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功刀 康太の遺跡探訪、時々お祓い ~女難あふれる退魔伝~  作者: GOM
第四部 功刀康太はようやく遺跡探訪して、神器争奪戦をする
202/272

第202話 康太は冒険者になる:その51「神器争奪戦15:邪神退治2」

「はっ!」


 俺の一撃は、確実に邪神の防御結界を破壊する。

 というか、基本的に俺の仕事は、防御結界破壊役。

 邪神の周囲には圧倒的な数の防御結界、もはや次元障壁レベルの守りがしかれ、物理・魔法・光学兵器などが全てが無効化される。

 しかし、俺の魔剣による一撃は、確実に邪神の結界を破壊する。

 流石は、空間ごとなんでも切れると豪語する魔剣。

 邪神クラスの結界ですら紙同然に切り裂いていく。


〝オラァ!〟


 「(ランス)」さんは、守りが消えた邪神の身体を槍で穿つ。

 槍から放たれる一撃毎に邪神の身体に大きな穴が開き、黒いタール状の体液が噴き出す。


「これで、どうじゃ!」


 そして再生しようとする邪神に追撃をするチエちゃん。

 突き刺す剣に魔力を込めているのか、みるみる邪神の再生速度が落ちてゆく。


「逃がしはしません!」


 後衛のサーちゃん、重力球を邪神の周囲に散布して邪神の空間跳躍(テレポート)を妨害する。


「皆様、あと少しです」


 「(おぼろ)」サンは華麗に邪神の触腕を攻撃し、後方への攻撃を散らす。


「くそぉぉ! 私は、いやオレは『外なる神(アウターゴッズ) 這い寄る混沌(ナイアーラトテップ)』だぞぉ! お前らなんかに負けるはずないんだぞぉ!」


 邪神は悔しそうに吠えるも、逃げる事も守る事も攻める事も出来ずに、徐々に削られていく。

 このまま削り倒せれば良いけど、それは流石に甘いよね。


  ◆ ◇ ◆ ◇


 一瞬の休憩に、魔剣の作った異空間で精神を休める俺。

 マユ姉ぇの策が気になったので、魔剣に頼んで後方の映像を見せてもらう。


「え、ナニ! 2人ともマジ天使?」


  ◆ ◇ ◆ ◇


 コウ兄ぃとチエ姉ぇ達が、一生懸命バケモノ神と戦っている。

 そしてその姿はとってもカッコよくて、ボクにはとっても眩しく見える。

 マジ、ボクの王子様なの。


 今ボクは、コウ兄ぃの命令でリタちゃんと一緒になって魔力を全開でため込んでいる最中。

 でも、ボクの一撃なんてリタちゃんの半分の威力も無いの。

 どんどん強くなっていく(みんな)に置いて行かれないように努力はしているけど、ボクには生まれ持った魔力を有効に生かす方法が無い。

 リタちゃんやお母さんみたいに魔力を放つ呪文は、殆ど知らないから。

 ボクが知っているのは、いいとこ簡単な防御や治癒呪文くらいで、今回みたいな強い敵には通用する呪文なんて何も知らないし、使えないの。

 今になれば、もっと勉強していたらとも思う。


「コウ兄ぃ、ボクあんまり役に立てないかも」


 コウ兄ぃは、あのバケモノ神に立ち向かってボクを救ってくれた。

 そして大好きとも言ってくれた。

 でも、ボクにはコウ兄ぃに何も返せない。

 ボクの王子様、そして大好きなコウ兄ぃ。

 ボクはアノヒトにとって、いつまでたっても小さな妹なの?

 アノヒトの後ろに隠れて守られるだけでなくて、一緒に横に立ってお互いを守っていくくらい強くなれないの?

 さっきボクを助けてくれた時の「カッコイイ」コウ兄ぃの横顔が、頭の中でグルグルしている。

 そして、今もカッコよく戦うコウ兄ぃの姿を見て、涙がこぼれてしまう。

 そんなコウ兄ぃの姿を直視できなくて、ボクはつい下を(うつむ)いてしまう。


「ナナ、ちゃんと顔を上げなさい。そして笑顔を絶やさずにね」


 顔を上げると、そこには笑顔のお母さんがいた。


「お母さん、ボク、コウ兄ぃの役に立てないかも知れないの!」


 ボクは、お母さんに自分がダメな事を伝えた。


「あら、そんな事心配していたの? ナナったら気にし過ぎなの。コウちゃんは、いつもナナやリタちゃんの事スゴイなって褒めていたのよ。コウちゃん、間違っても自分より弱い人を(さげす)んだりしないから。それどころか、絶対守るって頑張る子なの」

「でも、ボク助けられてばっかりで、何もコウ兄ぃの役にたってないよ?」


 今まで自分の中で貯めていた感情がボクの胸の中から溢れだす。


「コウ兄ぃなら、気にスンナとかいうだろうけど、ボク守られてばかりはイヤなんだ。ボク、大好きなコウ兄ぃの後ろじゃなくて、スグ横にいたいの!」


 溢れた感情は、涙と共に噴出した。

 大好きだからこそ、ボク守られてばかりはイヤなんだ。


「おねえちゃん、ぜいたくだね。わたしは、おにいちゃんのことだいすきだし、おねえちゃんのことも、もちろんおかあさんも おとうさんも みーんなみーんな だーいすき!」


 リタちゃんが限界まで魔力貯めて苦しいはずなのに、ボクに笑顔で答える。


「おねえちゃん、しっている? わたしだけのとき、おにいちゃんは わたしのこと みているけど、わたしとおねえちゃん いっしょのときは、かならずおねえちゃんみてるよ。だって、おねえちゃんは うまれたときから おにいちゃんといっしょだもん。あとからきた わたし じゃ おねえちゃんに せったい かてないの」


 リタちゃんの顔は笑顔なんだけども、今にも泣き出しそうになっているの。


「でもね、だいすきな おねえちゃんとおにいちゃんが いっしょになるなら、それはね とーっても いいことなの。だから、おねえちゃん、じしんもつの!」


 リタちゃんからの意外な言葉、リタちゃんがコウ兄ぃを好きな事は良く知っていた。

 ボクとはコウ兄ぃを取り合わない風にはしていたけど、嫉妬深いところがあるのも良く知っている。

 そのリタちゃんが、ボクにならコウ兄ぃを任せられると言ってくれているのだ。

 ここで踏ん張らないと、オンナがすたるの!


「うん、分かったよ、お母さん、リタちゃん! ボク、精一杯頑張るよ!」


 ボクは涙を拭って顔を上げる。

 そしてニッコリと笑うの!


「よし、その顔よ。じゃあ、ナナにイイコト教えてあげる。今のナナの魔力なら私と同じ呪文が使えるわ。私と一緒に詠唱してみない?」

「え! ボクにそんな事出来るの!」


 よーし、やってやるの!


  ◆ ◇ ◆ ◇


 俺は、魔剣によって作られた異空間からナナとマユ姉ぇを見て驚愕した。

 ナナの背後にマユ姉ぇが立ち、二人の背中には光り輝く大きな天使の翼が見える。

 2人とも目を瞑り、全身に光を纏い印を結んで一生懸命に呪文を詠唱する姿は、とても神々しく見えた。

ナナちゃんの思い、コウタの思い。

書いていて作者の私が涙ぐんでしまいました。


さて、ブックマーク、感想、評価・レビュー等を頂けますと、とても嬉しいです。

皆様、宜しくお願い致します。



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