第224話 康太の魔神退治:その17「逆恨みは怖いね」
「では、この問題を解いてみて」
「「はい」」
今日は、カオリちゃん、ケイコちゃんの家庭教師。
なんか久しぶりな気もするけど、ちゃんと家庭教師は続けているぞ。
「先生、はい出来ました」
「ワタシも出来ましたぁ!」
「ふむ、正解だね。ここいらで一休みする?」
「はい、じゃあお茶の準備するからケイコちゃんは先生と一緒に居てよ」
「ワタシもカオリちゃん手伝うね。先生、カオリちゃんの下着なんて探して見ないでね」
ケイコちゃんは冗談っぽく言って、カオリちゃんと台所へ行く。
「ふぅぅ。ケイコちゃんったら困った事言わないでよ。最近やっとカオリちゃんの胸意識しなくなったのに」
どうやらGを越えるバストサイズのカオリちゃん。
どーもまだサイズアップ中とか。
うん、この事はナナやリタちゃんにはナイショだ。
要らぬ嫉妬心燃やさせる事はあるまいて。
「ぐっちゃん、多分何も無いけど、何か2人にあったら俺に知らせてね」
「ぐぅぅ!」
グレイさんによる襲撃事件から1週間、12月も中頃。
そろそろクリスマス商戦の始まる頃だ。
チエちゃんによるアリサちゃん死亡欺瞞により、アメリカからの攻撃は止まっている。
大使館筋からの情報では、計画の破綻からか政府内部でも霊的兵器開発について疑問や計画中止案が出ているそうだ。
しかし大使さん、余程チエちゃんが怖かったのか真面目に情報を送ってくる。
クロエさんからの情報とも一致しているからウソは言っていない様で、チエちゃんも浮気の証拠隠滅に動いているらしい。
というか、これはコトミちゃんのお仕事っぽい。
「はい、先生。お待たせしました」
「タンス漁ってないよね、先生?」
「漁るかよ! ってボケ突っ込みさせないでよね」
ケイコちゃん、すっかり明るくなって俺に対して甘えてくるようになっている。
是非とも大学進学後は、俺以上のイイオトコ見つけて欲しいものだ。
俺は、既にナナの所有物だからね。
「先生、最近も何かありましたよね。この間も怪我で入院されていましたし、私達の知らないところで随分暴れているんですね」
「そうだよね、ワタシ達だけ除け者って感じなんだけど」
2人は俺を怖い顔で見る。
でも美少女2人から怖い顔で見られるのって、ある意味御褒美なんだけど。
「だって、俺ですら命の危険がある冒険ばかりだったもの。それに2人は巻き込めないよ」
いくら霊能力が増えつつあるといっても2人はか弱い女子高生。
2人よりも強いだろうルナちゃんですら、連れてはいけないのだから。
「でも、ナナちゃんとかリタちゃんは一緒なんでしょ?」
「そうそう、ワタシ達には『ぐっちゃん』もいるんだし」
やっぱりここは、はっきり言った方が良いよね。
「君達を心配させたくなかったから言わなかったけど、俺が行った冒険では2回とも死人が出ているんだ。そして今も一つ間違えば誰かが死ぬ様な事件に係っている。そんな血なまぐさい事に、君達可憐な女子高生を巻き込めないよ」
「じゃあ、なんでもっと可憐な女子中学生を巻き込んでいるの?」
ケイコちゃんの意見も分からないでもない。
しかし、妹達には理由があるんだ。
「カオリちゃんには話したけど、リタちゃんは憂国のお姫様、お父様を殺されて違う星から命からがら地球へ逃げてきた子なんだ。そしてその敵が今度は地球を狙っているんだよ」
俺の話に、ケイコちゃんは息を呑む。
「以前、リタちゃんが逃げてきたとは聞きましたが、その敵が地球を狙っているんですか?」
カオリちゃんはびっくりした顔で俺に聞く。
「ああ、ヨリによってその敵はチエちゃんと同族、兄上らしいんだよ。そしてその敵の思惑に某国が踊らされて、この間まで俺達に喧嘩売ってきていたんだ」
「それで、この間警察や救急車がうるさかったのね」
「そうなんだよ、ケイコちゃん」
2人は、俺の話しをまだ信じられないって顔をしている。
「だからリタちゃんは敵討ちじゃなくても、いつか自分の故郷を取り戻すために戦う必要があるんだ。実際、リタちゃんは敵討ちを否定しているけどね。そしてリタちゃんのお姉さんになったナナ、そして全部を守りたいチエちゃん、マユ姉ぇ、俺はハッピーエンドにしたいんだよ」
俺の答えに2人は納得した顔をした。
「それならしょうがないですね、先生」
「うん、ワタシも納得。じゃあ、ワタシ達が出来る『援護射撃』って志望校へ合格する事かな?」
「ああ、それが一番だよ!」
2人の志望校合格も、俺のハッピーエンド計画の一部だ。
◆ ◇ ◆ ◇
「じゃあ、もう夜分遅いからケイコちゃんを家に送ろうか?」
「先生、それ良いの? ナナちゃんに怒られるよ」
「うふふ、そうかもしれないわね」
う、ナナにバレたら大変かも。
かといって美少女を夜遅くに1人で帰すのは出来ないだろ。
「ナナには後で説明するよ。ヘンに隠さずに話したら分かってくれる……よね」
「先生、そうなる事をお祈り致しますわ」
「じゃー、先生お願いね」
俺はバイクの準備をしようと玄関に出た。
その時妙な気配がした。
「カオリちゃん、ケイコちゃん、急いで家の中に入って! ぐっちゃん、2人をガード!」
俺は懐から三鈷杵を取り出して周囲の気配を探す。
「先生、一体何が?」
「早く中に入るんだ!」
俺の叫びが届く前にカオリちゃんに目掛けて魔物が飛び掛る。
「ぐるぅぅぅ!」
魔物に目掛けて金色の縫いぐるみが体当たりをする。
ぐっちゃん、ナイスファイト。
俺は光の盾を展開しながら、カオリちゃん達がいる玄関前を死守する。
「先生……」
2人は、お互いを抱き合って怖がっている。
「俺は大丈夫だから、ゆっくり下がって玄関を閉めるんだ。そして家の真ん中で待っているんだ」
「はい」
さて、問題は魔物がどういうヤツなのか。
ん!
