第245話 康太の魔神退治:その36「リタちゃん奪還計画!」
「さて、攻め入るメンツじゃが、強襲短期決戦型でいくつもりじゃ。消耗戦に持ち込まれたらワシらではどーにもならん。リタ殿の居るところにいきなり殴りこんで奪還するのが第一目標じゃ。ついでにジャマするだろう兄上をブチ倒すのは第二目標、これはどっちでもイイのじゃ」
戦術目標の設定は大事、どれを優先するかで話は違う。
今回は、リタちゃんの奪還が最優先だものね。
「なら、魔神将組と俺は絶対参加だよね」
「そうじゃな。クロエ殿、カズヤ殿にはムリ言うのじゃが」
心苦しそうな表情のチエちゃん。
本来、無関係な話に巻き込むんだから。
「前も言いましたけど、こんな面白い話。あたくしを除け者にするのはイヤですわよ。それにリタちゃんは可愛いイイ子だし、お姫様奪還計画なんてステキじゃないの」
「うん、僕はチエお姉ちゃんに恩があるし、リタちゃんは僕にとっても大事な子だよ。リタちゃんが僕を『騎』から開放してくれたし」
「そうだな、ワシの事は気にせんでイイから、頑張ってこい。ただ、絶対無事に帰ってこいよ」
「うん、お爺ちゃん!」
2人とも意気様様で参戦希望だ。
内藤のお爺ちゃんもカズヤ君を応援してくれている。
「後は、……」
「先輩、アタシを忘れないで下さいね。敵や罠の探知、それにリタちゃんの居場所わかるのは、多分アタシだけですよ。自分の身を守るくらいは出来ますから、絶対連れて行ってくださいね」
コトミちゃんが強烈に自分の事をアピールしてくる。
「チエちゃん、どうかな?」
「そうじゃな。確かにコトミ殿が居れば最短コースで奪還可能じゃな。しかし、毎回冒険に連れて行って居るが、コトミ殿のご両親は何か言わぬのか? 特に今回は死地に近い敵地強襲じゃぞ」
チエちゃんはコトミちゃん自身は欲しいけど、ご両親の事を案じている。
嫁入り前の若い娘が戦いに挑むのは、親御さんとしてはイヤな話だよね。
「ウチの親には前からある程度話していますよ。元々アタシが普通じゃないのを気が付いているし、一時期のイジメとかで落ち込んだ時期を知って居ますから、元気でいる今を大事にしなさいって言ってくれてます」
「分かったのじゃ。しかしムリは禁物じゃぞ!」
「ええ、それは重々。第一、すぐに突撃そうな先輩を止める人多いほうがいいでしょ」
「そうじゃな」
おーい、俺コトミちゃんの心配しているのに、なんで俺の事言われなきゃいけないの?
「コトミちゃん、チエちゃん。それ酷いって」
「でもコウ兄ぃ、突っ込むのはいつもでしょ。リタちゃん居ないからボクだけじゃ止まんないもの」
そういうナナは毎度の様に俺にくっつき正妻宣言中。
チエちゃんが、その様子をハイビジョン撮影しているのも毎度だけどね。
「次じゃが、撹乱をする手数は欲しいのじゃ。出来れば陽動と思えぬ戦力でそのまま本陣を攻め落とすくらいがイイのじゃ!」
「なら、俺の出番だよな、兄貴」
「ウチらも呼んで欲しいな。もう冒険パーティじゃろ」
「お姉ちゃん、勝手に決めないでよぉ。でも私もリタちゃんは絶対助けたいよ」
遠藤姉兄妹の火力は確かに欲しい。
けど、四国のご両親にどう説明したらいいのやら。
「ウチ、もう家に電話したぞ。母さんはヤッテこいだって。父さんは話聞いて倒れちゃったみたいだけど」
お母様ならそう言いそうだけど、お父様可哀想に。
「今度こそ私はお役に立ってアリサを助けてくれた借りを返したい」
ススムさんは悲痛な表情で言う。
アリサちゃんがリタちゃん誘拐の一因と思っているんだろう。
「ススムさん、そこまで思いつめないで下さい」
「そうよ、すー君。先に言うけどアリサちゃんは悪くないわ」
「でも、何かしないと……」
気持ちは良く分かる。
俺でも何かしていないと気持ちの整理が難しいし。
「さて、どうするかのじゃ。ススム殿が使える術はどういうのがあるのじゃ?」
そういえばススムさんの術の傾向を俺達全員知らないよね。
「まだ、お話していませんでしたか。私の術はアヤメ姉さんと同じ、隠術と肉体強化、武器に対する魔力付与です。武器は銃器なら小銃くらいまでなら何でも使えます」
