第211話 康太の魔神退治:その4「賊の強襲!」
「すいません、夜分急にお訪ね致しまして」
既に午後10時過ぎ、康太と同じくらいの青年が、青年と何処か似た淡い金髪の幼女を連れて秋山家を訪れていた。
「いや、キミもウチとは縁があるのだからね。そのお子さん、まさかキミの子かい?」
正蔵は青年、北条 進に話す。
「はい、アメリカ在留中に出来た私の娘です」
ススムは、自分の足にぎゅっとしがみついて後ろに隠れようとしている娘を抱き上げる。
「名前は『ありさ』と言います。3歳になります」
幼女、アリサはハシバミ色(黄色がかった薄茶色)の目を涙目にして父親にしがみ付く。
「この子、日本語が分かりますか?」
歌子がアリサの前に近づき、微笑んで聞く。
「うん、わかるよ。おばあちゃん」
「そうなの、ありさちゃん。もう夜遅いけど眠くない? それにお腹すいていない?」
歌子は、アリサに直接話す。
「ねむくないけど、おなかすいたの」
「じゃあ、今からご飯の準備するから待っててね」
「うん、ありがとお」
「はい、いい子ね」
歌子はアリサの頭を撫でた後、居間から台所へ移動した。
「さて、こんな夜更けにお腹を空かした子供連れ、それも母親無しでどうしてウチに来たんだい? 何か事情があるんだろう。教えてくれないか、何かから逃げているのか?」
正蔵は、アリサを見て笑いかけながらススムに聞いた。
「はい、本当なら私の実家に逃げ込むところなんですが、あちらにも向こうの手が伸びていて、しかたなく秋山先生のところに逃げ込んだんです」
「ほう、厄介ごとに巻き込まれているのか。そして俺のところに逃げ込むという事は警察ではどうにも出来ない相手か?」
正蔵は、アリサを怖がらせないようにしながら、ススムに真相を聞く。
「流石は先生。はい、お察しの通りです。私は娘をアメリカにある『とある』研究施設から救い出してきたのです、妻を犠牲にして」
その時、正蔵は家の周囲に多数の気配がある事に気が付く。
「ウタさん、少々厄介な事になったわい」
「あら、貴方気が付くの随分遅いわよ。既に私戦闘準備しているのに」
歌子は既に両手に篭手を装備している。
「オヤジ、これやばいぞ」
勝也も手に大型のフラッシュランプを握って2階の自室から降りてきた。
「さて、俺も本気出すとしようか。お、そうだ! すーさん、コウタ達に連絡頼む。おそらく既に普通の通信手段は切断されておるからな」
「先生、確かに携帯回線が不通です」
ススムはスマホを確認した後、アリサを抱えてから、懐に手を入れ小型拳銃を出す。
「了解した。グランドマスター、我を使わぬか? 貴方なら魔力攻撃を使わないのなら我を存分に使いこなせる。どうせ相手を殺しはしないのだろう? 我なら銃器攻撃からも全員を守れるぞ」
「では、頼む! 俺は長時間戦闘は無理だ。短期決戦で行くぞ!」
「おう!」
その時、秋山家の照明が消える。
そして窓を破り、M4自動小銃を持った4人の賊が入る。
「ぎゃ!」
しかし、1人は正蔵の魔剣による一閃で入ってきた窓から屋外へと弾き飛ばされた。
「ほう、こりゃ軽いしうっかり切れないから手加減もいらねーな」
正蔵は、闇夜に眼を輝かせて、肩に魔剣を担いだ。
「ぐぅぅ」
残る3人の賊は、空中で何かに縛られたかのように固定される。
「ごめんなさいね。最近戦っていないから手加減できないかもしれないの。手足や指の一本は勘弁してね」
そう歌子が言うと、賊の手足から血が噴出し腱が切断され、一瞬で無力化される。
「ウタさん、相変わらずエゲツナイね」
