第240話 康太の魔神退治:その31「戦闘準備!」
「すまねぇ、俺のせいでお前達に迷惑かけちまった」
「槍」さんが俺達に頭を下げる。
「『槍』や、オヌシだけのせいでは無いわい。兄上の腕を飛ばした時点でいずれはこういう事になったのじゃ。ワシも少々油断しておったのじゃ」
チエちゃんは謝る「槍」さんを労う。
「とにかく今は戦闘準備をしましょう。私は従業員達の避難を指示します」
「僕もお父さんを手伝うよ」
黒田さんは従業員へ説明をすべく動いた。
ショウタ君も手伝ってくれるのはありがたい。
ショウタ君の後ろをマリちゃんが保護者のように飛んでいるのも面白いね。
「さて、先程の策は想像以上にうまくいったわい。兄上は策を練るのがうまいのじゃが、想定外の状況に弱いのじゃ! 前も腕飛ばされたので急いで逃げたし、今回は自分が分からぬ攻撃で味方が吹っ飛んだので、攻撃指示を出す余裕も無かったのじゃ!」
敵の性格を良く知るチエちゃんが居たから出来た策。
待ってやるといった相手からいきなり攻撃、それも分からない攻撃を喰らったら誰でも慌てる。
そこを狙って強引にこちらの意見を押し通した訳だ。
「でもね、チエ姉ぇ。お兄さんがあそこでキレてこっちを攻撃するとは思わなかったの?」
ナナはチエちゃんに疑問を尋ねる。
その可能性は十分あった。
「その際には、コウタ殿に兄上の首を飛ばしてもらっただけじゃ! 初撃を感知出来ておらなんだのじゃ。次撃で兄上狙えば確実に重傷じゃ」
「じゃあ、どうしてそうしなかったの?」
ナナは尚も聞く。
俺も一撃で仕留める自信は正直無いけどね。
「最悪の場合は指揮官を倒せば、後は烏合の衆じゃ。『騎』は指揮官には向かん。ただ、確実ではないからのぉ。棒立ちならある程度急所を狙えるが、一撃で仕留められねば大変じゃ。まあ、2回も喰ろうた愚か者もおるがな」
俺が使った技は、本来は超接近技で相手が棒立ちじゃないと確実に狙いが着けられないからね。
俺の使った今回の技、相手の懐へ超高速移動、または瞬間移動しつつ、超接近状態で最大パワーの魔力衝撃波付きの突きをかまして、また元の場所に何も無かったように戻る技。
なので攻撃を放つ段階で絶対避けられない。
また遠距離で大振りな攻撃をする訳でも無いので、隙が少ない。
今回は魔剣すーさんのテレポートを利用してテレポートアウトの瞬間に攻撃をして、コンマ数秒内にまた元の場所にテレポートで戻っている。
魔力衝撃波は直線状に放たれるから、目標の後方に抜けて敵が吹っ飛ぶ訳だ。
それに魔剣のテレポートは邪神すら感知できないから、魔神将がタネ分からないのも当たり前。
「コウちゃんが、あの技使えるなんて凄いわ」
「え、マユ姉ぇは絶好調なら魔力による筋力強化だけでやっちゃうんでしょ。俺はすーさんの助け無しじゃムリだもん」
漫画の超人技をタネなしで使えるのはマユ姉ぇだけですよ。
「とまあ、時間稼ぎとザコ退治が同時に出来たのは幸いじゃった。ただ、これ以降は先程みたいな手は使えぬ。奇策を警戒されているからのぉ」
「でも、魔獣がコアを倒さない限り再生するのを見えたし、『騎』が何事もなく復活したのを見ると、魔剣で直撃しないと魔神将に再生不可能なダメージは与えられない様だね」
あの後、「将」は吹き飛ばされた魔獣から無事だったコアらしき玉を回収して、そいつらだけを再生復活させていた。
なお、魔獣はクマと狼とコウモリが混ざったような感じをしている。
それと毎度こりない「騎」は避ける事もせずに何回も再生をしていた。
アイツはやっぱり脳筋バカだな。
「一応、向こうの手も見えたのは良かったわい。さて、こちらは魔神将が4柱。うち2柱はまだまだ本調子では無い。また母様も短期勝負がやっと。となれば、一気に本陣勝負じゃな」
「ボク、がんばるよ!」
「わたしも!」
妹達はやる気満々。
しかし、今回は非戦闘員が多いから、その対応もしなきゃね。
「先生、大丈夫なんですか?」
「先生、アイツはワタシを唆した悪魔なんでしょ。絶対許さないの」
高校生組は、恐怖と興奮状態だ。
「ナナさん、あれがリタさんの敵なんですね」
「リタちゃん、絶対負けないで」
「マユ母さんが本調子じゃないのが困ったね」
中学生組は、案外と落ち着いている。
ナナがらみで怪奇現象に慣れているのかもね。
