第237話 康太の魔神退治:その28「久方ぶりのバカンス」
俺達は事件が解決した記念という事で、年末休みに群馬の奥の方にある温泉地へ遊びに行く事になった。
受験生もいるけど、少々気分転換に行くのも良いよね。
「先生、今回はお誘い頂き、ありがとうございます」
「うん、先生。ありがとー!」
「ぐぅるー!」
ぐっちゃんも一緒に居るけど、この温泉施設なら大丈夫。
ここは黒田さんの教団「光輝宗」の協力保養施設。
また最近は「御山」とも提携しているとかで、霊的な存在の持ち込みも沢山行われてるんだとか。
「確かに良いお湯っぽいね、シンミョウ」
「ええ、カレンお姉様。こういう場所ならマユお姉さまの胎教にも良さそう」
なので、尼僧組も来ている。
なにせ関東までの交通費や移動時間はポータルのおかげで必要ないし
「ほー、関東だとこんなところに温泉地があるのじゃな。四国じゃあ道後以外は冷泉ばかりじゃ。ウチの近所の道の駅にも温泉あるんじゃが、冷泉で沸かしておるぞ」
「お姉ちゃん、皆さんのご迷惑になっちゃダメだよ」
今回は、タクト君の姉妹さん達も一緒に来ている。
こういう時は、ポータルさまさまだね。
「コウタ兄さん、なんか女の子多いのはどうしてでしょうね?」
「ルナ君、そう主催者を虐めるような発言はどうかと思うのだが」
「コウタお兄さん、今日は俺達まで呼んで頂き、ありがとうございます。大分慣れましたけど、沢山すごいの飛んでいるんですね」
ルナちゃん達中学生生徒会組も呼んでいる。
親御さんの許可は、もちろん取っている。
三木君は大丈夫そうだけど、森川君はちょっと怖がっているみたいだ。
そういえば、森川君と内藤カズヤ君は同じ和也だね。
「先輩、女湯を覗くなんて事はしないですよね」
「これ、コトミ君コウタ君は冗談でもそんな事しないよ。だってナナちゃんが黙っていないでしょ」
「そうでした。ナナちゃんにキス出来ない先輩には無理ですよね」
一言多いコトミちゃん、それを嗜める教授。
「えー、ナナちゃん! コウタ兄さんとキスしているの!?」
「生徒会長、不順異性交遊です!」
「コウタお兄さん、どういう事ですか?」
ホレ、中学生組がナナに食いついたよ。
「え、ボク、コウ兄ぃから口にキスされた事なんて無いよ。コトミお姉ちゃん、変な事言わないでよ」
うん、確かに俺からナナの口にキスした事は無いな。
「そうじゃな。確かにコウタ殿からは無いな。ナナ殿からは何回もあるがな」
「え――!」
「チエ姉ぇ、それ言わないでぇー!」
実に賑やかでイイ事だ。
「コウタ君、それにマユコさん。どうですか、ウチの施設は?」
「はい、綺麗ですし、良い雰囲気ですね。何より九十九神などを持ち込み可能なのが良いです」
「急にムリをいってごめんなさいね。私が動ける間に、皆さんを労いたかったので」
黒田さんは、ニコヤカな顔で賑やかな俺達を迎えてくれている。
この年末の稼ぎ時に、俺達の為に貸切にしてくれているんだから。
「お気になさらないで良いですよ。今回の費用も正規料金を、某所から頂いていますから。もしお気になるなら、もう一度当施設をご利用下さいね」
「僕もマリと一緒に皆と遊べて嬉しいよ!」
今回の旅費は、アメリカ負担。
表だって出来ない事件を俺達がなんとかして、ややこしい事案をもみ消してあげたので、大使館経由で見舞金が出ている。
これで爺ちゃん家の復旧や各種実費も気にしなくても良くなった。
ショウタ君もマリちゃんと一緒に遊んでもらえるのが嬉しそうだ。
「それもこれもワシの手柄じゃ!」
「そうなのかしら、あたくしの力もありますわよ」
「うん、チエお姉ちゃん、わたしもだよ!」
無い胸を自慢げに張るチエちゃんに突っ込むクロエさん&さーちゃん。
「そうじゃな。クロエ殿やさーちゃんの助けあっての事じゃ。そこの『槍』は何もしておらんタダ飯喰らいだがな」
「おい、チエ。オレが連絡しなかったら兄上の事気がつかなかっただろ? それに母上にあの後説明しておかなかったら、母上直々にチエに話に来たぞ」
