第222話 康太の魔神退治:その15「海兵隊、壊滅す」
「やっぱりグレイ殿か。夜分お仕事ご苦労様じゃ! さあ、ワシらとバトろうではないか!」
チエちゃんが海兵隊の方々へ宣戦布告をする。
襲撃時間まで分かっているこちらだから、十分待ち構える準備は出来ている。
寝不足気味の妹達はご機嫌斜めだけど。
本丸のアリサちゃんはススムさんと一緒に、爺ちゃん婆ちゃん、正明さんにクロエさん&「調」でガード済み。
次元回廊内で守っていれば海兵隊なんて手出し不能だものね。
「お前ら、俺達の襲撃を察知していたのかよ!」
グレイさんは吼える。
「そうじゃ。お主達は生贄にされたのかもな。どうせ、御主等は囮。そうこうしている間にアリサ殿を誘拐して逃げる気であろう」
そうチエちゃんが言ったタイミングで、ステルスタイプのMH-60Lが急にマユ姉ぇ宅に下りてきてホバリング、そして子供らしきものを抱えた兵士が吊り上げられていく。
どうして無限回廊内からアリサちゃんが連れ出されたのか?
爺ちゃん達に何かあったのか?
「あ、チエちゃん! 逃げられちゃう!」
「チエ姉ぇ、ボクヘリ叩き落すの!」
「うん、わたしも!」
俺&妹達が慌てて叫ぶが、チエちゃんは慌てない。
「大丈夫じゃ。アレは無視するのじゃ!」
そう言ってチエちゃんはブラックホークが飛び立つのを放置した。
「哀れよのぉ。囮として死んでコイとな。グレイ殿、河岸を変えぬか? ワシらならおぬしらを気持ちよく使ってやるのじゃ!」
一体チエちゃんは何を考えているのか?
俺は頭脳内でぐるぐる考えていた。
あ!
策があるって、この事か!
じゃあ、俺はどっしり構えて居ればイイ。
「ナナ、リタちゃん。ここはチエちゃんに任せようよ。第一、マユ姉ぇが何もしていないだろ? だから大丈夫だよ」
俺はまだ動揺が止まらない妹達に説明した。
そうか、こういう事態で敵を騙す為に俺達も騙されている訳だね。
確かに感情が表に出やすい俺達に秘め事は難しいや。
でも、これで良くダンジョン戦でチエちゃん騙せたね。
というか、チエちゃん騙されてくれたのかな?
「コウ兄ぃがそう言うなら」
「おにいちゃん、ほんとだいじょうぶだよね?」
「ああ、チエちゃんが2人を困らせた事無いよ……、イヤ、しょっちゅうあるけど、大事なときはいつも大丈夫だったよね」
いつも俺達を慈愛の眼で見てくれているチエちゃん。
チエちゃんを信じないで誰を信じるべきなのか。
「さて、どうする。ここでワシらと戦って全滅するのか、引くのか。既にここは警察に包囲もされておる。虎の子のヘリも帰ってはこまい。お国に義理立てて時間稼ぎするのか?」
「しょうがねーなぁ、チエちゃん。これでも俺は米軍の兵士なんだ。国への忠誠は絶対さ、戦うしかねぇんだよ」
チエちゃんの降伏勧告をグレイさんは悲痛に断る。
そして部下の方々へ命令する。
「お前ら、最高の敵さんだ。存分に戦え、見かけに騙されるな。このお嬢さん方は、俺達が戦った上で最強の敵だ! 手加減するな。全力で抗え!」
「サー、イェッサー!」
やっぱりこうなるのか。
さて、殺さないように注意しないとね。
「じゃあ、ここは私に任せてね」
俺が前に出ようとした時、マユ姉ぇが前衛に出る。
「マユ姉ぇ、俺がやるよ。俺なら銃撃を防げるし」
「なら、皆を狙撃や銃撃から守ってあげてね」
俺の提案を柔らかく否定して、ヤル気満々のマユ姉ぇ。
「私、随分と怒っているのよ。だから、ここで八つ当たりさせてね」
そうニッコリ笑いながらスゴイ事を言うマユ姉ぇ。
俺はマユ姉ぇの殺気にビビッてしまう。
「ハイ! お願いしますぅ」
「う、うむ。母様、宜しくなのじゃ!」
チエちゃんもヒイてしまっている。
こりゃ、海兵隊の方々ご愁傷様です。
死なないだろうけど、存分にPTSDになってしまうのはしょうがない。
俺達に敵対した時点で、こうなるのは運命なのだ。
「マーティン大尉、お待たせしましたわ。では、岡本真由子、参ります!」
マユ姉ぇ、笑みを絶やさず薙刀モードの光兼さんを構える。
それを見て、思わず唾を飲み込むグレイさん。
「主殿、某やるぞ!」
「みっちゃん、お願いね。ハッ!」
光兼さんと言葉を交わした次の瞬間、マユ姉ぇの姿が消えた。
ずどぉぉぉぉん!
