表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
功刀 康太の遺跡探訪、時々お祓い ~女難あふれる退魔伝~  作者: GOM
第五部 功刀康太の女難たっぷりな退魔伝
228/272

第228話 康太の魔神退治:その21「ラスボス登場!」

  シュン!


 マユ姉ぇの一撃は、無音で放たれた。

 光兼さんから放たれた小さな3つの紫色の光は、お互いが絡み合いながら漆黒の虚無渦(ワームストーム)を造った。

 その渦は無音のままヘレナや研究員、そして結界ごと会議室を巻き込んだ。

 更に壁を抜き、そのままずっと遠くまで渦は伸びていった。


 そして、渦が俺達から遠ざかった後、急に風が吹く。


「衝撃くるぞ!」

「防御するのじゃ!!!」


 ズどぉぉぉぉン!


 それは「無」つまり真空になった空間へ空気が流れ込む轟音だ。

 虚無渦は何もかも、空間ごと空気すら巻き込んで、その通過した後を無に返す。

 そうすればそこには真空が発生するし、真空には周囲の空気が吸い込まれる。

 そして空気の流れは暴風として俺達を襲った。


 ビュゥゥゥぅぅ


 俺は膝をついて重心を下げて暴風に耐えながら次元障壁越しに前を見た。

 あれ?

 マユ姉ぇの様子がおかしい、何かふらついているぞ。


「すーさん、バリア解除!」

「お、おう」


 俺はマユ姉ぇの処へ飛び出す。

 俺が飛び出すと同時に、マユ姉ぇはその場に崩れ落ちた。


「あ、危ない!」


 俺はマユ姉ぇが床に倒れる前に、無事キャッチした。


「マユ姉ぇ! どうしたの?」


 俺は、腕に抱いたマユ姉ぇを見る。

 すると、マユ姉ぇはうっすらと眼を開けた。


「あ、コウちゃん。私どうしちゃったのかしら。ちょっと目眩しちゃったわ」


「ほっ、良かった。マユ姉ぇ、少し無茶しすぎだよ。このところ体調良くないんじゃない? 妙にキレ気味なんだけど」


 暖かくて柔らかくて、良い匂いのするマユ姉ぇ。

 久しぶりに自分からマユ姉ぇをハグした気がするよ。


「お母さん大丈夫?」

「おかあさん、むりしちゃだめ!」

母様(かあさま)、ヤリスギなのじゃ!」


 娘達が心配してマユ姉ぇの処へ集まってきた。


「心配させてごめんなさいね。最近ちょっと体調がヘンでイライラしちゃってたの。そのイライラを敵に全部ぶつけちゃったらやり過ぎたのね」


 ああ、どーみてもやり過ぎだよ。

 マユ姉ぇの一撃は会議室の壁を越え、そのまま山脈地下にあった建物内を全て貫通し、山をも貫いていた。


「ほう、穴の向こうから光が見えるのじゃ。さすが母様というべきじゃろうか。山脈を貫通するとはワイが言うのもなんじゃが非常識じゃ!」


 シヴァ神の破壊の力、何もかも虚無へと返す攻撃を喰らっては、さしものヘレナも、もはや再生は出来まい。

 そう思った時に、床から煙が巻き起こる。


「ほう、コヤツ再生では無く、異次元にあるバックアップからの復活か。ならば灰になっても復活するのは当たり前じゃな」


 チエちゃんがそう言う間に煙は人の形となり、ヘレナになる。

 ただ、顔は人間だが、身体は異形。

 どっちかというとデーモン風だ。


「もう痛いじゃないの。全身すり下ろしなんて、ここまでスゴイのなら、実験台にぴったりね」


 コイツは、永久氷結とかに封印した方がいいんじゃね?

 俺がチエちゃんに提案しようとした時、急に衝撃が建物を襲った。


「あら、今の攻撃で閉鎖ブロックが開放されたのかもね。では、アタクシはここでお(いとま)いたしますわ。こんな姿では恥かしいですもの。『(ジェネラル)』様、お願い致しますわ」


 え、今確かに「将」と言ったぞ。


〝ヘレナよ、オマエは何をしている。そんな羽虫程度に負けるようにはオマエを改造してはおらぬぞ〟


 その低い声なき声(念話)は、どこか心を抉る感じがする。


「思ったより強敵なのよ。見てくださいな」


〝ほう、どれ〟


 その時、圧倒的な魔力、そして寒気がする殺気がいきなり発生した。


「なるほど、これはこれは。こんな所に、それも一緒にいるとは不思議よのぉ。アルフ星の姫君、そして『(ノリッジ)』」


 身長2.5m程、深緑系の肌に4本のねじくれた角。

 大きな羽と鋭い牙、爪。

 爬虫類の尻尾。

 表情は整っているが何処か下品な感じの笑みを浮かべている。


「そうか、ワシの想像は当っておったのか。『将』兄上。何故、この星にまで手を伸ばす? リタ殿の星を襲ったのでは満足できなかったのか?」


 チエちゃんは苦い表情で兄を睨む。


「そんなの決まっておろう。オレが欲しいから襲うのだ! 宇宙はオレの遊び場さ。全部がオレの思うが侭。その為にアルフも地球も欲しいのさ」


 芝居がかった風に天を仰ぎ話す「将」。

 俺の横で歯を食いしばって飛び掛るのを我慢しているリタちゃんの頭を、俺はそっと撫でた。


「おにいちゃん?」

「ちょっとイッパツどついてくるね。マユ姉ぇをお願い」


 俺はカレンさんにマユ姉ぇを任せ、目に踏み出る。


「ほう、オレの前に出てくるとは良い度胸だ」


 さて、一撃でどこまでいけるか。

 すーさん頼むよ。


「アンタ、話せる口と知性ありながら何でソンナのかよ。他のデーモンさん達は皆気持ち良く付き合えるのにな」

「ほう、『知』の他に誰とあった?」

「そんなの言う訳ないじゃん」


 そう軽口を叩いた俺は、「将」の一瞬の隙を逃さず瞬動法から全力の突きを叩き込んだ。


 ガッ!


 俺の突きは「将」の胴体中心部から少しずれた。

 「将」が俺の攻撃を察知して避けたからだ。

 しかし、魔力衝撃波を伴った一撃は「将」の右横腹を大きく穿った。

 そして「将」の右前腕、右羽が身体から、ちぎれ飛ぶ!


「ウ! オマエ、その剣は一体?」


「お前を倒す剣さ。チエちゃん、少々暴れるけど後を宜しくね」

「おうさ、兄上はもちろんヘレナもシバくのじゃ」


 さて、逃がさないぞ、お前ら!

いよいよラスボス登場!

しかしマユ姉ぇの体調不良が気になります。


では、ブックマーク、感想、評価・レビュー等を頂けますと、とても嬉しいです。

皆様、宜しくお願い致します。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