第239話 康太の魔神退治:その30「再びラスボス登場!」
「こんばんわ、かな。諸君!」
温泉施設の庭園に魔神将「将」と多数の異形なバケモノ達が現れた。
「『将』兄上、どうしてここが分かったのじゃ!」
チエちゃんは驚く。
俺も、そして他の皆も驚きを隠せず、すぐに戦闘を開始できる状態では無い。
「うかつな弟のおかげと言っておこうかな。お前達には、随分と煮え湯を飲まされたのでな。俺の計画をこれ以上ジャマされぬように、ここで消えてもらうつもりだ」
どうも「槍」さんが尾行されていたっぽい。
「将」は右腕をさすりながら、俺達を睨む。
あれ、右腕だけ金属製の篭手を付けているぞ。
もしかして、あれは義手か?
「そうそうチエに、そこのエルフ小娘、お前達は役に立ちそうだから生かしてやるぞ。後、その魔剣は大事に使ってやる。後の事は気にせずに消え去れ!」
そんなの許すわけ無いじゃん。
しかし、俺達の原状では戦闘不能。
一体、どうやってこの危機を乗り切る?
「しかし、諸君らの状況を見るに、今は戦闘不能の様子。このまま滅ぼすのは面白くない。せっかく俺が全力で戦えるんだ、諸君らに生き残るチャンスをやろう。今から惑星自転周期の1/24程時間を与える。その間に戦う準備でもするんだな。なお、逃がさぬように、この建物周囲は異次元結界内に閉じ込めた」
よし、これで時間が稼げる。
魔剣すーさんと相談だ!
「兄貴、こいつら俺も随分と痛い目見せられたんだ。このままやっちゃおうぜ!」
そう後ろから叫びながら魔神将が現れる。
4本足のケンタウロスの姿、「騎」だ。
「オマエはその短気さと愚かさでコイツらに負けたのだ。俺が復活させてやらなければ虚無に帰っていたんだぞ。俺の言う事を聞け!」
「将」は「騎」を嗜めている。
なるほど、カズヤ君復活の際に「騎」の魂が無かったのは、そういう理由ね。
「しょうがねぇ、兄貴に従おう。お、そこの坊ちゃん。オマエ復活出来たのかよ。すげーな。どうだ、両親を殺した感覚は。たのしーだろ?」
「騎」はカズヤ君を下品な眼で見る。
「僕はもうオマエには負けない! 絶対、今度こそオマエを倒す!」
カズヤ君は「騎」を睨み返し啖呵を切る。
いいぞ、言い返してやれ!
「ふーん、ヒト風情がどーあがくか楽しみだぜ」
ああ、あがいて生き残ってやるぞ!
「質問がある。俺達は戦うとして、非戦闘員はどうする?」
「それは、成り行きまかせだな。死んでも仕方がないだろうし、人質にも良かろう?」
俺は気になる事を聞いた。
しかし、「将」からは予想通りの答えが返ってきた。
では、こちらも打ち合わせ通りに動くか。
「だったら、今からこちらはソッチのギャラリーを全部殺しても良いな?」
「ナニ?」
次の瞬間、衝撃音が響き、魔神将達を囲む魔獣の一部が一直線上に弾け飛んだ!
