第225話 康太の魔神退治:その18「ロビー活動ってすごいね」
「2人とも、もう大丈夫だよね」
「はい、先生すいませんでした」
「うん、先生ごめんね」
やっと落ち着いた2人。
俺から離れて今はカオリちゃんのお母様の入れてくれた紅茶を飲んで一息入れている。
「ああいうバケモノが襲ってくる事がありうるんだよ。だから、2人を巻き込みたくなかったんだ」
「はい、私の考えが甘かったです。あんなに怖いなんて」
「ワタシもそうです。先生がおっしゃるのもしょうがないです」
しょぼんとしている2人。
ちょっと可哀想なので、元気づける話しなくちゃ。
「さて、バケモノ関係は置いておいて。受験が一区切りしたら、また皆で遊びに行かない? その頃にはこちらもカタが付いているだろうしね。また可愛い子達増えているんだ。今度の警護対象のアリサちゃんなんてお人形みたいに可愛いよ」
俺は、アリサちゃんの写真を2人に見せた。
「うわぁぁ、ホントにお人形さんみたい!」
「すっごく可愛いよぉ」
「あら、まあそうねぇ」
2人だけで無く、カオリちゃんのお母様もアリサちゃんを見て喜んでいる。
「事件が解決したら、この子もお外で遊べるようになるから紹介するね」
「先生、是非ともアリサちゃん守ってあげてね!」
「うん、こんな子を狙うバカなんてふっ飛ばしてよ!」
2人はふんふん鼻息荒くしてやる気満々だ。
「さっき、そのバカの一人ぶっ飛ばしたけど、近日中に親玉もぶっ飛ばしてくるね」
「でも、また怪我しないで下さいね、先生」
「ええ、先生って自分を大事にしないっぽいもの。ワタシの時も無茶するんだものね」
とりあえず雰囲気が良くなったのでヨシ。
念の為にケイコちゃんは所轄の方に送ってもらい、俺は帰宅した。
なお、帰宅当初にナナに鼻ヒクヒクされて、
「コウ兄ぃ、女の子の匂いするの。家庭教師でナニしてたの?」
ナナ、事情知っているんだよね。
頼むからへんな事思わないでよぉぉ!
ちゃんと説明したら、ナナとリタちゃんからサンドイッチで「ふくらみ」押し付けされました。
俺って、愛玩動物扱いなの?
もちろん、言うまでも無く、チエちゃんにハイビジョン撮影されましたとさ。
◆ ◇ ◆ ◇
「いきなり財団の人間に襲われたけど、チエちゃん何かしたの? どうもあの感じだとやけくそって感じだったけど」
夕ご飯も終わった時間、俺はチエちゃんに聞いてみた。
兵士達も随伴せずにジャバウォックだけでの強襲。
今までの襲撃パターンと全く違う。
そりゃアリサちゃんが死亡したと向こうは思い込んでいるからパターンが違うと思うけど、俺を襲う理由がつかめない。
「そりゃ、プロジェクトが破綻したからに決まっておるのじゃ! ロビー活動と献金、そしてマスコミへのタレコミの勝利じゃ! じゃから逆恨みしたんじゃろ」
チエちゃんによるとプロジェクトの要、大量の魔力所有者であるアリサちゃんを失った事、そして幼女を実験台にしていたという話のリーク、次席補佐官の対抗馬の方々への情報流しに政治献金を行ったのだとか。
実にエゲツない攻撃ではあるが、むこうには幼女を犠牲にしていたという引け目がある。
こちらに錦の御旗がある以上、向こうも軍を動かすのは難しくなっただろう。
「後は、次席補佐官とやらが財団に泣きついた時がチャンスじゃ! 一網打尽にするのじゃ!」
「因みに情報源はどこ? 大使館経由にしては詳しすぎるんだけど?」
そこに現れるクロエさん。
「そんなの、わたくしに決まっているでは無いですか? 何かと忙しくて困りますわ。まあ、チエさんの資金のおかげでわたくしも研究が助かっていますけど」
毎日深夜アニメ三昧のクロエさん。
最近は研究も快調に進んでいるそうで、チエちゃんと硬柔の濃い会話を楽しんでいる。
「そうそう。わたくし、近日中に財団の研究所、たぶんアリサちゃん関連のところに行く用事がありますの。何かやりますか?」
「それは好都合じゃ。では、コイツをナイショの場所に仕掛けてくれぬか?」
「あら、それは面白いですわ!」
この2人も相性イイよね。
コトミちゃんを加えた3人、知性派にして面白いものにすぐ突っ込んで行く暴走娘達。
俺は一生彼女達には敵わないんだろうね。
「そういえば、奇襲の見逃しなんてチエちゃんらしく無いね。あのくらいなら俺なら問題無いけど、カオリちゃん達を巻き込んだら大変だったのに」
俺は疑問に思った事を聞いた。
女の子を危険に晒すなんて、チエちゃんらしく無いから。
「そんなのワザとに決まっておろう。ここ数日うろちょろしておったから、コウタ殿を餌にしたのじゃ。先に言うておくが、朧はずっと監視しておったのじゃ」
おいおい、そりゃ無いよ。
「つまり俺なら、あのくらい問題無いから生き餌にしたって事?」
「そうじゃ。事実そうだったであろう。なお、朧は後の抱きつかれた事も報告しておったが、面白いので放置したのじゃ! ついでにハイビジョン撮影もしたのじゃ!」
ああ、俺はこの悪魔に一生取り憑かれて弄ばれるんだね。
◆ ◇ ◆ ◇
「一体、どうなっておるんだ! ワシがどれだけ開発費をつぎ込んだと思っているんだ。ガキ1人確保できず、その代わりも見つけられない。そして、実験も失敗続き。もうプロジェクトに国家予算は下りぬ。ワシもこのままでは大統領から見放されてしまう!」
次席補佐官は、財団研究所の会議室に関係者を呼び出して、その怒りをぶつけていた。
ここ、財団研究室は秘匿事項が多いため、国管理土地が多い中西部ワイオミング州のロッキー山脈内にある「とある」山をぶち抜いた地下に作られている。
周囲にはネイティブアメリカンの居留地もある。
「すいません、次席補佐官殿。アタクシ達も色々と行っているのですが、魔力不足だけはどうしようもありませんですの」
50歳くらいに見える白髪の女性所長が補佐官へ言い訳をする。
「言い訳はもういらぬ。後60日以内になんらかの結果を出さねば財団は廃止、研究所も閉鎖だ。役に立たぬオマエラは路頭にでも迷うがいい」
「ほう、そう言うか! この愚か者共が!」
「ナニ! オマエは誰だ? なんでココにガキがいきなり現れた?」
補佐官や会議室に集まる全員が驚愕する。
数秒前まで誰も居なかったはずの机の上に、東欧系幼女が仁王立ちしているのだから。
「合衆国次席補佐官、そしてゲオルギオス財団の研究者共よ! お主らの悪行、ワシがしっかと全部見知っておる! おとなしゅうお縄に着くのじゃ! さもなくば少々痛い目を見てもらうのじゃ!」
そして、会議室のドアを勢いよく開けて、若い東洋人達が流れ込んでくる。
その中の1人の若い男が所長を見て驚いた。
「え、なんでアンタが生きているんだ!? リーアと一緒に死んだはずだろ、ヘレナ!?」
政治の世界は、汚い事も一杯。
清濁併せ呑まねばならない事も多いのです。
しかし、幼女を犠牲にして行う事は悪でしかありません。
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