第219話 康太の魔神退治:その12「状況説明会その6 ふたつの胸のふくらみは何でも出来る証拠なの」
チエちゃんからアリサちゃんの秘密が話される。
「アリサ殿じゃが、母上リーア殿の力を存分に受け継いでおる。その為か所有マナ総量が桁外れ、おそらくワシと同格レベルじゃ」
英雄を生み出す「大神殺し」であるリーアさんの力を受け継いだアリサちゃん。
父親のススムさんの力をも増幅することで、所有魔力量が人類の範疇を超えている。
ススムさんは、魔剣無しの俺よりだいぶ上の魔力持ち。
同郷のアヤメさんと同系統の術者なら隠形や身体強化等隠密活動において無敵だろう。
「本来、ここまでのマナを幼女であるアリサ殿だけではコントロールはできまい。暴走自爆して命を落とす事も考えられる量じゃ」
魔力を示すマナの所有可能量は、生まれつきの才能、身体の大きさと精神力に影響される。
物理的容量と精神による圧縮を使うことで総マナ所有量は決定されるのだ。
なお、俺はマユ姉ぇ達によって、マナ総量を増やす修行をずいぶんとさせられている。
しかし、才能が今一つなのか、マユ姉ぇはもちろんリタちゃんはおろか、ナナ以下のマナ所有量しか俺はまだ持ちえない。
なので、魔剣すーさんに魔力コントロールをサポートして消費量や残量管理してもらえるのはありがたい。
「そこで用いられたのが別の霊魂を宿られせる事で、そちらに魔力コントロールを肩代わりさせる事らしいのじゃ」
「ここからはリーアに少し話を聞いた私が話します」
ススムさんがチエちゃんから話を続ける。
「リーアには霊媒の才能があり、他の霊を自らの身体に降ろす事でその霊と話したり、霊の持つ力を行使したり出来たそうです。彼女が最後に使ったのがギリシャ神話で忘れ去られていた女性火神『カカ』の力でした。カカは殆ど忘れ去られていた神だったので神霊召喚として都合が良かったのでしょう」
ギリシャ神話でもオリンポス12神クラスになると信仰はされていなくても知名度が高いので、今も神格は高くて人ごときに神霊を降ろせはしない。
しかし、忘れ去られた神であれば「器の」大きい霊媒であれば呼べるのであろう。
「おそらくじゃがアリサ殿もリーア殿同様かそれ以上の霊媒としての能力を持っておる。そしてアリサ殿の魔力を使いやすくするために魔力コントロールに長けた霊を財団の実験で降ろさせたのじゃろうて」
降霊実験によりアリサちゃんは魔力的には安定したのだろうけど、幼い精神で霊を降ろせば良くて二重人格、最悪精神崩壊による廃人化を起こしてもおかしくない。
実に許せないぞ、財団!
「ほい、そこのコウタ殿! 怒るのは分かるのじゃが、もっと冷静にじゃ!」
「ごめん、子供を生贄にするヤツラ相手だとすぐに『トリガー』引いちゃうんだ。もっと冷静にだね」
駄目だねぇ、小さな子供が酷い目にあっているのを見たり聞いたら、幼いころの自分やナナ、リタちゃんと被るから正気でいるのも難しいや。
「コウ兄ぃ、怒っているのはボクも同じだよ。怒りは後にとっておくの!」
「こうにいちゃん、あとでいっぱいぶつけるの!」
俺の両側に座る妹達は俺の腕にしっかりと自分達の腕を絡ませて、その小さな「ふくらみ」を俺に押し付けてくる。
「ちょ、ちょっと2人とも。今は大事な会議中だよ。もう少し離れてよぉ」
「やだもん、コウ兄ぃすぐにキレるんだもん。ボク達がしっかりと手綱捕まえとかなきゃね」
「そーだよ。おにいちゃん すぐに とびだしそうになるんだもん」
俺は多分耳まで赤くしている事だろう。
小さいけれど確かに存在する柔らかな「ふくらみ」。
それを押し付けられたら、何も感じないオトコはいるまい。
更にソレのダブルパンチでは、もう冷静ではいられない。
さっきまでの怒りとは逆の方向で精神が乱れてしまう。
流石、古典魔女っ子アニメで「二つの胸の膨らみは、何でも出来る証拠なの」と歌われる訳だ。
おかげで怒りの「トリガー」は完全に元に戻った。
しかし、周囲の俺たちを見る「温かい」というか「生暖かい目」が痛いのは気のせいだろうか?
特にコトミちゃんやルナちゃんの視線が痛い。
チエちゃんが隙も無くハイビジョンカメラを抱えているのは、……もう無視しよう。
ああ、悪魔が行う、文字通り「悪魔な所業」を気にしていたら負けなのだ。
「さて、コウタ殿が落ち着いたので、話の続きじゃ!」
カメラを降ろして何喰わぬ顔で説明を再開するチエちゃん。
突然ハイビジョンカメラを取り出して撮影を始めたチエちゃんに驚くススムさんを無視して話すのは、どうなのだろうか。
「ナナ殿の霊視により、アリサ殿はオーラが二重状態でなんらかの霊体が憑いているのは確かじゃ。また普段は意識の表層には出てこず、アリサ殿を侵す様子も見受けられぬのじゃ」
俺が見てもアリサちゃん自身のオーラが強すぎて、重なっているのがなかなか分からない。
そういう状態だと説明されてやっと何かが居ると認識できるレベルだ。
「そうですね、アタシの眼でもナナちゃんの出した答えと一致していますね。霊体としてはここ十年以内の方で、案外しっかりしていて自我も殆ど崩壊していない様。女性霊ですね」
おそるべき、コトミちゃんの霊視。
眼鏡をクイっとさせてアリサちゃんを凝視しているけど、チエちゃんやナナが見えなかった部分すらも見抜いているぞ。
「あら、この方のアストラル体は耳長ですね。地球人類ではないのかも。もしかしてエルフさんでしょうか?」
え、じゃああの時リタちゃんに反応したのは、やっぱり!
「おそるべしはコトミ殿の力じゃな。もう答えを出しておるわい。ワシがリタ殿とアリサ殿の反応で出した仮説を確定させたのじゃ!」
チエちゃんは、最初にアリサちゃんとリタちゃんが会ったときにあった、アリサちゃんの反応と一言が気になっていて調査をしていた。
昨日、幻覚を解いてエルフ耳を見せたリタちゃんとアリサちゃんを出合わせていたのだけど、何も反応がなかったのだ。
「どうもアリサちゃんの精神を守りたいから、彼女の意識がはっきりしている時には出てこない様ですね。お聞きした状況ですとアリサちゃんが眠そうにしていたので意識が半分なかったから出てこられたのでは無いでしょうか?」
コトミちゃんにかかると隠し事も全て見抜かれそう。
彼女が味方でいてくれて良かったよ。
おそるべきは、コトミ嬢の力。
だからコウタ君にはプライバシーなんて実は無いんです。
それを本人には悟られずにチエちゃんに横流しして、お互いに喜んでいるのですね。
あと、「ふくらみ」の力は偉大です、ハイ。
シャランラ!
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