◆ ◇ ◆ ◇
「ほう、ここが魔剣殿のつくる異空間か」
「面白いのね。外が見えるなんて」
俺はチエちゃんとマユ姉ぇの意識をを魔剣すーさんの作るポーズ空間へ招待した。
「将」からの提案があった時点でチエちゃんに接触テレパスをして、マユ姉ぇ共々作戦会議を時間無制限空間でしようと思ったのだ。
「さて、ここで今後の作戦を決めようと思うんだ。ここならいくら論議しても実空間では時間は0だから安心だし」
「そうじゃな。方針をここであらかじめ決めておけば、残り時間を策を弄するのに使えるわい」
「流石はコウちゃんね。こういう裏技で邪神も倒したのね」
プチ「這い寄る混沌」戦では一手ごとにこの空間に戻って作戦を考えていたから、比較的苦戦せずに勝てた。
「とりあえずこちらの勝利条件は、最優先に味方全員の安全、次に敵の殲滅若しくは無力化で良いかな?」
「そうじゃな。たとえ勝ったとしても誰かが大変な目に合うのはイヤじゃ」
「ええ、その方針で良いわ」
先程、すーさんに確認してもらったところ、魔神将2柱はかなりの強敵。
他の魔獣は、上位悪魔以上、魔神将以下。
手下に下位悪魔はおろか上位を連れてこないのは、俺達相手では時間稼ぎにしかならないと分かっているからだろう。
「魔神将が強いのは当たり前として、やっかいなのは魔獣だよね。アイツらって、そこそこ以上に強いよ。戦闘員はシンミョウさんの防御で守れるとしても、ここの従業員さんとかアリサちゃん達をどこまで守れるかが問題だね」
「そうじゃな。そこが大問題じゃ。建物の奥に隠れても建物ごと襲われたらどうしようもないのじゃ」
「なら、こっちから条件出してみない?」
マユ姉ぇには何か考えがあるらしい。
「魔神将はウソ付けないし約束に縛られるんでしょ」
「そうじゃな。基本的に魔神は言霊に支配されるのじゃ。まあ、ワシくらいになると嘘と虚を使いこなすのじゃがな」
「で、それを使うのが盗み撮りなの?」
「う、もうその話はイイのじゃ!」
俺の突っ込みに反応してくれるチエちゃん。
緊張感を紛らわす為に、こういうギャグも必要だね
「で、どうするの?」
「こちらの力を見せ付けるのよ!」
◆ ◇ ◆ ◇
魔獣の集団が一部ながら瞬時に壊滅した事に驚愕する魔神将達。
「一体、今のは?」
「ナニかなぁ。魔神将さんともあろうものが見えなかったのかな?」
おお、驚いてる、驚いてる。
この技こっそり練習しておいて良かったよ。
マユ姉ぇの愛読書からイイ技貰ったんだ。
マユ姉ぇ自身、あそこから結構技借りているけどね。
魔神将、想定外の事が起きたからパニックしている。
ここで戦闘指令出さないから、すっかり策に嵌ったよ。
「ホレ、早く何か言わないと、またギャラリー減っちゃうぞ!」
再び衝撃音が響き、魔獣が吹き飛ぶ。
しまった(笑)、「騎」を巻き込んじゃった。
「おい、一体どういう事だ?」
「ナニも見えないんでしょ。だったら自然現象だよ。あー、怖いな」
びびっている魔神将。
よし、後一押し。
「さて、もう一度聞くけど非戦闘員はどうする?」
「それが何か関係あるのか? こちらが攻撃せぬからと言って何をしている?」
「え、さっきから吹っ飛んでいるのはソッチの戦闘員だよね。じゃあ、いつ攻撃されてもおかしくないよね。でも非戦闘員は巻き込まれただけで関係ないじゃない?」
ほう、察しが悪いぞ。
もう一回。
どーん。
また魔獣が吹っ飛ぶ。
ついでに「騎」も吹っ飛ぶ。
「わ、分かった。話を聞く!」
「早くそう言ってよね。こちらの追加条件として、非戦闘員は戦闘には巻き込まない事でイイかな。チエちゃんに異空間を作ってもらって、そこに匿うので良いから」
復活しながら怒る「騎」を片手で制しながら「将」は俺を睨んで話す。
「分かった。その条件を呑もう」
「ありがとうね。なら、もう自然現象は起きないと思うよ」
よし、作戦成功。
これで敵勢力を削りつつ、こちらの条件を呑ませたぞ。
マユ姉ぇお得意の力を見せ付けての脅迫。
チエちゃんもワクワクしながら戦いを見てます。
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