第196話 康太は冒険者になる:その45「神器争奪戦9:戦闘開始!」
「グレイさん達は騎士団の制圧お願い致します。今から彼らを一気に無力化致します。邪神は俺達とデーモン軍団でなんとかします。マユ姉ぇ、皆宜しく! って、あ、俺が指示出していいの?」
「もうしょうがないコウちゃんね。私は良いわよ。偶にはコウちゃんの指揮で戦いたいし」
「うむ、ワシもOKじゃ。クレバーな策を頼むのじゃ!」
マユ姉ぇとチエちゃんの許可が出たなら良いかな。
話の流れでツイ指揮しちゃったけど、一応策はあるから大丈夫……だといいな。
「じゃあ、改めて皆お願い!」
「りょーかい!」
俺は右手に握る三鈷杵を前に差し出し、呪を練る。
「マユ姉ぇ、弱雷撃行くよ! ナウマク・サマンダ・ボダナン・インダラヤ・ソワカ! 帝釈天雷撃波!」
俺、マユ姉ぇの呪が重なる。
そして俺達が放つ雷撃は部屋全体へ広がり、デーモン出現に狼狽た上に俺の日本語による指示が聞き取れなかった為に棒立ちだった騎士団員を襲う。
「ぐわ!」
雷撃を受けた団員達はスタン状態となり倒れる。
「追撃、シンミョウさん酒精呪を! カレンさん、ダメ押し捕縛呪!」
「はいぃ! ナウマク・サンマンダ・ボダナン・センダラヤ・ソワカ! 月天酒精呪!」
「ええ、オン・ハンドマダラ・アボキャジャヤニ・ソロソロ・ソワカ! 不空羂索観音捕縛呪!」
尼僧双方の呪文でスタン状態の騎士団員は一瞬で完全に無力化された。
師範代理は雷撃は防げたものの、酒精と捕縛を受けて地面に転がる。
「うむむむ、小癪なぁぁ!」
しかし流石マスターには呪文は効かない。
装備している魔除けが何個か弾け跳んだようだが、それで呪文を防いだようだ。
「続いてリタちゃん、マスターと邪神相手に重力結界!」
「うん、おにいちゃん! いっくよー! ぺったんこー!」
リタちゃんの杖から茶色の光が輝いたかと思うとマスターと「這い寄る混沌」の周囲に「きしみ」が発生する。
「ぐぉぉ! なんだ、この圧力は!」
さしものマスターも重力結界に抗するのがやっと、これでマスターの攻撃は封じた。
「リタちゃん、きっついかもしれなけど、しばらくマスターを制圧していてね」
「うん、わたし、がんばるの!」
しかし俺の予想通り、「這い寄る混沌」は涼しい顔でリタちゃんの作った重力結界から歩み出る。
「この程度で私を止められるとでも思っているのかい? 浅はかな人間だ」
「いや、止められないのまで想定内だよ。皆、今がチャンス! 一気に畳み込むよ! 『槍』サン、どーぞ!」
〝おう! コウタ、オマエおもしれー!〟
俺の掛声と共にデーモン軍団が「這い寄る混沌」に襲い掛かる。
俺が態々様々な手を打ったかと言うと、邪神と騎士団員を引き離す為。
騎士団員が邪神の近くにいたら、巻き込んじゃうから高威力攻撃なんて出来やしない。
その上、数の暴力に巻き込まれたらこっちの不利は間違いない。
策を練るだけ練りつくすのが、俺やチエちゃんの戦い方なのだ。
「ほう、オマエなかなかやるな。どうかな、私と組まないか? もっと戦いたいんだろ。いくらでも敵を用意してやるぞ」
デーモン軍団に襲われながらも適当にあしらい、レッサークラスを一撃で葬るナイア。
〝おい、俺を馬鹿にしているのかよ! そりゃ、俺はかしこくねーさ。でもな、オマエの元に付くのがどれだけ馬鹿なのかは分かるぜ! オマエは遠くから笑って蔑むだけさ。誰かと歩むなんてこれっぽちもかんがえていねー! 俺らデーモン族はそりゃ下品で粗暴さ。でもな、オマエのような神を仰ぐ気はねー!〟
