第218話 康太の魔神退治:その11「状況説明会その5 皆お人好し過ぎ」
「とりあえずラスボス候補の事は置いておいて、現状財団とやらの情報がもっと知りたいよね」
俺は、涙から笑いの会議に変わったのを確認してチエちゃんに話した。
「そうじゃな。何分こちらには大した情報もないので手詰まりじゃ。ススム殿の話ではアリサ殿救出段階での研究施設は壊滅しておるしの」
チエちゃんは腕組みをして首を傾げた。
「チエさん、それならわたくしがなんとか出来るかもですわ」
「はい、チエお姉さま、私お役に立ちたいです」
そこに当たり前のように会議参加をしているクロエさん&「調」から提案が行われた。
毎日、深夜アニメを見るためにゲートで来日中のクロエさん。
一体いつ仕事や睡眠をしているのか不明だけど、別にやつれた感じもなく、どちらかというと絶好調っぽいので、その辺りは気にしないでおこう。
さーちゃん、狂気山脈戦まではクロエさんに完全憑依しなければ、悪魔形態にもなれず回復待ちだったけど、最近チエちゃんが義体製造用マテリアルの大規模製造に成功したらしく、そのおすそ分けを貰って手のひらサイズでならクロエさんと別れて行動できる様になっている。
今も手乗りデーモンとしてクロエさんの肩に乗っている。
「ウチはNSA絡みの研究が多いから、そっち関連の情報も入りますわ。第一、今回の襲撃犯もウチに来ていましたし」
確かにこちらではどうやっても入手できない情報が入手できる可能性はある。
しかし、クロエさんの身が危ないのではないか?
俺たちとの関係がバレたら殺される可能性も否定できない。
「それはありがたいけど、クロエさんが危ないですよ」
「そうじゃ、命の危険がある事には巻き込めないのじゃ!」
「ウチの問題で他所様の娘さんを危険に晒せませんわ」
俺の意見にチエちゃん、マユ姉ぇも同意する。
「もちろんそれを分かった上でのお話です。財団にはわたくしが貴方方と関係しているところまでは知られているかもしれませんが、まさか毎日顔を会わしているとは思いませんでしょ」
そりゃそーだ。
何処の世界にアニメ見たさで海外くんだりから「どこでも〇〇」使って毎日来日するツワモノがいるのやら。
「ですから情報交換は直接顔を会わしたときにすれば漏洩やバレる可能性は低いでしょ。それにわたくしには、すーちゃんが居るんですもの。人間相手に殺される事はまずありえませんわ」
非常にありがたい話だけれども、クロエさんがそこまでしてくれる理由が分からないよ。
「何故、そこまでしてワシらに味方してくれるのじゃ? クロエ殿には一切関係ない話じゃろ。命の危険がある事に出てくる何か理由があるのじゃ?」
チエちゃんはクロエさんを値踏みするように睨む。
「そうですわね。確かに何のゆかりもない幼子を救うために命を懸けるのは、それなりの理由が要りますわね。では、申しましょう」
クロエさんは何処か芝居じみた動作、舞台女優みたいな雰囲気で話す。
「それは『愛』ゆえなのですわ!」
おい、絶対今思いついただろ!
今までの行動と全く一致しないぞ。
「愛」って言いたいだけじゃないかよ!
「それは本気で言っておるのか?」
流石のチエちゃんもあっけにとられている。
多分、ここでそれを真に受けているのって感動しているナナ、リタちゃん、ルナちゃんくらいだぞ。
しかし、ルナちゃんはもう少し計算高いとかって思っていたけど、ナナの影響か夢見る乙女になっている。
今までの苦悩考えたら女子中学生なんだから、このくらいお気楽で良いのかもしれないけどね。
「まあ、それがお題目というか建前ですわね。本音を言えば、わたくしが気持ちよく日本の深夜アニメを見えなくなるからですわ」
本音にしてはえらく俗っぽいし、命を懸ける理由には聞こえないんだけど。
「わたくし、皆様と楽しくさせて頂いている今がとても幸せなのです。その皆様が悲しげにされていては、わたくし楽しめませんですもの」
「で、本当の本音はナニじゃ?」
まだ理由に十分じゃないと思い聞くチエちゃん。
俺の場合は、自分が気分良くないって理由で突っ込んじゃうけどね。
で、毎回マユ姉ぇやチエちゃんに怒られて、コトミちゃんに呆れられるのが日常だ。
「こんな面白い事、わたくしだけ除け者は嫌ですわ! それにあたくしの研究を勝手にバカ共に使われるのはイヤなんですわ!」
うむ、これが本音かな。
まあ、愛というのも嘘じゃないよね。
さっきアリサちゃんの事でクロエさんも涙ぐんでいたし。
照れ隠しもあったりして。
「まあ、そういう事にしてやるのじゃ! 実際協力者がおるとおらぬでは違うからのぉ。さて、向こうの情報はそれでヨシとして、こちらの情報確認じゃな」
チエちゃんはアリサちゃんの方を見る。
「ススム殿、アリサ殿の『力』について公開しても良いか?」
「はい、よろしくお願いします」
ススムさんはチエちゃんに頭を下げる。
アリサちゃんは自分の事を話しているのまでは分かっているみたいだけれども、話している内容が難しいからきょとんとしてパパを見上げた。
「ぱぱぁ、みんな ありさのこと、おはなししているの?」
「うん、そうだよ。皆でアリサの事を大事にしようってお話なんだ」
「そうなんだ。うれしいなぁ」
にへらと笑う金髪ヘイゼルアイの幼女。
この子は絶対に守り切ってやる!
父さん、母さん、俺に力を貸してね。
お人好しでお節介焼きの周囲には、似たものばかり集まります。
彼らにとっては面白いとか楽しいで強敵にぶつかっていけるのでしょうね。
著者もイイ加減人が良過ぎとは言われてますがねw
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