第206話 閑話 ナナの心配とコウタの赤面
第5部に入る前に、すこしだけナナとコウタの甘いイチャイチャシーンをどうぞ。
「コウ兄ぃのばかぁぁぁ!!!!」
ボクは手に持った枕をコウ兄ぃの顔におもいっきりぶつけた。
「ゴメンゴメン、ナナ。俺、またナナ泣かせちゃったよ」
「もうコウ兄ぃなんて知らない!」
邪神を倒して数日後、コウ兄ぃはやっと眼を覚ましてくれたのは良かったの。
でも動けるようになったと思ったら、お母さん達の制止も聞かずに前と同じ訓練をしようとして、また倒れたの。
「だって、早く元に戻らないと困るんだけど?」
「でもまた倒れたら意味無いよぉ! ボクと約束したよね、もう無茶しないって」
ボクはベットに寝ているコウ兄ぃの顔を上から睨む。
「うん、そうだけど、ナナの為には無茶するかもっては言ったと思うけど」
「で、倒れるような修行がボクの為ってどういう事? こうやって怒られている段階で意味無いよね。もうボクを泣かさないはずだったよねぇ!」
ボクは出来る限り怖い顔でコウ兄ぃの顔を見た。
「ご、ごめんなさい」
「え、何言っているのかな、コウ兄ぃ?」
聞こえているけど、聞こえないふりするボク。
だって、こんな事で許してあげないもん。
「ごめんなさい、ナナ。もう決して無理しません」
「ホントかなぁ、コウ兄ぃ、自分を大事にしなさ過ぎだよ。今回も寒くなってきているのに、無理するから風邪ひくんだもの」
コウ兄ぃったら、動けるようになったからって、いきなり大学病院のリハビリ室でがんがん動いて汗書いた後、ちゃんと汗拭かないから冷えて風邪引いたの。
おかげで退院は遅れるし、ボク達の四国観光もお預け状態。
「もー、コウ兄ぃの大丈夫とか決しては信用しないからね。絶対無理しちゃうんだもん。もっと自分の事考えてよぉ。コウ兄ぃになんかあったら、ボク、ボク……」
あ、ダメだ。
また泣いちゃうの。
「ホント、心配ばかりさせてゴメンね。俺、今まで皆に大事にされてきたから、その恩返ししなきゃって張り切りすぎちゃうんだ。でも、ナナ泣かせるんじゃダメだよね」
そう言ってコウ兄ぃは、その大きな手でボクの頭をナデナデしてくれる。
ボク、これ大好き。
ナデナデしてもらうとコウ兄ぃの暖かさが伝わってきて、胸がホンワカしちゃうの。
リタちゃんが、コウ兄ぃのナデナデ好きなのも良く分かる。
「そうよ、すーちゃんも言ってたでしょ。自分を大事にしろって」
ボクがそう言うと、コウ兄ぃは「プっ」と笑う。
「どしたの? 何がおかしいの?」
「いやね、俺もスマッシュさんに『すーちゃん』って言って、ネーミングセンス無いって怒られたんだよ。こんなところ、従兄妹同士で似なくて良いのにね」
ふーん、そーなんだ。
じゃあ、ボクも注意しないと。
「お母さんもネーミングセンス無いって話だし、秋山のお爺ちゃんも怪しいよね。なら全部、お爺ちゃんの遺伝かな?」
「うん、そうかもね。マユ姉ぇがセンス無いなら、確実に秋山の血筋だしね」
ボク、お母さんからコウ兄ぃのご両親、おじ様おば様の話をあまり聞いた事が無い。
お母さんのお姉さんが、コウ兄ぃのお母さんとは知っているけど。
「ナナ、俺元気になったら、一度マユ姉ぇやナナ達と一緒に秋山の爺ちゃんに聞かなきゃならない事あるんだ。俺の両親の最後について」
「え、交通事故じゃなかったの?」
コウ兄ぃが3歳の頃、2人とも交通事故で亡くなったとボクは聞いている。