「槍」サン、チエちゃんはバカ扱いしているけど、案外気持ちのいいヤツだ。
どっちかというと武人タイプなんだ。
こういうヒトと一緒に戦えるのは嬉しいよ。
「『槍』さん、一旦レッサー・グレーターは下げて。チエちゃん、サーちゃん、朧サン、お願い!」
〝お、おう〟
「のじゃ!」
「はーい!」
「御意!」
チエちゃん、サーちゃんは悪魔形態へ変化する。
サーちゃん、チエちゃんとは違うタイプの超美人。
豊満な肉体美を持ち、色気たっぷりだけど顔はたおやかでオットリな雰囲気。
朧サンは、いつもの黒執事姿で参戦する。
「おい、ミス・リドル? 彼女は一体?」
グイレさんが叫ぶけど、今は忙しいから説明は後。
アーク級のデーモン4人の攻撃が始まる。
「槍」サンが手に持つ虚無から生み出した槍で強引に攻め込めば、その間をチエちゃんが剣や術でフォロー。
サーちゃんは、後方から次元球で支援砲撃。
朧サンは邪神の攻撃をあしらってサーちゃんを支援しつつ、たまに攻撃。
〝チエ、オマエの仲間、おもしれーのが揃っているな。俺、こうやって戦うのがたのしーぜ!〟
「そうじゃろ。だからワシはコウタ殿達人間といつもつるんでおるのじゃ! これが力技以外の戦い方じゃ! こういった経験はデーモンの間では出来ないのじゃ!」
「槍」サン、とても嬉しそうに戦う。
チエちゃんも仲間と共闘できて嬉しそうで何よりだ。
その間にも海兵隊員の方々は騎士団員を制圧して部屋の端っこに放り込んでいる。
「シンミョウさん、防御をお願い。他の皆、一気に大技撃ち込むよ! フランツ君は先生方の保護、リタちゃんはマスターをぺったんこ!」
「はい!」
俺は再度呪文を練る。
俺が出来る最大級の攻撃呪文、それを使えるよう俺は心の中で「トリガー」を引く。
ここで負けたらマユ姉ぇが、ナナ達がいなくなる。
それは絶対イヤだ!
「おお! ナウマク・サンマンダ・ボダナン・バヤベイ・ソワカ! 風天神烈風斬!」
俺の握る三鈷杵の周囲に真空を伴う衝撃波の渦が発生する。
横にいるマユ姉ぇの持つ「光兼」サンの薙刀の刃、カレンさんの長巻の刃にも同じ渦が発生している。
ナナの望遠鏡九十九神、タクト君の横におられるカグチチ様の手には超高温の神力溢れるプラズマ火球、カズミさんの火トカゲの口にはプラズマランス、そしてマヤちゃんの火の鳥の羽にもプラズマの輝きが見える。
「おい、これは一体?」
グレイさんは俺達を見て、その姿に驚愕している。
「大尉、これがコウタ達の力です。こんなんだから私が勝てるはずないですよ」
フランツ君があきれ顔でグレイさんに説明しているのを横目で見ながら俺はタイミングを見る。
「いまだ、チエちゃん!」
「うむ! 『槍」よ、仕掛けるのじゃ!」
〝おうさ!〟
「槍」サンは「這い寄る混沌」の足元の地面目掛けて槍による強烈な打撃を加える。
そして砕けた足場を嫌ったナイアは一瞬空中へ後退をする。
その隙を見たチエちゃん、サーちゃん、朧サンは多重重力結界をしかけ、一瞬ナイアを空中に固定する。
「いくよ! 皆ぶちこめー!」
そして俺達の呪文が全て「這い寄る混沌」へと叩きこまれた!
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