同じ考えなのが嬉しいというか。
「アレ? コウ兄ぃも起きちゃったの?」
俺は後ろから掛けられた声に振り向く。
そこにはパジャマの上にカーディガンを羽織ったナナが居た。
「ナナこそ、どしたの? 寝られないの?」
「うん、最近ずっとリタちゃんと抱っこしあって寝ていたから。一人じゃ寂しいの」
俺は、寒そうにしているナナを抱き寄せて、羽織っていた袢纏の中にナナを向かい入れた。
「あ、暖かいね、コウ兄ぃ」
そういうナナの背中越しの体温も暖かい。
ほんのりと甘い匂いもする。
「チエ姉ぇ、泣いてるね」
「うん、責任感じちゃっているんだよね」
俺は、胸の前にいるナナを強く抱きしめた。
「コウ兄ぃ?」
「絶対、お正月は皆で一緒に過ごそうね」
「うん!」
この腕の中の暖かさを守るのが、俺の戦いだ。
絶対勝つぞ!
「コウ兄ぃ」
「ん? どうしたの?」
ナナが俺の方に向きなおす。
「ボクやリタちゃんを絶対守ってね」
「ああ、絶対ね」
そしてナナは眼を瞑り、つま先立ちをする。
俺は、自然な流れでナナにキスをした。
なお、後日チエちゃんは呻いたそうな。
「コウタ殿からした初キス映像を逃したのじゃぁ!!」
とうとうコウタからナナにキスしました。
まあ、据え膳でしたし、チエちゃんも攻略計画作成で忙しくて見ていなかったし。
では、ブックマーク、感想、評価・レビュー等を頂けますと、とても嬉しいです。
皆様、宜しくお願い致します。




