第232話 康太の魔神退治:その23「察しが悪いのは困った事だよね」
「では、まずはジャバウォック退治ですね。アイツらは現在、先輩達がいる階層の2つ下に居て今は上へ向かっています。なお、邪神もどきは、のっそりと更に下の階層を下へ進んでいます」
ふむ、そうなると出口に近いジャバウォックを退治すれば時間は十分稼げる、最悪邪神放置して逃亡も出来る。
まあ、結局倒すんだろうけど。
俺達はコトミちゃんの指示で下層へと動いた。
◆ ◇ ◆ ◇
「チエちゃん、さっきマユ姉ぇに何話したの? 何か気になるんだけど」
「それなら母様本人に聞くのじゃ! 多分、もう少し経てば正式に発表してくれるのじゃ!」
今は下層に移動するエレベータの中。
職員達は閉鎖ブロック内に閉じ込めているので、安心して移動できる。
それにジャバウォックの位置も分かっているので奇襲も無い。
だから気楽に話しているけど、チエちゃんガードが固い。
なーんか気になるけど、悪い話じゃなさそう。
「コウちゃん、そういう事だから詳しい事は後でね。まだ正明さんにも報告していないんですもの」
「お姉様、おめでとうございます。……ですよね」
「そうなんですかぁ。良かったですぅ」
どうも尼さん達は分かっているっぽい。
「何だろうね、コウ兄ぃ、リタちゃん?」
「うん、わたし、わからないの。いいことなんでしょ?」
妹達は分からない模様。
「兄貴、俺は分かんないぞ」
悪いけど、こういう事はタクト君には期待していない。
「コウタ君、マユ姉ちゃんはどうなんだい? 何かあったとは思うんだけど、昔からナイショって事多かったし」
ススムさんも不思議そうに話す。
聞いた話だと、ススムさんは幼い頃に数回マユ姉ぇと一緒に修行した事があるんだとか。
俺もマユ姉ぇについては一杯ナイショってのはあるから、それは今更かな。
「先輩、察し悪すぎですよ。こっちは全員分かったのに。CPのマサト先輩も分かりましたよ」
コトミちゃんが通信機越しでツッコんでくる。
マサトまで分かるってマユ姉ぇの事って一体なんだろう??
しかし、マユ姉ぇはまだ顔色は十分じゃないけど、表情はニコヤカだ。
いつもの「ひまわり」の笑顔が更に明るい気がする。
イイ事の様だから、後からゆっくり聞こーっと。
「じゃあ、そろそろエレベータ止まるから行くよ、皆!」
「おー!」
◆ ◇ ◆ ◇
「タクト君、一匹そっち行ったよ。コイツは俺が仕留める。チエちゃんフォローお願い!」
「りょーかい!」
「のじゃ!」
俺は目の前の怪物を両断する。
こいつらスピードと鉤爪の攻撃は怖いけど、後はどーってことはない。
突っ込んでくれれば一刀両断、逆に逃げに回られるほうが面倒だ。
「燃えやがれ! カグツチさん、爆裂球を」
〝おうさ!〟
タクト君の指示でカグツチ様からプラズマボールが放たれ、命中した怪物はバラバラになる。
「これで、ジャバウォックは全部片付いたね。皆居るから案外楽だったね」
「それもコウタ殿と魔剣のおかげじゃ! 一撃必殺なのじゃから手負いにさせる心配が無いのじゃ!」
確かに魔剣でバッサリやれば一撃でジャバウォックくらいなら倒せる。
ヘンに手負いにさせて妙な事されるよりは、楽に倒せるのが良いに決まっている。
父さんや母さんもススムさん達を庇わなければ倒せたんだろうけど、もう過ぎたことだ。
それに俺は悲しいと同時に立派で素晴らしいと思うよ、父さんや母さんの事。
でもね、俺はナナ達の為にも絶対生きて帰るんだ、もう誰も泣かせたくないしね。
「じゃあ、今度は人工邪神だね。コトミちゃん今どういう状態なの?」
「先輩、すいません。どーも事態はあまり良くない状況なんです。実は、邪神達が向かった先に、この間のヒラムさんの遺跡から持ち出した秘宝があってそれが目的だったみたいなんです」
あちゃー、そりゃ不味い。
といって、ジャバウォックを放置していたら外に出られていたし。
こりゃ、向こうの作戦勝ち。
最悪事態になる前に、なんとかしなきゃね。
「で、どう状態が悪いの?」
「邪神に埋め込まれたマーカーからの位置情報は2体だけなんですが、アタシのカンレーダーでは十体以上いるんです」
げ、それはヤバイ。
「まさか、秘宝って物体コピーとかするヤツじゃないよね」
「えー、っとそのマサカっぽいんです」
「ええ、あたくしが見た秘宝一覧にもそんな事書かれていましたわよ」
クロエさんが財団の研究所に入れたのは、遺跡秘宝に関して関係があったからだそうな。
「ならば、今のワシらでは手が足りぬ。情報センターは死守せねばならんから、さーちゃんは呼べぬし。しょうがないのじゃ、母様にも無理は言えぬし奥の手じゃ! 母様、カズ殿を呼ぼうと思うのじゃが良いか?」
「そうね、ここで考えている間にも増えちゃうんだから勝負に出ましょ!」
チエちゃん、この状況で助っ人になれるヒトいるの?
「槍」さんなら分かるけど、カズって誰?
「では、カズ殿。済まぬが、こんな場で出てもらうのじゃ!」
〝チエお姉ちゃん、やっと僕の出番だね! 僕頑張るよ〟
チエちゃんの周囲に小さな光が踊りだす。
そしてそこから念話が聞こえてきた。
この声の感じ、どこかで聞いたような?
「では、登場じゃ! カズ殿、いや内藤和也殿!」
え!
「騎」!?
「はーい!」
俺達の目の前に、一年以上前に倒したはずの「騎」が現れた。
もう皆様はお察しですよね。
「おめでた」い話はイイモノです。
では、2019年はお世話になりました。
また2020年も宜しくお願い致します。
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