「それが違うらしいんだ。スマッシュさんに俺の過去の記憶を見せてもらったときに知ったんだけど、退魔活動中に子供を庇って死んじゃったらしいんだ」
「え!! そうなの? じゃあ、もしかしてお母さんも知っているの?」
それはびっくりな話よね。
交通事故でも嫌なのに、バケモノに殺されたなんて。
「うん、その記憶には俺を抱いているマユ姉ぇが居て、全部知っている上に俺のお母さんになるって宣言していたんだ」
「それでなのね。お母さん、いつもコウ兄ぃの事心配しているもん」
お母さん、もちろんボクやリタちゃんの事を大事にしているけど、同じくらいコウ兄ぃの事大事にしているもの。
「うん、俺の家族を失う恐怖から来るトラウマもそれが原因だし、それで無理しているのをスマッシュさんに指摘されたからね。まあ、トラウマ利用した魔力ブーストでパワーアップしたから邪神には勝てたけど」
「そーなんだ」
あれ、コウ兄ぃの顔赤くなってボクから視線外したぞ。
「どうしたの、コウ兄ぃ。顔赤いよ。熱上がったのかな?」
ボクがコウ兄ぃの額に手を置くと、コウ兄ぃの顔はますます赤くなる。
「ホントどうしたの、コウ兄ぃ」
「実は、その時に昔のナナの事もいっぱい見たんだ。生まれた時からずっとのナナの笑顔を」
コウ兄ぃは、シーツで赤い顔をボクの目線から隠すの。
「えー、それボクも知りたいよ。生まれた頃なんてボク覚えていないんだもん」
「えっとね、俺が小学4年くらいだったかな。生まれたばかりのナナが俺の指を掴んで、笑ってくれたんだ。俺、その日からずっとナナの事守らなきゃって思ってて……」
そう言うと、コウ兄ぃは完全に布団にもぐりこんだ。
そうなんだ、ボク生まれた時からコウ兄ぃの事好きだったんだ。
「まー、そういう事なら良いかな。もう許してあげるね、コウ兄ぃ」
「え! いいの、ナナ」
チャーンス!
ボクは布団から顔を出したコウ兄ぃの唇目掛けてキスを仕掛けた。
「あ!」
「これで二回目! もうボク、コウ兄ぃのお手つきだからね」
「ソレ違うって。二回ともナナの奇襲攻撃だぞ!」
「別にいーじゃないの! へるもんじゃないもん」
「それに風邪染ったら大変なのぃ!」
こうやってイチャイチャできるようになったのは良かったかな?
ボク、コウ兄ぃだーい好き!!
けど、やっぱり風邪が染ってボクも翌々日に熱出したのはお愛嬌なのか、お約束なのかな。
でもね、熱出して寝ている間に不思議な夢見ていたんだ。
「ナナ、おめでとう。よく頑張ったね」
「うん、貴方。わたし、貴方の子供生めてよかったの」
そう言うボクの腕の中には、生まれたての赤ちゃんがいるの。
そしてボクが貴方と呼んだ人は……、あー恥かしいぃよぉぉぉぉ!!
でも、この夢が現実になったら良いな。
◆ ◇ ◆ ◇
「シャッターチャンスは逃さないのじゃ! ナナ殿、すっかりコウタ殿を狙う唇ハンターじゃな。一瞬の油断も出来ぬのじゃ! この映像も母様に送って喜んでもらうのじゃ!」
後で、ボクはお母さんに聞いて知ったの。
ボクのキスシーンは必ずチエ姉ぇにハントされていたんだって。
もー、恥かしいよぉ!
後、1話ほど閑話をお送りした後、第5部を本格始動します。
では、次回更新明日をお楽しみに。
なお、ブックマーク、感想、評価・レビュー等を頂けますと、とても嬉しいです。
評価はこのページ最後にありますから、お気軽にどうぞです。
それでは皆様、宜しくお願い致します。