凄みのあるイケメンに変身している「槍」さん。
チエちゃんにタダ飯喰らいみたいに言われて反論している。
正式では無いとは言え、チエちゃんの今が母上に認められたのは良い話。
チエちゃんの苦労がこれで減ったら良いな。
「姉御、ここ美人の湯だって」
「タクト君、恥かしいから私見て言わないでよ」
「タクト君、アヤメ君。公安として恥かしくない様にね。後、職場内恋愛は節度を守ってね」
汗カキカキの寺尾室長、アヤメさんとタクト君相手に説教中。
でも聞いた感じだと、2人の恋を応援しているみたいなのは良かったね。
なお、中村警視は年末年始の警備で欠席。
悲しそうな顔をしていたけど、副署長が大規模警備活動中にいないのは不味いからね。
「あら、美人の湯ですって貴方」
「ウタさんや。もっと美人になりたいのかい? 俺は今のウタさんが綺麗と思うぞ」
「いやん、貴方」
「オヤジ、お袋。頼むから、こんなところでイチャつかないでよ!」
爺ちゃんと婆ちゃんがイチャイチャモードなのに恥かしいカツ兄ぃ。
あそこまでラブラブオーラを出せる老夫婦って良いな。
「正明さん、お父さんやお母さんみたいにずっと仲良くしたいわよね」
「そうだね。来年には、もう1人家族も増えるんだ。ずっと一緒にいようね」
「おとうさん、おかあさん、らぶらぶなの!」
あ、こちらにもラブラブオーラいっぱいの夫婦が居たよ。
まだ3ヶ月にもならないから、マユ姉ぇのお腹に赤ちゃんがいるのは分からない。
でも、このラブラブ具合は微笑ましいよ。
正明さん、休みを取れるよう仕事を頑張ったそうだ。
安心して休むために、危険な患者すら裏技使ってでも治したんだとか。
裏技に何使ったかは、正明さん教えてくれなかったけど、チエちゃんが二ヤついていたから、「そういう事」なんだろうね。
うん、誰も不幸になっていないから良し。
不幸といえば豊原医師は、宿直当番で参加できず。
後に話を聞くと、急性アルコール中毒の学生や、モチを喉に詰まらせて危なかったご老人を助けていたそうな。
ホント、ご苦労様です。
「チエさん、温泉の作法をおしえてくれないか」
「おう、ワシが全部教えるのじゃ!」
「フランツ君、あまりチエさんを信用してはダメよ。あたくしはスーパー銭湯で恥かしい思いしたんですもの」
「そうだね、チエちゃんは時々とんでもないからね」
フランツ君はチエちゃんにお作法を聞いていたけど、クロエさんとマサトにダメ出しされていた。
そうだね、聞くならマユ姉ぇが間違いないよね。
悪魔に聞いても、遊ばれちゃうぞ。
「おじいちゃん、こっちに何かあるよ!」
「カズヤ、待つんだ、慌てなくてもいいぞ」
内藤翁とカズヤ君、仲良く2人で楽しんでいるようで、見ていて嬉しく思うね。
「おとうさん、おっきいおふろ、あるの?」
「そうだよ。マユお姉さんといっしょにお風呂入ったら良いね」
「うん! おかあさんとおなじにおいだもん、おねえちゃん」
ススム君も安心してアリサちゃんを連れ出して来られるようになって良かったよ。
アリサちゃん、大人気で女の子達に囲まれて遊んでもらっていたから、お風呂でもいっぱい遊んでもらえそう。
「コウ兄ぃ、良かったね。皆で笑っていれて」
「そうだよね、ナナ」
ナナは俺の腕に身体を押し付けて、毎度の正妻アピール。
チエちゃんがハイビジョン撮影しているのを見て、ピースし返すくらいは余裕あるっぽい。
「ななおねえちゃん、おにいちゃん ひとりじめは だめだよぉ!」
そこにリタちゃんが飛びついてくるのは、もはや日常。
こうやって、俺達の楽しい温泉ツアーが総勢34人で始まった。
今まで出てきたキャラの大半が参加する温泉旅行。
数えてみたら34人にもなっていました。
賑やかに遊ぶコウタ達、しかしこのまま許してはくれないだろう「将」。
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