「そういう貴方こそ、もう少し手加減しないと吹き飛ばしたコ、死んじゃうわよ」
「オヤジ、オフクロ相変わらず凄いね」
2人の老夫婦が笑いながらお互いの背中を守るように立つ。
そしてその息子は唸っている兵士達を棍棒替わりのフラッシュランプで殴って気絶させている。
それを見て驚愕するススム。
「あの、お2人ともご引退なさっているのですよね」
「そうよ。マーちゃんや孫たちの方がもっと強いわよ」
「だな。今回も孫が魔剣貸してくれているから安心だぞ」
「だよな、軽いし銃弾避け出来るし、襲ってくるバカ共のタイミング最悪だね」
その時、屋外から銃声がしてキンという音も室内から聞こえた。
「ホレ、狙撃してきた。すーさん、ありがとうな。俺達じゃ子供守って銃撃戦対応は難しいからな」
「グランドマスター、狙撃は我に任せておけ。後、15分程度でコウタ達が到着する。警察も動いてくれている。もう少し持ちこたえるぞ」
「さて、久方ぶりの大暴れ! ウタさん、いくぞ!」
「はい、貴方」
老夫婦は闇の中走る!
◆ ◇ ◆ ◇
「コウちゃん、状況はどうなの?」
マユ姉ぇは自動車をかっ飛ばしながら、俺にハンズフリーで連絡をしてくる。
「今のところ、賊は自動小銃で武装した何処かの軍隊っぽい。スマッシュさんが銃撃に対応してくれているから、今は賊の殲滅中だね」
爺ちゃんの剣術と魔剣が組み合わされれば、文字通り鬼に金棒。
俺よりも凄腕の剣術で魔剣を振るえるのなら、悪魔ですら敵ではない。
問題は爺ちゃんの体力問題による時間制限。
たぶん、それまでには俺達が間に合うとは思うけど。
「なら、大丈夫よね。お母さんも暴れているのでしょう」
「お婆ちゃんも昔は強かったって聞いているけど、大丈夫なの?」
俺は、お淑やかで可愛い歌子婆ちゃんと、強いというイメージがいまひとつ結びつかない。
俺の両親を殺した魔物を倒したらしいし、マユ姉ぇが口を濁すくらいだから、それなり以上に強いとは思うけど。
「そうね、今でも中距離なら私よりも強いかも知れないわ」
「えェ!」
俺は驚愕しつつも、バイクを爺ちゃんの家へ向かわせた。
◆ ◇ ◆ ◇
「ありゃ、この辺り停電しているね」
俺は警戒しつつ、バイクを爺ちゃん家から少し離れた場所に駐める。
その横にマユ姉ぇも車を止め、中からやる気満々のナナ達が出てくる。
「お婆様達を襲う不届き者は、ワシ生かして返さぬのじゃ!」
「ちえおねえちゃん、やりすぎは だめだよ!」
「そうよ。犯人は殺さす確保して、虐めて全部吐かせるの。そーしてから警察に渡すの! ボク許さないの!」
あかん、妹達は寝入りばな起こされた上に、大好きな祖父母を襲われて激怒状態だ。
「皆様、現在賊は戦闘部隊の大半が退治されています。しかし、異形のモノが現れて皆様苦戦しております。後、指揮部隊と狙撃部隊がおります。お早く支援お願い致します。狙撃部隊の方は私が殺さず生かさず確保しておきますので」
先行偵察してきた朧サン、詳しい状況を説明してくれる。
そういえば先程からスマッシュさんからの念話が途切れている。
生存気配はあるから無事だけど、連絡出来ないくらい苦戦しているのだろう。
「マユ姉ぇ、皆行くよ!」
「はい!」
俺は三鈷杵を握り、暗闇に飛び出した。
元気なじじいとばばぁ
強い老人キャラ大好きです。
私も人生後半戦なので、かっこいい「じじい」になりたいです。
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