あれは、この間倒したジャバウォックだ!
じゃあ、操っているやつが近くに居るのか?
『オマエ、どうして今の奇襲が分かるんだ! Shitt!』
英語で罵倒してくる中年の男。
どうやら財団の関係者らしい。
俺をつけていて、襲うタイミングを狙っていたようだ。
でもね、キミの気配殺気は消せていない。
最近、ナナの奇襲キスを警戒しているから、気配には敏感なんだよ。
「さて、時間を掛けるのも嫌だし、通報もしなきゃだね。すーさん、色々宜しく!」
「ほいよ! マユコ殿には詳細説明済みじゃ。もうじき警察と救急車がココに来るぞ!」
流石、マユ姉ぇ、実に手回しが良い。
救急車が来てくれるのなら、手荒にしても問題ないか。
俺は空間跳躍してきた魔剣シャドウスマッシュを右手に持つ。
そして左手に持つ光の盾を前にかざした。
「じゃあ、早速倒されてよ!」
『くっそぉぉ!』
ジャバウォックが俺に飛び掛ってくる。
けど、こんなの俺の敵ではない。
魔剣で軽く横薙ぎ一閃!
そして地面に落ちた頭部へ突き!
金色の軌跡が描く魔剣の前では、ジャバウォック程度問題にすらならない。
そして俺は硬直した男に躊躇無く雷撃付きのシールドバッシュを叩き込んだ。
「ふぅぅ。さて周囲は大丈夫?」
「ああ、今のところ怪しいやつは居らぬ」
「じゃあ、すーさん帰ってくれる?」
「すまぬが出来ぬぞ。飛んで帰る事は出来るが大騒ぎになるぞ」
しまった!
すーさんは俺目掛けて空間跳躍は出来るけど、自分だけじゃいいとこ空中飛行がやっとだったんだ。
俺は魔剣をどうするか考える。
警察に見られたら、アヤメさんか中村警視が迎えに来るまで銃刀法違反で捕まる。
そりゃ金属製の剣じゃないけど、所轄の方に説明するのは難しい。
「よし、カオリちゃん家で隠してもらおう」
俺は気絶している男にダメ押し打ち込んで更に羂索を呪文で出して縛っておく。
カレンさん程では無いけど、俺でも一本くらいなら羂索出せるんだ。
「すいません、終わったので入ってもいいですか?」
「先生、大丈夫ですか?」
俺が玄関のドアホンで無事を知らせると、すぐにドアが開いてカオリちゃんが俺目掛けて飛び出してきて、抱きついた。
「先生、先生。怖かったよぉ」
「ワタシも怖かったぁ」
ケイコちゃんも俺に抱きついてくる。
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すいません、頼むから2人とも大きな「水蜜桃」を俺に押し付けないで下さい。
理性、いつまでも持ちません。
女の子の良い匂いと柔らかい身体、そんなの押し付けられたらたまりませんって。
「ごめん、もう怖く無いから2人とも俺から離れてくれない? このままだと、俺が2人を襲っちゃうよ」
「先生なら大丈夫」
「うん、ワタシ先生になら食べられてもイイ」
おい、頼むからなんとかしてぇぇ!!
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結局、俺が2人から開放されたのは警察が来てから。
所轄の方々にはあらかじめ説明済みだったので魔剣に関しては問題が起きませんでした。
コウタの理性は、どこまで持つのか。
脳裏に浮かぶナナの笑顔と悲しむ顔、それらが最後の砦。
女難は、ますます増えていくのです。
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