「マユ、くれぐれも無茶しないで。ナナ、リタちゃん、お母さんをお願い。チエちゃん、絶対全員を守って」
「ああ、任せるのじゃ、父様!」
正明さんが敵に直接対峙したのは、今回が最初。
いかに器が大きい正明さんでも妻子全員の事を考えたら正気じゃいられないよ。
「正明さん、俺がなんとかします」
「コウタ君、キミも命を大事にね。まちがってもナナを婚約前に未亡人にしちゃダメだよ」
「はい!」
俺の事も心配してくれて、ありがたいよ。
「コウ、くれぐれも猪突猛進だけはしないでよ。自分と相手の手札見て、よく考えてね」
TCGプレイヤーらしい助言をくれるマサト。
俺はどーも考えなしの突っ込む癖があるからね。
「ああ、マサトっぽくコントロールデッキな戦い方してみるよ」
「さて、俺の出番はマダかい?」
「貴方、無茶はしないで下さい。年寄りの冷や水なんだから」
爺ちゃん婆ちゃんは、愛用の武器を装備して戦闘準備中だ。
「爺ちゃん、婆ちゃんはムリせずに魔獣相手をお願いしますね。アレでも上位悪魔以上なんだから」
「おう、まかせておけや」
「コウちゃんはマーちゃんをお願いね」
「うん!」
なお、各人の武器はチエちゃんがお得意の「アポート」で持って来ている。
チエちゃんだけなら、ここから逃げる事もできるだろうけど、ここいらで決着をつけないと、今後無差別に襲われる可能性がある。
ここで仕留めれば周囲への被害が最低で抑えられるものね。
「タクや、ウチの相手はどいつじゃ」
「お姉ちゃん、さすがに悪魔さん相手はキツイよ」
「カズ姉ちゃんとマヤは魔獣を俺と一緒にお願い。早めに全滅させて兄貴達のフォローに回りたいからね」
「タクト君、家族はちゃんと守るのよ。私も最大限サポートするから。室長は隠れててくださいね」
「そうですね。ここでは私は役立たずですから」
遠藤姉兄妹は既にコンバット・プルーフ。
今回もあてにしてるよ。
アヤメさんも十分やる気、室長は……、しょうがないよね。
「コウタ君、私の出番はあるよね、せっかく虎徹を持ってきてもらったんだ。ザコ狩りならいくらでもやるよ」
「教授、無茶しちゃダメですよ。アタシがフォローできる範囲でお願いですよ。後、先輩、くれぐれも命大事にですよ。突っ込んでも助けられないんですから」
教授、ノリノリなのが怖いんですが。
「教授、そんな感じでお願いします。コトミちゃん、了解したからキミもムリはしないでよ。攻撃手段そうないんでしょ」
「そこはそれ、乙女のヒミツですぅ」
いつもの右手人差指を立てて唇の前に置くポーズでふざけてみせるコトミちゃん。
ありがとね。
「コウタ、すまない。私はあまり戦力にならない」
「私もそうだ。アリサを守ってもらっておいて、こんな時に役に立たないなんて」
「2人ともお気になさらずに。非戦闘員の警護をお願いします。そこを、アリサちゃん達を守ってもらえば俺達は存分に戦えますから」
「ぱぱぁ、わたしこわくないよ」
「大丈夫、アリサはパパが絶対守るからね」
フランツ君とススムさんには後方の警護をお願いする。
彼らには魔獣相手は少々厳しい。
俺達の安心を守る為に後ろでアリサちゃん達を守って欲しいよ。
「では、アタクシはさーちゃんと合体しますね。まださーちゃん単体ではムリでしょ」
「はい、お姉様!」
クロエさんは、さーちゃんと合体して本気モードでいくらしい。
「僕も一杯頑張るよ。お爺ちゃんは、隠れていてね」
「カズヤや、くれぐれも無茶はしないでくれよ」
「うん、大丈夫。お父さんお母さんの敵討ってくるね」
「そんなこと、気にしないで良いから無事に帰ってくれ」
内藤翁はハラハラしながらカズヤ君の事を見ている。
せっかく帰ってきた孫が危険に挑む、それも両親の敵討ちとくれば不安にもなろう。
「シンミョウ、ここが勝負どころよ」
「ええ、カレンお姉様ぁ。マユお姉様や皆さんを絶対守りますぅ」
戦闘尼僧組は実に頼りがいあるね。
「さあ、チエちゃん、マユ姉ぇ、「槍」さん。行くよ!」
「のじゃ!」
「ええ、コウちゃん!」
「おうさ!」
これで、決着をつけてやる!
最終戦になりそうな戦いの前の準備。
総勢34名ともなると、それぞれ出番あげるの大変です。
ほっとおくとチエちゃんが出番奪うんだもの。(笑)
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