一瞬、マユ姉ぇの姿がグレイさんの後方に居た海兵隊員の方々の中に見えたと思った瞬間、再びマユ姉ぇが消えた。
そして海兵隊員の方々が夜空に高く舞い上がったのが見えたとき、俺達のところへ大音響と衝撃波が押し寄せた。
「リタ殿、全員打ち上げるのじゃ!」
「うん、みんなふっとべ! どっかーん!」
そして宙に舞う海兵隊員は、リタちゃんの無限打ち上げ地獄に捕まる。
ごめんね、俺達に敵対した時点で手遅れなんだ。
「ひ!」
グレイさんは部下達が全員脱出できない地獄に落ちたのを見て、小さく悲鳴を上げる。
「さて、残るは貴方だけね。どうします? 降参したら部下の方々含めて丁重に保護してあげますわ」
笑みを消さずにグレイさんに近づくマユ姉ぇ。
こりゃ、下手なホラーよりも怖いぞ。
「くっそぉ。部下がやられている中、俺だけ無様に降参なんて出来るかよぉ!」
そう言って踏み込んでアイアンアームをマユ姉ぇに突き出すグレイさん。
「その心意気は良いわ。でもね、幼子を襲う貴方は許せないの!」
さらっとグレイさんの豪腕を薙刀の柄で払うマユ姉ぇ。
そして瞬動法で一気に背中からグレイさんに体当たりした。
「鉄山靠!」
「母様、アキラかよ!」
俺は、ものすごい勢いで吹き飛ぶグレイさんを見て思わず呟く。
チエちゃんもゲームキャラかよってツッコんでいる。
鉄山靠は某格闘ゲームとかで有名になった中国拳法、八極拳の代表的な技で、踏み込みながら相手の足に自分の足を引っ掛けて背中というか身体の側面全体で体当たりする技。
元々の技からして重心移動を利用してゼロ距離で大砲をぶっ放されるというくらいの威力の技。
それを瞬動法で使えば、威力は圧倒的。
身長165cm、おそらく体重が50数kgのマユ姉ぇが身長2m弱、100kgを越えるだろうグレイさんを10m程も吹き飛ばす大技だ。
「おかわりね!」
そしてグレイさんが飛んでいったところに高速で移動していくマユ姉ぇ。
今度は薙刀をバット風に構えて待ち構える。
「はい、ホームラン!」
ガキッィィィン!
金属音と共に、グレイさんから千切れ飛ぶアイアンアームにアイアンフット。
そしてグレイさんは、リタちゃんの無限打ち上げ地獄へ送られていく。
「ふぅぅ。あー、気持ちよかったわ!」
紅潮した顔と頬を伝う汗。
色っぽさ満載のマユ姉ぇだが、その行った業の恐ろしさに俺は恐怖した。
「マユ姉ぇ。グレイさん、死んでいないよね」
「たぶん、大丈夫よ。まだ手加減してあげているものね」
うん、怖い事は考えるのよそう。
もう気にしたら負けなんだよ。
おそるべしは、マユ姉ぇ。
彼女は、オタク系の技を実現すべく極秘に練習しているのです。
喜々として超人技や剣聖奥義を使う若奥様。
当作品筆頭のチートキャラでございます。
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