第221話 康太の魔神退治:その14「海兵隊、動きアリ」
「おねえちゃん、あそんでぇ」
「うん、良いよ!」
「わたしも!」
「ワシも遊ぶのじゃ!」
アリサちゃん、一時期は襲われた恐怖からか夜泣きとかもしていたけれど、ここ数日は落ち着いてきて妹達&チエちゃんと良く一緒に遊んでいる。
「すいません、随分とご厄介になりまして」
ススムさん、今のところ迂闊に動けないので仕事は長期休暇中。
「いいのよ、スー君。ウチは賑やかなの大歓迎ですもの。ね、お父さん」
「そうだな、俺達も家には暫く帰れないから居候だしな」
「まーちゃん、大勢でおしかけてごめんなさいね」
爺ちゃん達も家が事件現場になっていてかなり流血沙汰状態なので、今は警察が監視中だし、いずれはハウスクリーニングしなきゃいけないだろう。
「そこは大丈夫、皆気にしなくていいわよ。でも困ったわねぇ、今回タダ働きなのよ。せめて経費くらいは誰かに見てもらえたら良いんだけど。あ、スー君は被害者だから出さなくていいわよ。アメリカさんに後でたっぷりとタカリましょうね」
こういう所がマユ姉ぇの真骨頂。
いついかなる場合も計算高い。
そうだね、アメリカさんには金銭的にも痛い目見てもらおう。
口止め料貰わなきゃ。
「で、チエちゃん情報は何処まで集まっているの? 俺のところには何も話が来ないから分からないんだけど」
俺はチエちゃんに聞いてみる。
出来れば短期決戦したいからね。
「今のところは、財団名と事務所の所在地がが分かったくらいじゃな」
財団、正式名称はゲオルギオス財団。
ドラゴン退治で有名な聖人の名前より名付けられているそうで、政府及び軍需産業達が出資で軍事兵器開発を行っているらしい。
CIAやNSAが裏にいるのは確かだろう。
「いかにも悪役っぽい名前だよね。またドラゴン退治の聖人っていうのも、アメリカ軍需産業っぽいや」
「そうじゃな。しかし、事務所を襲ってもムダじゃろうて。どうやら実際のボスは財団幹部でのうて、政府機関におるっぽいし」
まだ完全に情報が入らない上にアメリカという国と喧嘩になりそうなのでは、こちらから攻める訳にもいかない。
財団自身も全部が悪では無いだろうし、どうすべきか。
「そうそう、大使館情報じゃが、米軍沖縄基地で海兵隊に大きな動きありじゃそうな。多分、近日中に仕掛けてくるのじゃ!」
おい、いきなりそんな話されても困るぞ!
「チエちゃん、いきなり言われても困るって。戦う準備とか要るでしょ」
「もう既にコウタ殿以外には通知済みじゃ! コウタ殿はあまり前に知らせるとパニックしそうじゃったから、しばらく伏せておいたのじゃ。もちろん母様には承認済みじゃ!」
おい、俺だけ放置かよ!
「マユ姉ぇ、俺だけ蚊帳の外にされてもイヤなんだけど。心の準備とか必要だし」
「コウちゃん、そう言って心配しだすから貴方にはあまり早く言わなかったのよ。でもごめんなさいね」
マユ姉ぇに可愛く謝られればしょうがないね。
「分かったよ。前から俺の事を考えて情報通知も工夫していたしね」
リタちゃんが来た時とか、カオリちゃんの時も全部分かっていながら俺にはあえて秘密にしていたし。
「それで、チエちゃん。もちろん何か策があるんだよね。チエちゃんが無策だとは思えないし」
戦略的勝利を重視するチエちゃん。
慌てていない以上、何か考えているはず。
「もちろん策は色々あるのじゃ! ただ、顔に出やすいコウタ殿や正直すぎるナナ殿、リタ殿には済まぬがナイショじゃ。その場で通知するから、それまで楽しみにしておるのじゃ! そうそう、襲撃日時は朧や大使館経由で情報が入るから安心せい」
ここまで情報が筒抜けとは、襲ってくるだろう海兵隊の方は可愛そうだね。
ん?
もしかして?
「チエちゃん、その襲ってくる部隊ってまさか?」
「多分、そのまさかじゃ! 皆の衆、覚悟だけはしておくのじゃ!」
◆ ◇ ◆ ◇
「嫌な仕事だよなぁ。見知った顔のヤツラ、それも俺達を簡単に無力化できる気持ちの良いヤツラと戦うなんてな」
「そうですね。自分も戦力的にも人道的にも、私事的にも戦いたくないです」
作戦目的地へ移動中の車中、海兵隊武装偵察部隊第六武装偵察中隊、隊長のGreyson Martin大尉は副官と愚痴りあう。
「特に俺達の中隊、この間の戦闘で実質一個小隊くらいの人数しか動けないんだがな」
「一応、別部隊から人員補充やヘリの支給はされていますが。しかしなんで、上はそんな部隊に命令を出したのでしょうか?」
副官も急な命令に不思議がる。
「多分、顔見知りだから向こうが手加減すると思ってだろうが。気になるのは、補充部隊ってのが海兵隊で見た事ないヤツラだって事だ。ありゃ、陸軍の特殊作戦コマンドの何処かのヤツっぽいな。動きが陸軍だ」
マーティン大尉は、その金属製の手をニギニギしている。
緊張や思いをほぐしているのであろう。
「あの坊主やお嬢ちゃん達には悪いが、一気に強襲してエモノだけ掻っ攫ってとっととズラかるぞ。日本の警察機構は優秀だ。逃げ場を奪われたら俺達だけでなく、アメリカが困る事になるからな」
「はい、了解です」
数台のトラックに満載された部隊が目的地に到着した時、時間は深夜午前2時。
このまま停電させて一気に襲えば、誰も殺さずに目的を果たせる。
お嬢ちゃん達の泣き顔を見ずに作戦が終われる。
そう、マーティンが思っていた。
「各員、無音で作戦を行うぞ。それと発砲は禁止、誰も怪我させずにターゲットを誘拐させてとっとと逃げるぞ!」
「サー・イェッサー!」
小声での復唱を聞き、大尉が動こうとした瞬間、いきなり周囲が明るくなった。
「やっぱりグレイ殿か。夜分お仕事ご苦労様じゃ! さあ、ワシらとバトろうではないか!」
大尉は恐怖した。
自分達が待ち伏せさせている事に。
そして、絶対勝てない敵が本気である事に。
何処の世界でも宮仕えは大変です。
上のいう事には絶対従わなくてはなりません。
今回の犠牲者は、海兵隊の方々です。
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