ほう、銃器に魔力込められるのは珍しいね。
「ならば、公安経由もしくは米軍経由でM4系でも入手するかのぉ。じゃが、5.56mmじゃパワー不足じゃし、接近戦重視で7.62mm系バトルライフルのクルツ形とかでSCAR-HのCQCモデルなんてイイかもじゃ」
「うん、チエちゃんの言っていること分からん」
「チエ姉ぇ、ナニ呪文言ってるの?」
「えーっと、それは難しいと思いますよ。ね、室長」
「そうだね、日本国内でまだ持ち込まれていないモデルだし」
チエちゃんってガンマニアっぽいとこもあるから、誰にも分からないであろうネタを話しているらしい。
後日、俺はいつものように勉強したけど、本来遠距離射撃に向く7.62mm系バトルライフルを携帯性をあげつつ接近戦用にチューンした小型モデルについて話しているらしい。
アヤメさんは警察なのである程度知っているらしく、寺尾室長に聞いて入手が困難なの事を述べた。
「じゃ、グレイ殿ルートじゃな。あそこ確かSCAR-Hモデルを使っておったし、南極遺跡で渡してもらえれば国内法的に問題ないのじゃ」
「そ、それなら……。室長、聞かなかった事にしましょうか」
「そうだな」
アヤメさんと室長は冷や汗モード。
銃器受け渡しの話なんて銃刀法違反な話題を堂々と話すのもね
「ススム君、今度は私も行きますからね」
「アヤメ姉さん、ありがとうございます」
「ならば、2人はリタ殿奪還部隊で隠密行動をしてもらうのじゃ。コトミ殿と一緒に行動じゃ。他に隠密できるのは『朧』と……」
「御意!」
できるだけ静かに戦えるメンツが欲しいよね。
「それは俺達の出番じゃ。孫娘奪還に参加せぬ訳は無いぞ」
「そうね、正蔵さん」
爺ちゃん婆ちゃんが手を上げた。
「確かにお爺様、お婆様なら静かに戦えるし、年季も違うのじゃ!」
「そうね、お父さん達に正攻法での連続戦闘は厳しいかもだけど、武具次第で魔神将相手にも相手できるわね」
囮部隊は連続で大軍勢との戦闘をする以上、それなりに連続戦闘が出来る必要がる。
爺ちゃん達は短期では俺達以上に強いけど、連戦向きじゃ無いからね。
「後、もう一手は……」
「マユお姉様、私がリタちゃん奪還部隊に行きます。シンミョウ、貴方は囮部隊で全力で皆を守りなさい」
「はいですぅ」
術を多数使えて直接戦闘も出来るカレンさんが奪還部隊に来てくれるのは助かる。
それにシンミョウさんの防御は鉄壁。
安心して術者が攻撃呪文を連打できるね。
「うむ、ではこれで決定じゃな」
「すまない、自分はどうしたらいい?」
フランツ君がすまなそうに話す。
「そうじゃな。フランツ殿にはCPで英語圏との通信をお願いするのじゃ。マサト殿、ルナ殿と一緒に各種情報統合をお願いするのじゃ! ルナ殿、何かしたいのじゃろ?」
「ああ、了解した」
「チエ姉ちゃん、ありがとー。私にも仕事任せてくれて」
「2人とも宜しくね」
すまないけど、フランツ君では悪魔軍団相手は厳しい。
けど、護衛兼ねてCPでマサトやルナちゃんと援護してくれたら助かるね。
「あら、チエちゃん。私とナナはどうするの?」
「そんなの聞くまでもないじゃろ。囮部隊で全力で暴れるのじゃ。あ、すまん。母様はそこそこじゃ。杏殿をちゃんと生んでもらわねば困るのじゃ!」
「うん、ボクいっぱい暴れちゃうよ! ね、コウ兄ぃ」
ニコニコしながら俺に抱きつくナナ。
この笑顔を守る為にも絶対リタちゃんを奪還するぞ!
「すまんが教授に他の方々、ワシらが戦うための後方支援をお願いするのじゃ。これから短時間に準備をする必要があるのじゃ。宜しく頼むのじゃ!」
「では、私は後方の指揮をするね。」
「おー!」
教授も上級悪魔相手は厳しいからね。
さあ、待ってろ「将」。
絶対リタちゃんを奪還してやる!
奪還計画が進行します。
短期決戦、強襲揚陸しつつ囮部隊まで使う。
チエちゃんは使えるものは何でも使うのです。
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