第220話 康太の魔神退治:その13「状況説明会その7 身辺整理はきちんとね」
「ならば、アリサ殿についてはこのまま様子見じゃな。残るは、この家の警備と出入りする人間の警護じゃな」
チエちゃんの提案だけど、今もこの家が監視されているのでは無いか?
コトミちゃんが気が付いていないから大丈夫なんだろうけど。
「ふむ、コウタ殿心配そうじゃな。今の警備状態が気になるのじゃろ。それはとっくに解決済みじゃ。さっき、朧とワシで全員とっ捕まえて異空間送りにしておるのじゃ!」
うみゅ、俺の顔って考えている事が全部出ちゃうのかな?
「でも、毎回捕まえていたら、ますます警戒されない? ナナとかリタちゃん、ルナちゃんを登下校中に誘拐されたらイヤだし。俺だって大学に行かない訳にはいかないしね」
「そこは考えがあるのじゃ! さっき捕まえたヤツラは大使館付きの武官共じゃったから、今から圧力かけるのじゃ!
チエちゃんが悪巧みしている時の「悪役顔」しているよ。
まあ、そこは任せて大丈夫だよね。
「チエちゃん、私はアメリカさんとは喧嘩したくないわ。命を奪わない範囲の脅しまでは許可しますが、そこまでにしてあげてね」
「大丈夫じゃ。では母様、コウタ殿明日一緒に大使館へ行こうかのぉ。出来たら寺尾室長殿達にも来て欲しいが無理なら良いのじゃ」
マユ姉ぇとしては命を奪わない脅しは喧嘩の範疇に入らないらしい。
かなり怖い意見だろうけど、向こうはこちらの命を奪うつもりで襲ってきたんだ。
少々の荒事はしょうがないよね。
「すいません、私の一存では動けません。さすがに国家間の揉め事は警察の範囲外ですから」
寺尾室長は、汗を拭き拭き話す。
いかな警察庁のお偉いさんでも、業務範疇を超えている事件だものね。
こうやってもみ消しに協力してもらっているだけでも十分だよ。
「気にする事は無いのじゃ! もともと無理なのは分かっておる。こうやって事後処理に協力してくれておるだけで十分じゃ!」
まあ、市街地で謎の軍隊銃撃戦とかをおおっぴらにするよりは、もみ消しの方が後々楽だけどね。
「一応、皆に『お守り』を渡しておくので注意するのじゃ! 後から御山や教団にも事情を説明して配っておくのじゃ!」
さあここからは、こっちのターンだ!
◆ ◇ ◆ ◇
「さて、今回の事はどういう事じゃろうなぁ?」
ここはアメリカ合衆国大使館、大使執務室。
「いきなり大使館に押し入ってナニがしたいんだ、オマエラは?」
高級そうなスーツを乱して座り込んでいる大使。
その周囲にはセキュリティガードの人々が死屍累々(死んでません)と転がっている。
いつぞやの国会議員宅襲撃事件再来である。
なお、大使館はチエちゃんと朧さんの結界に覆われており、応援は愚か通信すら遮断されている。
「あら、日本国籍を持つ幼子と老夫婦を集団で襲っておいて、そんな事を言われるのかしら」
今日のマユ姉ぇは、ご機嫌ナナメ。
前回の時はチエちゃんの「暴れん坊」を黙ってみていたけど、今日は積極的に攻撃をしている。
爺ちゃん婆ちゃんが危なかったし、マユ姉ぇ子供好きだものね。
屈強な警備員が壁に文字通り埋まっているのはオソロシや。
アレ、死んでなきゃ良いけど。
なお、俺は殆ど仕事無し。
魔剣すーさんに頼んで銃撃対策をしているくらいだ。
「コウちゃん、大丈夫よ。この間の海兵隊さんとの練習で殺さないコツ掴んだから」
ひぇぇぇ、怖いよぉ。
「オ、オマエらナニがしたいんだ? 合衆国に喧嘩を売ってタタで済むとでも思っているのか?」
「先に喧嘩を売ってきたのは、ソチラ側じゃ! このくらいで済ましておるのが分からぬのか? 命を奪う方が簡単なのじゃぞ。こんな建物、中身ごとプラズマの海に沈めるのくらい楽なのじゃ!」
そう言ってチエちゃんは悪魔形態になる。
「ひぇぇぇ!」
あら、大使さん可愛そうに漏らしちゃったよ。
「こちらとしては出来る限り穏便に済ましたいだけじゃ。どうせお主らも『上』からの命令で動いているだけなのじゃろ。このままワシらの事を放置してはくれぬか? しばらくの間で構わぬ。その間にオオモトを潰すのじゃ。そうしてくれるのなら、ワシらはこれ以上何もせぬし捕まえた者達が回復次第返そう。だが、まだ喧嘩を売ってくるのなら、一切の手加減はせぬ。お主らの家族から襲わせてもらうのじゃ! 生きていることを延々と後悔させるのじゃ!!」
チエちゃんは両の掌にプラズマ火球を出して、大使さんを説得、いや脅迫する。
家族を襲うというのはエゲつない手だけど、先手でこれを言えば米国も同じ手を俺達相手には使えまい。
「そんな条件呑めるか! 本国の意向は無視できぬ。殺すのなら殺せ! アメリカはお前らを決して許さない!」
「ほう、ではお主が浮気をしておる女子大生の事を奥方へ知らせようかのぉ?」
その一言で大使さんは固まる。
まだ強気な大使さんに、チエちゃんはトドメを刺したのだ。
「ひぃぃ! そ、それだけは……!」
「まだ他にもおるんじゃろ。世田谷の若妻とか、有名私立高校の女子高生とか。これを知ったら奥方や娘さんはどう思うのじゃろうなぁ。大使の職もクビじゃろうし、家庭問題、離婚騒動に成るわなぁ」
あら、このおっさんって浮気というか援助交際やっている口かよ。
それも18歳以下に手を出すとは、ロリ傾向ありか。
アングロサクソン系から見れば20歳過ぎの日本人でも子供に見えるそうだし。
「あ、あ、ご、ごめんなさい! 分かりました。許して下さい。もう貴方方には関与しません。本国へは適当に報告しておきます! 部下にもちゃんとさせます!」
土下座して謝りだす大使さん。
それほど奥方や娘さんが怖いらしい。
これ、多分コトミちゃん情報だろうね。
恐るべし、コトミちゃん。
ウチの女性陣は絶対に敵に回せないよぉ。
「うむ、それで良いのじゃ。今度も何かあったら奥方へ連絡するから、絶対妙な事を考えてはダメじゃぞ。後、米軍に動きがあった時に連絡してくれたら助かるのじゃ! ワシらの為に動いてくれたら、全部上手く誤魔化してやるのじゃ!」
「ははぁ! 分かりましたぁ」
大使さん、チエちゃんを拝みだす。
「うみゅ、ワシって畏れられるか拝まれるのか、どっちかしかないのじゃ」
それはしょうがないと思うよ、チエちゃん。
浮気はダメですよね
オトナは身辺整理はちゃんとしないと
しかし、コトミちゃんとチエちゃんが組むと怖いもの無し
くわばらくわばらです
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